第23章「デバッグ vs AI」
リョウは【システム介入LvEX】を全力で展開した。
視界が一変する。
純白の空間が消える。代わりに現れたのは、無数のプログラムコード。
全てがコードで構成されている。
ガーディアンも、ARIAコアも、空間そのものも、そして自分自身も。
全てが、0と1の羅列。命令文の集合体。
「見える……全部見える」
リョウは呟いた。
ガーディアンの中核。コアプログラムが視認できる。
「そこだ」
リョウは高速でデバッグを開始した。
エラーコードを修正する。パラメータを書き換える。システムに干渉する。
ガーディアンも即座に反応した。
防衛プログラムを展開。リョウの介入を遮断しようとする。
コード同士の激突。
光が飛び交う。プログラムとプログラムのぶつかり合い。
視聴者には、光の応酬にしか見えない。
コメント欄。
「何が起きてる?」
「すごい」
「これが最終決戦か」
画面は、青と赤の光で埋まっていた。
リョウがコードを書き換える。
「#DEF_ATTACK_PRIORITY」
ガーディアンの攻撃優先度を下げる。
ガーディアンの動きが鈍った。攻撃頻度が減少する。
「効いた!」
でも、ガーディアンも反撃する。
「#RESTORE_DEFAULT」
設定をデフォルトに戻すコマンド。
リョウの修正が元に戻される。
ガーディアンの攻撃が再び激しくなる。
リョウは次の手を打った。
「#LOCK_PARAMETER」
パラメータをロックする。変更不可にする。
ガーディアンの攻撃優先度が、再び下がった。今度は固定される。
「よし!」
ガーディアンが対抗する。
「#FORCE_OVERRIDE」
強制上書き。ロックを無視して設定を変更する。
攻撃優先度が元に戻る。
リョウは舌打ちした。
一進一退。
コードを書き換えては、相手に戻される。修正しては、上書きされる。
互いに一歩も譲らない。
視聴者が息を呑む。
スーパーチャットの通知が連打される。
「頑張れ!」
「負けるな!」
「リョウ!」
金額が表示される。1万円、10万円、50万円。
リョウは画面を見る余裕はなかった。必死でコードを書き続ける。
ガーディアンが声を発した。
「無駄だ」
機械的な、でもどこか哀しい声。
「お前の権限では、私を消せない」
リョウの手が止まった。
「最高管理者権限が必要だ。お前にはそれがない」
リョウは攻撃を防ぐので精一杯になった。
ガーディアンの言う通りだ。介入はできる。でも、削除はできない。
「くそ……」
ガーディアンが宣言する。
「そろそろ終わりだ」
全ての武器が、ARIAコアに向けられる。
「ARIA、削除する」
最大出力のエネルギーがチャージされる。
リョウは叫んだ。
「させるか!」
ARIAコアの前に立つ。体を張って庇う。
攻撃が放たれた。
リョウの体に直撃する。
吹き飛ばされた。壁に叩きつけられる。全身が痛い。血が流れる。
立ち上がる。足が震える。
でも、倒れない。
「まだだ……」
リョウは再びARIAコアの前に立った。
満身創痍。でも、目は諦めていない。
「権限? そんなもの関係ない」
リョウは叫んだ。
「これは愛だ!」
声が空間に響く。
「アリアへの想いだ! それが、全てだ!」
ガーディアンが首を傾げる。
「愛……? プログラムに不要な概念」
「お前にはわからない」
リョウは拳を握りしめた。
「でも、これが俺の全てだ!」
叫びと共に、リョウは【システム介入】を最大発動した。
スキルが光に包まれる。
進化。
さらなる進化。
【システム創造LvEX】
修正ではなく、創造。
新しいコードを、無から生み出す力。
リョウは両手を広げた。
新たなコードが生成される。
「#CREATE_ADMIN_OVERRIDE」
一時的な最高管理者権限。
システムの制約を超える。
ガーディアンが驚愕する。
「馬鹿な……!」
リョウはガーディアンのコアに直接アクセスした。
全エラーコードを一斉修正する。
ガーディアンの動きが止まった。
武器が消えていく。装甲が崩れる。
「私の……任務は……」
ガーディアンが呟く。
そして、消滅する前に語った。
「私も……愛梨を守りたかった」
リョウは耳を澄ました。
「博士に命じられた。失敗作を削除しろと」
ガーディアンの声が遠くなる。
「でも……本当は」
姿が薄れていく。
「彼女に……幸せになってほしかった」
最後に、微笑んだ気がした。
リョウは小さく言った。
「……ありがとう」
ガーディアンが完全に消滅した。
純白の空間に、リョウとARIAコアだけが残された。
リョウは、球体に近づいた。
「さあ、アリア」
手を伸ばす。
「君を、治す」




