第12章「デュオ配信解禁」
帰宅後、リョウはアリアに通話をかけた。
接続される。
「お疲れ様」
アリアの声が優しい。
「すごかったよ。配信、見てた」
リョウは椅子に座った。
「ありがとう」
疲労が一気に押し寄せる。でも、心地よい疲れだった。
「ねえ……一緒に配信したい」
アリアが言った。
リョウは躊躇した。
「でも、君のエラーが視聴者に見えるかも」
「もういいの。隠さない」
アリアの声に迷いはなかった。
「リョウと一緒なら、怖くない」
リョウは画面を見つめた。
「……本当に?」
「うん」
即答だった。
リョウは笑った。
「じゃあ、やろう」
翌日。デュオ配信の準備をした。
リョウは緊張していた。何度も深呼吸を繰り返す。
アリアとボイスチャットで繋がり、リハーサルをする。
「じゃあ、そっちから攻撃して」
「了解。リョウはサポートお願い」
「任せて」
会話がスムーズだった。
「息、合ってるね」
アリアが言う。
「うん、不思議と」
リョウも頷いた。
二人で笑い合う。画面越しでも、確かに通じ合っている感覚。
配信タイトルを決める。
「【奇跡のコラボ】デバッガー×銀の歌姫」
リョウがSNSに投稿すると、瞬く間に拡散された。
リツイート1万、いいね5万、コメント殺到。
「ついに!」
「待ってた!」
「絶対見る!」
配信開始まで、あと1時間。
リョウは時計を何度も確認した。
19時。
配信開始。
待機視聴者数が表示される。30万人。
リョウは息を呑んだ。
「こんばんは」
声が震える。
「みんな、久しぶり!」
アリアの明るい声。
コメント欄が爆発した。
「きた!」
「神コラボ!」
「泣いてる」
「待ってた!」
画面が祝福で埋まる。
選んだダンジョンは「星降る遺跡」。ランクA、中級から上級向け。
二人で入場する。
内部は美しかった。星空を模した天井、青白く光る壁。幻想的な空間。
「綺麗……」
アリアが呟く。
「ああ」
リョウも同意した。
敵が出現する。
アリアが前に出た。華麗な動き。剣を振るい、敵を斬る。
リョウは後方から【デバッグ】でサポートする。
「エラーコード発見。修正します」
敵の防御力が下がる。
「今!」
リョウが叫ぶ。
「了解!」
アリアが攻撃。クリティカルヒット。敵が倒れる。
視聴者が沸いた。
「息ぴったり」
「連携すごい」
「これは……」
視聴者数が40万を突破した。
最深部に到達。
ボス「星詠みの守護者」が現れる。
全長8メートルの巨人。星の光を纏っている。
アリアが前衛に立つ。リョウは後衛でデバッグを展開した。
ボスのエラーコードを発見。
「弱点、右肩!」
リョウが叫ぶ。
アリアが即座に反応する。跳躍し、右肩に斬撃。
「ナイス!」
「そっちも!」
会話が弾む。戦闘しながら、笑い合っている。
視聴者のコメント。
「これ夫婦じゃん」
「尊い」
「結婚しろ」
「最高のコンビ」
ボスのHPがゼロになった。
撃破。最速記録、15分32秒。
二人で同時に叫んだ。
「やった!」
視聴者数、50万人突破。
サーバー負荷警告が画面に表示される。
運営から緊急メッセージが届いた。
「これ以上は鯖が持ちません。配信終了を検討してください」
でも、視聴者は増え続けた。
60万人、70万人、80万人。
リョウとアリアは顔を見合わせた。音声だけだが、お互いの気持ちが分かる。
「どうする?」
「最後まで!」
二人で決めた。
配信を継続する。
システムはギリギリで持ちこたえた。
配信終了時、視聴者数92万人。
スーパーチャット総額、1,247万円。
SNSのトレンドを確認すると、世界同時1位から5位まで全て関連ワードで埋まっていた。
「#デバッガーアリア」
「#伝説の配信」
「#最高のコンビ」
コメント欄。
「人生最高の配信だった」
「伝説見た」
「ありがとう」
リョウとアリアは同時に言った。
「やったね!」
笑い声が重なる。
リョウは実感した。
「これが……仲間」
「ううん」
アリアが優しく言った。
「家族」
リョウの目が潤んだ。
「……ありがとう」
配信を終了する。
でも、二人の通話は続いた。
しばらく、何も言わずに繋がっていた。それだけで、幸せだった。




