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そんなことってあるのか?!(32)

 本当なら、今頃ヘルパーRは我が家からいなくなっていたはずだった。

前日までフィリピンに里帰りしていて、次の日朝起きた瞬間に『はい、あなたを今すぐに解雇します。3時間以内に荷物をまとめること。』という段取りのはずだった。

それが出来なくなってしまった。


 その2週間前のことだった。母から電話。

「なんか、いよいよダメみたい。」

「何が?」

「半年くらい前におしっこに血が混じったことあって、しかもおしっこがすごく近くなったじゃない?その時検査した時は、とりあえず膀胱癌ではなさそうだから様子を見ましょうってことになったよね。その後血尿もなかったし、2ヶ月に一回くらい定期的に尿検査受けていたんだけど、一昨日の検査で、目には見えないけど、おしっこに血が混ざってるって。そして、今日詳しい検査しましょうって言われてたから超音波検査に行ってきたんだけど、『大きい病院に紹介状書くからなるべく早く大きい病院に行ってくだい。うちの病院では何もできない』って。」

「えーーー!何それ!」

という会話から始まり、その後大きい病院でCTやらMRIやら受けた結果、悪性の膀胱癌であると正式に診断された。母は全身麻酔にアレルギーがあり、アナフィラキシーを起こしたことがある。その時は違う病院なので、アナフィラキシーを起こした病院からその時の資料を取り寄せ、今の病院での検査結果とその時の資料をもとに、母の治療に携わってくれる医師や麻酔科医などと共に、どの治療が母にとってベストか検討して治療方法が決まる。これを書いている現段階ではまだ決まっていない。だが、付き添った姉の話によると、一度アナフィラキシーのショック症状で危なかったことを考えると、全身麻酔は厳しいだろう、とは言われたらしい。

前回は、骨折だった。キッチンで転んで、腕と大腿骨の両方を一気に骨折。肩は自然治癒、大腿骨は腰椎麻酔が使えたので、それで手術ができた。今回、母の状態からすると、本来は膀胱全摘が最良らしいが、全身麻酔ができないので、また腰椎麻酔を使って内視鏡で取れるところを取り、あとは化学療法ということになりそうではあるが、腰椎麻酔が今回も大丈夫かは未知であり、容易には決められないようだ。膀胱癌は進行が早いそうなので、手術可能かどうかはまだ未定ながら、手術の予約だけはしたそうだ。それでも1ヶ月以上先。予約が多くてそれが最短なのだそう。


そんな状況なので、どちらにせよ入院することは決まっている。入院の際は姉が付き添ってくれるらしいが、彼女もフルタイムで働いており、実家へも病院へもそんなに近いわけではないので、退院のタイミングでは私が付き添い、退院後の家事など私が担うのがベストだろうということになっているので、本帰国の前にもわんこたちを置いて帰国しないといけない状況になってしまった。なので、今ヘルパーRを解雇するのは得策ではない。いくら彼女に不満があっても、いてもらわなわいと困るのは私たちの方だ。


 そんなわけで、即日解雇は見送りになった。そして、母のことは残念だけれど、本帰国のために途中契約解除せざるを得ない大義名分ができたことは確か。『雇い主に嘘をついたから即日解雇ね!』と言って解雇するよりは全然良い。お互いに後味が悪い嫌な気分になることはなくなった。この状況にある意味ホッとしている自分がいる。そして、私たちは、即日解雇を言い渡す代わりに、母の病気のことを話し、私が犬たちと帰国することになったから、あと3ヶ月しか雇えなくなったことを伝えた。ヘルパーRは、

「それは大変ですね。分かりました。」

と素直に返事をした。これでお互い変なわだかまりがない状態でスムーズに解雇できるし、私も堂々と引越し準備ができることになった。


 しかし、こんなタイミングで母が病気になってしまうなんて。母の件とは全く無関係に本帰国することを決めて、ヘルパーを雇い、家も探し、だんだん整ってきたところでヘルパーに対しての嫌悪感が生まれ、もうクビだ!という直前に母の病気。

例えば、まだ全く本帰国を決めていなかったとしたら、ヘルパーも雇っていないのに、母の手伝いで一時帰国するのはとても困ったことになっていたはず。あお が老犬すぎるためペットホテルに預けることができないし、夫は仕事で日中留守になり、万一何かあったら対応できない。急遽ヘルパーを雇おうにも、1、2ヶ月かかるので、相当に困っていたはずだ。

それに、母は入院や手術を経て、おそらく化学療法などで通院することになるが、父がいくらまだ運転できるとは言っても、高齢なので相当重荷だろうと思う。また、姉が通院の度に仕事を休んで駆けつけるというのも大変だ。わんこのことはあっても、今1番身軽に動けるのは私だ。病気がわかってからヘルパーを雇い、家を探すというのでは、随分タイムロスがあったはず。もう帰国することが決まっていて準備も大詰めのところでの母の病気発覚は、タイミング的に助かったとも言える。誤解を恐れずに言えば、あと数ヶ月、私が完全に帰国してから母が病気になったとしたら、もっとタイミングが良かったと思う。もちろん、健康でいてくれるのが1番なのだが。


そして、ヘルパーRをクビにする直前のようなタイミングであったのも結果的に良かった。もし予定通りに解雇したとして、とっても後味の悪い解雇の仕方だったはずで、仮にそのような思いをして解雇した後に母の病気が分かっていたら、その時点では我が家にヘルパーはもういないなので、今頃私たちはとても困っていただろう。


いろんな意味で、本当に良いタイミングで物事は運んでいると言わざるを得ない。

でも、こんな出来すぎたストーリーになるなんて!こんなことってあるのか!?

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