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作戦会議(25)

 『この国のヘルパーは、3〜4ヶ月に1度健康診断を受ける義務があるんです』


 これは、全くの嘘で、彼女の作り話であることが判明した。これまでのイライラが溜まりに溜まっていたため、ヘルパーRとおさらば出来る正当な理由が出来たことに、喜んだ。人の失敗の上に成り立った喜び。不謹慎であることは重々承知しているけれど、それほどに私の精神状態はヤバいところまで来ていたと思う。


 2回目に辞めると言った時、彼女の涙にまんまとダマサレタ夫だったが、さすがにこの嘘については、全く許す気はなく、粛々と辞めてもらうための手筈を整えていく。まず、ヘルパーRが要求してきた3,000円の診察料をどうするか。もしも、何かの治療のための費用ならば出す義務がある。でも、ヘルパーRは『私は健康です』と言っている。ということは、私たちにはあくまで健康診断の結果を聞きにいくと言っているのだから、事実はどうあれ、私たちに医療費ではなく『健康診断』の費用を負担してくれと言っているのと同じである。ここで、彼女に全部嘘だよね?!と問い詰めたとする。もう紹介所の人間がそれは嘘だ!と言ってるので、彼女は言い逃れできない。だから『実は持病があって、治療しているんです』とあっさり認める可能性が高い。この展開は非常にマズイ。なぜなら、ヘルパーを雇用してから妊娠や病気になった(または発覚した)場合、それを理由に解雇できない、という法律があるから。妊娠や病気で十分に働けなくなったとしても、契約が満了するまでは給料を払って雇い続けなければならないということでもある。ヘルパーを守る観点からの法律であるが、出産や手術なんかの時は、当然しばらくの間は静養しないといけないような状況になり、まったくヘルパーとしての仕事ができないばかりか、逆にお世話しないといけないかもしれない。医療費も払ってやり(保険には入っているので場合によっては金銭の負担はない)、至れり尽くせり。今回のヘルパーRは、病気だと判明していないし、何か持病があったとしても働けないような深刻なものでもなさそうだが、いざ『実は持病があるんです』と白状されてしまうと、健康診断は義務!と嘘をつかれた上に、簡単に解雇できなくなってしまう。


 そこで、とりあえず、私たちは騙されたフリをして、今回は3,000円払うことにした。ただ、これまでの彼女の嘘は、全て口頭でのやり取り。いざ嘘を暴露する段階になった時『私はそんなこと言ってません!』と言われたら証拠がないのだ。なので、わざとチャットでのやり取りをして、文章として残すことにした。夫はまだ彼女の3,000円出してくれメッセージには返事をしていない。なので、罠にはめるようで心が痛まないでもないけれど、次のようなメッセージを送る。

『事情は分かりました。3,000円はそこまで高額ではないし、払います。ですが、それは本当に私たち雇い主が払わないといけない費用なんですか?今まではあなた自身が払っていたものなのに??それよりも、あなたはどこか悪いのですか?私たちはあなたの身体の方が心配です』

すると返事が返ってきた。

『Sir, Ma’am、私を心配してくださってありがとうございます。ヘルパーと雇用主の間の契約書に、ヘルパーが雇用されている間は雇用主がヘルパーの医療費や入院費を支払うと明記されています。昨年の検診では1,000円だったのであなたに支払いを求めませんでした。今月から診察費が値上げされたと病院から聞きました。最新情報をお知らせしますと、私の健康状態は良好です!私たちヘルパーは、この国で働いている間、健康状態を監視するために、3〜4ヶ月ごとに医師の診察を受ける必要があります』


 はい、証拠ゲット。完全に嘘なのにさらっと書いている。自分を苦しめることになるとも知らずに。もう言い逃れはできない。前半部分の、『雇用主が医療費と入院費を支払う』というのは本当である。でも、検査費用とは書いていない。それを私たちに払えと言ってるのは彼女の矛盾。雇用主が払うべきものを私が自己負担してました!と恩着せがましくもあり、イラっとする。こんな嘘をサラッという人間だ、「Ahhiii! 実は検査ではなくて、体調が悪いので行ったんですー」と言い訳を言いそうだが、後半にはっきりと健康状態は良好と書いているわけだし、定期的な健康診断のための予約だと言って出かけているのだ。何を言ってきても無理が出てくるのだよ、ヘルパーR。


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