第15章「拒絶と後悔」
3日目の朝。
インターホンが鳴った。
リョウは仮眠から目を覚ました。時計を見る。午前9時。2時間しか眠っていない。
ドアを開けると、そこに桐谷が立っていた。
「少し、話させてくれ」
リョウは迷惑そうに頷いた。部屋に入れる。
桐谷は座ることなく、立ったまま切り出した。
「ギルドを再建する。戻ってこないか」
リョウは黙って聞いた。
「新しいギルド『リバース』。元フロンティアのメンバーで作る」
桐谷は封筒を取り出した。
「月給500万円。幹部待遇。最高の環境を用意する」
封筒を机に置く。中には契約書が入っているのだろう。
「お前が必要なんだ」
桐谷が真剣な目でリョウを見つめた。
リョウは即答した。
「断る」
桐谷が驚く。
「即答? せめて条件を聞いてから」
「条件は関係ない」
リョウははっきりと言った。
「今の俺には、優先すべきものがある」
桐谷は理解した顔をした。
「アリアのこと?」
リョウは頷いた。
「そう。彼女が全てだ」
「ギルドより大事か?」
「比較にならない」
リョウの声に迷いはなかった。
「君たちは俺を捨てた。彼女は俺を信じてくれた。それだけで十分だ」
桐谷は項垂れた。
「……そうか」
沈黙が流れる。
桐谷がゆっくりと顔を上げた。
「俺たちは……間違えた」
声が震えている。
「お前の価値を見誤った。お前自身を見ようとしなかった」
リョウは何も言わなかった。
「高峰も、死ぬ前に言ってた」
桐谷の目が潤んでいる。
「リョウを手放したのが最大の失敗だって。お前がいれば、俺たちは死ななかったって」
「今さら言われても」
リョウの声は冷たかった。
「わかってる」
桐谷は涙声になった。
「でも、伝えたかった。お前は……すごいよ。本当に」
「……」
「本当に、すまなかった」
桐谷が深く頭を下げた。
リョウの表情が和らいだ。
「……恨んではいない」
「リョウ……」
「過去は変えられない。でも、未来は変えられる」
リョウは窓の外を見た。
「俺は、前を向いてる」
桐谷は涙を拭った。
「何か、手伝えることは?」
リョウは首を振った。
「邪魔しないでくれればいい」
「……了解」
桐谷は立ち去りかけて、振り返った。
「もし、何かあったら連絡してくれ」
「……」
「今度は……仲間として」
リョウは小さく頷いた。
「そのときは」
桐谷が部屋を出ていく。扉が閉まる音。
リョウは一人、部屋に残された。
夕方。リョウはSNSを確認した。
桐谷の投稿があった。
「リョウに断られた。当然だ」
「でも彼は立派に生きてる。自分の道を進んでいる」
「俺たちが捨てた人間が、今や伝説だ」
コメント欄に、他の元フロンティアメンバーたちが反応している。
「俺も後悔してる」
「あの時、止めればよかった」
「リョウ、ごめん」
視聴者の反応は様々だった。
「ざまあみろ」
「因果応報だな」
「でも今から支援しろよ」
「まだ間に合う」
リョウはスマホを置いた。
過去の仲間たちの後悔。それは、もう自分には関係ない。
でも。
「悪い気はしないな」
小さく笑った。
配信を再開する準備をする。
「3日目、始めます」
配信を開始すると、視聴者が60万人待機していた。
コメント欄が温かい。
「おかえり」
「待ってた」
「頑張れ」
リョウは画面に向かって言った。
「今日は5箇所、攻略目標です」
アリアがボイスチャットで心配する。
「無理しないで」
「大丈夫」
リョウは笑った。
「みんながいるから」
視聴者が反応する。
「任せろ!」
「情報送る!」
「サポートする!」
リョウは立ち上がった。
「じゃあ、行きます」
ダンジョンへ向かう。
残り時間、4日と12時間。
取得済みエラーログ、5/15。
まだ半分にも届いていない。でも、諦めない。
リョウは走り出した。




