第18章「防衛AIの妨害」
7日目。
残り20時間。
リョウは最後のエラーログ取得に向かった。
13箇所目「嘆きの渓谷」。一度、失敗した場所。
栄養ドリンクを一気に飲み干す。手が震える。体はもう限界だった。
配信を再開する。
視聴者80万人が待機していた。
「最後の3箇所、行きます」
リョウの声は掠れている。
コメント欄。
「頑張れ」
「最後まで見届ける」
「絶対成功させよう」
アリアは昏睡状態だった。記憶の混乱が激しく、もう会話もできない。ただ、時々うわ言のように何か呟いている。
リョウは一人で進んだ。
ダンジョン「嘆きの渓谷」最深部。
エラーログの場所まで、あと少し。
その時、空間が歪んだ。
黒い影が現れる。
システムガーディアン。
「妨害者、排除する」
機械的な声。赤い目が光る。
リョウは後ずさった。
「また、お前か」
ガーディアンが巨大化した。前回よりも大きい。武装も強化されている。
「ARIA削除プログラム、最終段階」
ガーディアンが宣言する。
攻撃が始まった。
レーザーが放たれる。リョウは横に跳んだ。床が焼ける。
反撃しようと剣を構えるが、物理攻撃は効かない。
【デバッグ】を試みる。
エラーコードは見える。でも、修正UIが開かない。
「アクセス権限不足」
また同じメッセージ。
リョウは歯噛みした。
「クソ!」
ガーディアンの攻撃が激化する。無数のレーザー。リョウは回避に徹するが、被弾する。
肩に傷。血が流れる。
壁に追い詰められた。
ガーディアンが最終攻撃をチャージする。巨大なエネルギー球が形成される。
「削除、実行」
リョウは目を閉じた。
ここまでか。
その瞬間、光が差した。
攻撃が止まる。
リョウは目を開けた。
ガーディアンが動きを止めている。
「侵入者検知」
ガーディアンが別の方向を向いた。
画面外から声が聞こえた。
「リョウ!」
桐谷だ。
そして、元フロンティアギルドのメンバー全員が現れた。8人。
「一人で抱え込むな!」
桐谷が叫ぶ。
全員がガーディアンに一斉攻撃を仕掛けた。
物理攻撃は効かない。でも、ガーディアンの注意を引くことはできる。
「今だ! 逃げろ!」
桐谷がリョウに向かって叫んだ。
「でも、エラーログが」
リョウは躊躇した。
「命が先だ!」
桐谷の顔は真剣だった。
リョウは歯を食いしばった。
「くそ……!」
撤退を決断する。
ガーディアンに向かっていくギルドメンバーたちを横目に、リョウは走った。
背後で爆発音。誰かの叫び声。
リョウは振り返らなかった。振り返ったら、止まってしまう。
ダンジョンの外。
数分後、桐谷たちも脱出してきた。全員、傷だらけだった。
「すまん……止めきれなかった」
桐谷が謝る。
リョウは首を振った。
「いや……ありがとう。なんで、来てくれた」
リョウが聞いた。
「放っておけるか」
桐谷が笑った。
他のメンバーも頷く。
「俺たちの償いだ」
「今度は、お前を支える」
リョウの目が潤んだ。
「……ありがとう」
その場で、全員が座り込んだ。
残り16時間。
全員で作戦会議を始める。
「ガーディアンを突破するには、アクセス権限が必要だ」
リョウが説明する。
「どうやって取得する?」
桐谷が聞いた。
元エンジニアのメンバーが口を開いた。
「視聴者に聞いてみたらどうだ」
「視聴者?」
「ああ。お前の配信、技術者も見てる。協力してくれるかもしれない」
リョウはスマホを取り出した。
配信はまだ続いている。コメント欄を確認する。
「権限突破の方法、調べてる」
「エンジニアだけど、力になりたい」
「システムハック、任せろ」
技術者たちが、既に動き始めていた。
リョウは画面に向かって頭を下げた。
「力を、貸してください」
配信越しに、世界中の視聴者が応えた。




