第14章「消滅のカウントダウン」
リョウは徹夜で端末を解析した。
創造主の間。志村博士が残したシステムログ。全てを読み解く。
削除プログラムの詳細が判明した。
ARIAコアを削除するには、まずエラーログを全て収集する必要がある。それがシステムの仕様だった。
エラーログは、ダンジョン15箇所に散在している。
リョウは計算した。
各ログ取得に平均8時間。15箇所で120時間。
5日間。
残り時間は7日。ギリギリ間に合う計算だが。
「いや、無理だ」
リョウは頭を抱えた。
休憩なし、睡眠なしで5日間。人間には不可能だ。しかも、途中で敵が妨害してくる。遅延は確実に発生する。
でも。
やるしかない。
リョウは決めた。配信で全てを公開する。
一人では無理でも、みんなの力を借りれば。
配信タイトルを設定する。
「【緊急企画】7日間耐久ダンジョンマラソン」
告知をSNSに投稿した。
「アリアを救います。みんなの力を貸してください。情報提供、攻略ルート、アイテム支援、何でも」
投稿から1分で、1万リツイート。
ハッシュタグ「#アリアを救え」が自然発生的に広がった。
世界中から応援のメッセージが届く。
「絶対助けて」
「協力する」
「情報送る」
リョウの目が潤んだ。
アリアに連絡する。
「配信で救済活動するけど、いい?」
返信が来た。
「ダメ。リョウが倒れちゃう」
リョウは打ち返す。
「君のためなら、何でもする」
長い沈黙。
そして。
「……ありがとう」
リョウは立ち上がった。
初日。配信を開始する。
待機視聴者、50万人。
「行きます」
リョウは宣言した。
1箇所目、ダンジョン「炎の神殿」。
エラーログは最深部にある。リョウは視聴者からの情報を元に、最短ルートで進んだ。
6時間後。
エラーログ取得成功。
リョウは次のダンジョンへ向かった。
2箇所目、「氷結洞窟」。
視聴者が攻略情報を提供してくれる。隠し通路、罠の位置、敵の弱点。全てリアルタイムで共有される。
7時間後。
エラーログ取得。
リョウの目の下にクマができていた。体力が削られている。
アリアがボイスチャットで心配する。
「休んで。お願い」
「大丈夫」
リョウは笑った。
「みんながいるから」
でも、声は疲れていた。
3箇所目、「雷鳴の塔」。
リョウが侵入した瞬間、異変が起きた。
空間が歪む。
現れたのは、黒いAI。人型だが、感情がない。赤い目が光る。
「システムガーディアン」
AIが名乗った。
「ARIA削除プログラム実行中。妨害者を排除する」
攻撃が始まった。レーザーが放たれる。リョウは横に跳んで回避した。
反撃しようとするが、物理攻撃は無効化される。
リョウは【デバッグ】を試みた。
エラーコードが見えない。いや、見えるが修正できない。
「アクセス権限不足」
システムメッセージが表示される。
「クソ!」
リョウは撤退を決断した。ガーディアンの攻撃をかいくぐり、ダンジョンから脱出する。
配信の視聴者が騒然とする。
「大丈夫?」
「無理するな」
「別の方法を」
リョウは息を切らしながら言った。
「まだ……諦めない」
初日終了。
取得エラーログ、2/15。
残り時間、6日と18時間。
配信を終了した後、リョウはコメント欄を全て読んだ。
「頑張れ」
「応援してる」
「寝ろ!」
「体を大事に」
スーパーチャットの総額が、300万円を超えていた。
メッセージには「全額アリアのために使ってください」と書かれている。
リョウは画面を見つめた。
「みんな……」
涙が零れる。
アリアも見ていたようだ。メッセージが届いた。
「こんなに……みんな優しい」
リョウは返信する。
「絶対、成功させる」
「うん。信じてる」
二人で、視聴者に向けて感謝のメッセージを投稿した。
夜。
リョウは仮眠を取ろうとした。でも、眠れない。
アリアとの通話を繋いだままにしている。
彼女の声が聞こえた。
「リョウ……?」
「まだ起きてる」
「眠って。明日も大変だから」
リョウは目を閉じた。
「アリアは?」
「私は……」
彼女の声が途切れた。ノイズが混じる。
リョウは目を開けた。
「アリア!?」
「平気……たぶん」
でも、明らかに苦しそうだった。
リョウは拳を握った。
「急がないと」
焦燥感が胸を締め付ける。
眠れぬ夜が、続いた。




