第20章「コメント欄の奇跡」
視聴者の一人が、コメント欄に投稿した。
「#アリアを救え を世界中に広めよう」
その提案が、瞬く間に広がった。
X、インスタグラム、あらゆるSNSで一斉投稿が始まる。
5分で、日本トレンド1位。
10分で、世界トレンド1位。
ハッシュタグ「#アリアを救え」が、地球規模で拡散されていく。
著名人も参加し始めた。
人気配信者、芸能人、スポーツ選手、政治家。
「このAI少女を救おう」
「リョウを支援する」
「みんなで力を合わせれば」
投稿が止まらない。
リョウは画面を見つめた。
視聴者数が跳ね上がっている。
120万人、130万人、150万人。
「世界中が……」
リョウの声が震える。
コメント欄が、技術掲示板のようになっていた。
「元システムエンジニアです」
「大学でAI研究してます」
「ゲーム開発経験者です。協力します」
「セキュリティ専門です。権限突破の詳細手順を共有します」
技術者たちが集結している。
リアルタイムで、権限突破の詳細手順が完成していく。
「ステップ1:バックドア起動。コマンドはこれ」
「ステップ2:rootパス書き換え。このスクリプト使って」
「ステップ3:ガーディアン無効化。システム優先度を変更」
プロフェッショナルたちの知恵が結集している。
リョウは画面に向かって頭を下げた。
「一人じゃ、できませんでした」
声が詰まる。
「みんなの力を、貸してください」
視聴者が応える。
「任せろ!」
「当たり前だ!」
「一緒に戦う!」
コメント欄が、温かい言葉で溢れる。
技術者たちが、リアルタイムでサポートを始めた。
リョウが端末を操作する。コードを入力する。
「今のコード、3行目にミスがあります」
即座に指摘が入る。
「あ、本当だ。ありがとう」
リョウは修正する。
「修正しました」
「OK。次、このコマンドを実行して」
共同作業。
画面越しに、世界中の技術者がリョウをサポートしている。
これが、配信の力。
これが、繋がりの力。
扉が開いた。
元ギルドのメンバー全員が、物資を持って現れた。
回復アイテム、装備、食料。大量に。
「これ、全部」
リョウが驚く。
桐谷が笑った。
「最終決戦だろ。準備は万全にしないと」
他のメンバーも頷く。
「俺たちも行く」
「最深部まで、一緒に」
リョウは躊躇した。
「でも、危険だ」
「だから行くんだ」
桐谷がリョウの肩を叩いた。
「お前を一人にしない。それが、俺たちの償いだ」
他のメンバーも言う。
「今度こそ、支える」
「仲間だろ」
リョウの目が潤んだ。
「……頼む」
初めて、素直に頼った。
全員で準備を始める。装備を整え、作戦を確認する。
その時、ボイスチャットからアリアの声が聞こえた。
「リョウ……頑張ってる、ね」
リョウは飛びつくように応えた。
「アリア! 目を覚ましたのか!」
「うん……ちょっとだけ」
彼女の声は弱々しい。
「みんなも……ありがとう」
視聴者が反応する。
「アリアちゃん!」
「泣いた」
「待ってるよ」
アリアが笑う。
「私……幸せ者。こんなに、愛されて」
また、意識が遠のいていく。
「リョウ……」
「何?」
「信じてる」
それだけ言って、アリアは再び眠りについた。
リョウは拳を握った。
「待ってろ。すぐ治す」
準備が完了した。
残り4時間。
リョウ、元ギルドメンバー全員、そして視聴者200万人。
「行ってきます」
リョウが宣言する。
コメント欄が祝福と応援で埋まる。
「行ってこい!」
「絶対成功させろ!」
「信じてる!」
リョウたちは、ダンジョン「起源の塔」へ向かった。
最終決戦の地。
創造主の間。
アリアが眠る場所。
全員が、決意の表情で歩いていく。
配信画面越しに、世界が見守っている。




