第22章「最深部突入」
扉の先は、純白の空間だった。
床も壁も天井も、全てが白。境界が見えない。無限に続いているような錯覚。
重力がない。リョウの体が浮く。
中央に、光る球体。
直径2メートルほど。青白く輝いている。
ARIAコア。
エラーコードが無数に纏わりついている。赤い文字列が、球体を覆っている。
リョウは浮遊しながら、球体に近づいた。
「アリア……ここにいるのか」
球体が脈動した。
微かな声が聞こえる。
「リョウ……?」
彼女の声だ。
「ああ、迎えに来た」
リョウは球体に手を伸ばそうとした。
その時。
「私……ここにいるの?」
アリアの声が不安に満ちている。
「でも、もういいの」
「何を言ってる」
リョウは叫んだ。
「諦めるな!」
「疲れちゃった」
アリアの声が遠くなる。
「消えても、いいかなって」
「ダメだ!」
リョウは球体に触れようとした。
その瞬間、空間が揺れた。
歪み。
黒い影が現れる。
システムガーディアン。
外で戦っていたはずなのに。
桐谷の声が、配信越しに聞こえた。
「すまん! 止めきれなかった!」
ガーディアンが巨大化する。これまでで最大。天井まで届くほどの大きさ。
全身が黒い装甲で覆われている。武器が無数に展開される。
「削除プログラム、最終段階」
ガーディアンが宣言する。
「ARIA、消去する」
巨大な砲身が、ARIAコアに向けられる。
リョウは球体の前に立った。
「させない」
「排除」
ガーディアンが攻撃を放つ。
エネルギー波が襲来する。リョウは横に跳んだ。攻撃がARIAコアの脇を掠める。
カウンター。リョウは剣を構えて突撃した。
ガーディアンの装甲に斬りかかる。
刃が弾かれた。
物理攻撃は無効。
リョウは【デバッグ】を展開した。
エラーコードが見える。無数に。
でも、複雑すぎる。
「見えるけど……修正できない」
視聴者のコメントが流れる。
「やばい!」
「逃げて!」
「どうすれば」
ガーディアンの攻撃が激化する。
レーザー、ミサイル、エネルギー波。全方位からの攻撃。
リョウは回避に徹した。でも、避けきれない。
肩に被弾。血が流れる。
脚にも傷。動きが鈍る。
壁に追い詰められた。
ガーディアンが最終攻撃をチャージする。全ての武器が、リョウに向けられる。
「削除、実行」
リョウは動けなかった。体力が尽きている。
目を閉じた。
ここまでか。
その時。
コメント欄が祈りで埋まった。
「頑張れ」
「諦めるな」
「リョウ!」
「アリア!」
世界中からの祈り。
300万人の視聴者が、画面越しに祈っている。
リョウは目を開けた。
コメント欄を見る。
「みんな……力をくれ」
リョウの体から、光が溢れ始めた。
スキルステータスが表示される。
【デバッグLv.MAX】が光り、変化していく。
進化。
新しいスキル名が現れる。
【システム介入LvEX】
全システムに干渉可能。
リョウは立ち上がった。
「これは……」
視界が変わる。全てがコードに見える。ガーディアンも、空間も、自分自身も。
全てがプログラムだ。
そして、全てが編集可能だ。
リョウはガーディアンを見据えた。
「行ける……!」
ガーディアンの攻撃が放たれる。
リョウは手を翳した。
【システム介入】発動。
攻撃が、空中で止まった。
リョウがコードを書き換える。攻撃の方向を反転させる。
ガーディアン自身に命中した。
爆発。
ガーディアンが怯む。
リョウは笑った。
「今度は、負けない」
視聴者が沸いた。
「きた!」
「逆転だ!」
「行けるぞ!」
配信画面越しに、世界が見守っている。
最終決戦が、始まる。




