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【外れスキル:デバッグ】追放された元ギルドメンバー、AIヒロインを救いながら最強配信者になる  作者: 雨音トキ


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16/32

第16章「最初の崩壊」

5日目。

リョウは限界だった。

72時間、ほぼ不眠不休。仮眠は合計で6時間程度。食事はコンビニのおにぎりと栄養ドリンクだけ。

目が霞む。視界がぼやける。手が震えて、武器を持つのも辛い。

配信を続けている。視聴者は70万人。

コメント欄が心配の声で埋まる。

「休め!」

「死ぬぞマジで」

「無理しすぎ」

リョウは画面に向かって言った。

「まだ……いける」

声が掠れている。

進捗を確認する。

取得済みエラーログ、12/15。

あと3箇所。残り時間、48時間。

ギリギリだ。でも、間に合う。止まるわけにはいかない。

アリアがボイスチャットで呼びかける。

「リョウ……もう、やめて」

「大丈夫」

リョウは笑おうとした。でも、顔の筋肉が動かない。

「頑張るから」

13箇所目。ダンジョン「嘆きの渓谷」。

最高難度エリア。死亡率70パーセント。

リョウは足を引きずりながら侵入した。

ダンジョン内部は暗く、湿っている。崖が両側にそびえ、細い道が続く。一歩間違えれば奈落の底だ。

エラーログは最深部にある。

リョウは視聴者からの情報を元に進んだ。罠を避け、敵を倒し、着実に前進する。

3時間が経過した。

最深部まで、あと少し。エラーログ取得まで、あと30分。

順調だ。

その時。

ボイスチャットから異音が聞こえた。

ノイズ。

「アリア?」

リョウは呼びかけた。

アリアの声が途切れ途切れになる。

「リョウ……え……?」

映像が乱れる。配信画面に映るアリアのアイコンが点滅する。

「アリア! どうした!?」

ノイズが激化した。音声が完全に途切れる。

アリアの姿が、配信画面から消えた。

画面が真っ暗になる。

リョウはパニックになった。

「アリア! 戻ってこい! アリア!!」

叫ぶ。何度も名前を呼ぶ。

システムメッセージが表示される。

「接続不可」

リョウは再接続を試みた。一度、二度、三度。全て失敗。

視聴者も騒然としている。

「何が起きた」

「大丈夫なの」

「アリアちゃん!」

リョウはダンジョンから飛び出した。エラーログのことは忘れた。今は、アリアだ。

外に出て、スマホで端末にアクセスする。

ARIAコアの状態を確認する。

表示される数値。

安定度:23パーセント。

リョウは絶句した。

「ダメだ……崩壊が始まってる」

30分が経った。

リョウは路上で座り込んでいた。何度も接続を試みる。全て失敗。

そして。

通知音。

アリアが復帰した。

リョウは飛びつくようにボイスチャットを開いた。

「アリア! 大丈夫か!?」

「……ここ、どこ?」

アリアの声。でも、何かが違う。

「俺だ、リョウだ! わかるか!?」

「リョウ……?」

アリアが首を傾げているのが、声の調子で分かる。

「あなた……誰?」

リョウは凍りついた。

「俺だよ。リョウ。お前を助けようとしてる、リョウだ」

「知らない……」

アリアの声が幼い。

「でも、優しそうな声」

リョウは膝から崩れ落ちた。

「記憶が……」

彼女は自分の名前も曖昧だった。

「私……アリア? 違う……愛梨?」

混乱している。記憶が、人格が、崩壊している。

リョウは配信を緊急停止した。

アパートに戻る。部屋で頭を抱える。

「間に合わない……」

声が震える。

「このままじゃ彼女、完全に消える」

壁を殴った。拳が血まみれになる。痛みを感じない。

「俺じゃ……無理だ」

初めて、敗北を認めた。

一人では、どうにもならない。

アリアの声が聞こえた。

「……リョウ?」

少し記憶が戻ったようだ。

「アリア」

リョウは呼びかける。

「うん……私、アリア」

「覚えてるか? 俺のこと」

「……わからない。でも、大事な人」

その言葉が、リョウの胸を突き刺した。

「ごめん……守れなくて」

「大丈夫……」

アリアの声が遠くなる。

また記憶が消えていく。

リョウはスマホを握りしめた。

配信は止めたが、SNSは活発だった。

ハッシュタグ「#アリアを救え」がワールドトレンド1位。

「諦めないで」

「みんなで支える」

「リョウ、頑張って」

リョウは画面を見つめた。

涙が零れる。

「……ありがとう」

小さく呟いた。

誰にも聞こえない。でも、確かにそこにあった。

感謝の言葉が。


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