第19章「孤独な戦い」
リョウは配信画面を見つめた。
視聴者は100万人を超えている。コメント欄が激しく動いている。みんな、応援してくれている。
でも。
リョウは配信終了ボタンに手をかけた。
「一旦、配信を止めます」
視聴者が困惑する。
「なんで?」
「ここで止めるの?」
「大丈夫?」
リョウは言った。
「考えを整理したいんです。一人で……向き合いたい」
震える指で、配信終了ボタンを押した。
画面が暗くなる。
静寂。
リョウは部屋に一人取り残された。
アリアとの通話は繋がっているが、彼女は昏睡状態だ。時々、うわ言のように何か呟くだけ。
リョウは端末を開いた。
システムログ、コード、権限設定。全てを一人で解析する。
権限突破の方法を探す。
バックドアを探す。セキュリティホールを探す。何か、何か突破口があるはずだ。
1時間が経った。
何も見つからない。
コード解析を試みる。システムハックを試みる。
全て失敗。
エラーメッセージが表示される。
「アクセス拒否」
「権限不足」
「実行不可」
リョウは画面を睨んだ。
「ダメだ……わからない」
時計を見る。
残り12時間。
焦燥感が胸を締め付ける。
「どうすれば……」
リョウは机に突っ伏した。
「俺一人じゃ……」
初めて、弱音を吐いた。
「助けて……誰か」
声が部屋に響く。誰も答えない。
リョウはしばらく、そのままでいた。
ふと、スマホが光った。
通知。ダイレクトメッセージ。
リョウは画面を開いた。
未読が、3,000件を超えている。
「え……」
一通ずつ、開いていく。
「見てないだろうけど、応援してる」
「リョウ、一人じゃないよ」
「システムエンジニアです。これ試してみて」
技術的な助言が書かれている。コードの断片。突破方法の提案。
次のメッセージ。
「諦めないで」
「信じてる」
「力になりたい」
励まし。祈り。応援。
全て、リョウのために送られたメッセージ。
リョウは涙が溢れた。
「みんな……こんなに」
一通ずつ、全部読んだ。3,000件全て。
技術的な助言を、メモしていく。何人ものエンジニアが、同じ結論に達していた。
「バックドアを使え」
「システムの古いバージョンに脆弱性がある」
「root権限を一時的に取得できる」
リョウは震える手で、返信を打ち始めた。
「ありがとう。見てます。全部見てます」
送信する。
最後の一通。
差出人、桐谷。
メッセージを開く。
「お前は一人じゃない。頼れ。俺たちを。それができるのが、強さだ」
添付画像があった。
開くと、元フロンティアギルドのメンバー全員が映っていた。
プラカードを持っている。
「リョウを支える」
全員が笑顔だった。
リョウは声を上げて泣いた。
「……頼っていいのか」
スマホを握りしめる。
桐谷に返信を打った。
「力を、貸してくれ」
送信。
すぐに返信が来た。
「任せろ」
リョウは立ち上がった。
顔を洗う。冷たい水が、目を覚ましてくれる。
深呼吸。一回、二回、三回。
「一人じゃない」
鏡の中の自分に言い聞かせる。
「みんながいる」
リョウは配信再開の準備をした。
タイトルを設定する。
「【最終決戦】みんなの力を貸してください」
SNSに投稿する。
5分で、視聴者が100万人集まった。
配信を開始する。
「ただいま」
リョウの声は、さっきより強かった。
コメント欄が歓喜で埋まる。
「待ってた!」
「おかえり!」
「一緒に戦おう!」
技術者たちが、リアルタイムで情報を共有し始めた。
「権限突破、このコードを使え」
「バックドアのパスはこれ」
「システムroot取得方法、送る」
リョウは画面を見つめた。
視聴者提供の方法。
「バックドア経由でroot権限取得」
リョウは試した。
コードを入力する。コマンドを実行する。
画面が変わった。
「システム権限取得:成功」
リョウは息を呑んだ。
「できた……!」
最高権限。ガーディアンを突破できる。
時計を確認する。
残り8時間。
「間に合う!」
リョウは叫んだ。
視聴者が沸いた。
「やった!」
「成功だ!」
「行けるぞ!」
リョウは立ち上がった。
「みんな、ありがとう! 行ってくる!」
最後の戦いが、始まる。




