またしても…⁉︎(28)
即日解雇することが決まったが、その後何事もなかったかのように過ぎている。彼女は何も知らないので当然いつも通り、私も至って普通にしているが、心の中ではXデー当日、ヘルパーRはどんな反応なのだろうか、きっととてもショックに思はずで、私たちはとんでもなく酷いことしてるのかな、とココロがムズムズする。その反面、彼女は一緒に住む上で信用できないことをしでかしたわけで、よくもまぁ抜け抜けとそんな嘘をつけるもんだな!と怒りの気持ちも湧いて、複雑極まりない。
毎日悪夢を見て、朝ドッと疲れている。3日に1度は同じ夢。学校や高速道路のトイレみたいに、ずらっと並んだトイレ。入ろうとするが、割れて壊れている、トイレットペーパーがない、ひどく汚れている、鍵が閉まらないなどの、ありとあらゆる理由でトイレに入れず、綺麗なトイレをずっと探し続けている私。トイレは、ある時は金でできていたり、ある時は製鉄工場のようにパイプが絡み合ったような複雑な形状のトイレだったり、とてもシンプルだけど個室が広過ぎてトイレットペーパーまで届かないとか、ドアを開けたら草原の中に便器がポツンとあるとか。。。ネットで検索してみると、トイレの夢はストレスに大きく関わっているらしい。現実に寝ている私がトイレを我慢しているから見ているわけではない。もちろん、この夢で目が覚めてついでにトイレに行くことはあるが。
夫も少し心配しているようだ。変な夢というだけではなく、眠りが浅くて睡眠不足になっているからか、目が腫れていることが多く、いつもの時間に起きれない日もあるからだ。「もう少しの我慢だから。」と慰めの言葉も言うようになった。今までは、少し愚痴っても「育った国や環境が違う他人が一緒に暮らしてるんだから、少しは我慢しないと!」としか言ってくれなかった。
そんな風に毎日が過ぎていくのだが、日本の新居に関わる手配やらメールでの打ち合わせ、パートも彼女が出ていくまでは続けるので、考えることもやることもあるので気は紛れているのが救いである。私と夫が新居の準備で一時帰国する日も近づいてきた。そして、ヘルパーRは私たちと入れ替わりのように里帰りする。その日も近づいてきた。彼女もフィリピンの家族へのお土産を探しに行くのか、週末の彼女の休日には小さめのスーツケースを持って外出したりしているし、仕事が終わってから帰国の件で夜家族と電話でもしているのだろう、小さい声で話しているのが聞こえたりする日も増えている。
昨夜、娘と打ち合わせしたのだろうか、朝、私に話しかけてきた。
「Ma'am, Ma’amとSir は、いつ日本から帰ってきますか?」
「カレンダーに書いてるでしょ??」と言いながら、私が来月のカレンダーをめくりに行こうとすると
「いえいえ、日にちは知ってるんですけど、その日何時のフライトですか?何時に家に戻りますか?」
「時間?えーと、何時だったかな。。。」
「私は、○日の朝に出かけます。Ma'amたちは、その前の日の夜遅くになるのかと思って。私はチケットを買わないといけないので。」
「え?○日の朝に出かけるのに、○日の朝乗る前にチケット買うの?」
「えーと、はい。娘がチケットは予約してくれます。……あ!私勘違いしてました。私の出発の前日じゃなくて、2日前にこちらに戻るんですね。だったら大丈夫だと思います!」
あー、なるほど、要するに、彼女は私たちに里帰りのチケットをもらってから帰国したいわけだ。里帰りしたらきっと家族のためにたくさんお金を使うだろうし、まして娘の結婚式なのだ。お祝いを贈るはずだし、孫にも何か買ってあげたいだろう。私たちが夜遅い便で帰り、自分は明朝の便だとすると、時間的に現金受け取れないかも?って思って帰りの時間を聞いておきたかったのだろう。
「当日に言われても、ちょうど現金があるか分からないから、前もって金額が分かったら教えてもらえる??お釣りがないように用意してって夫に言っとくから。」
「OK, Ma'am」
そして、それをチャット夫に伝えた。
『ヘルパーRが、里帰りのチケット代欲しいみたいだよ?なんか、私たちが日本から戻った時に受け取りたいみたい。とにかく、金額分かったら、あなたに伝えるように言っといたからよろしくね。』
それに対して『OK』と返事が来たが、夜帰宅した後に、夫が言った。
「あのさ、今回の帰国のお金って、俺たちが負担する義務ないんじゃないか?」
「え?でも、年に1回の里帰り費用は、雇い主が出してあげないといけないよね?」
「そうなんだけど、まだ雇って半年くらいだし、まして今回は娘の結婚式じゃん。それって完全に私用の帰国だからさ、出す義務ないんじゃないかと思って、俺も取引先でお世話になってる人に聞いてみたんだよ。そしたら、そこんちは、2年に1回しか里帰りの費用は出さない決まりになってるって。要するに、2年契約のうち、1年経ってから初めて里帰りの飛行機代をもらう権利を与えるわけ。ちょっともう1度契約書を見てみる。君も友達にどうしてるか聞いてみて」
えー、ヘルパーR、またしても私たちから騙し取ろうとしてる?!




