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五神唄  作者: 成倉爻哀
第一章
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12/29

五神の源(10)

居間の丸机に向かい合わせに座る礼薫と心枢。

「仕事」としての用事でない限り、顔をあまり合わせない二人にとって、世間話というものはあまり交わされなかった。

極庶民に近い生活をする心枢に対して、礼薫は日々の殆どが役所だ。知る知識の層も大分違う。

その割、心枢はあまり礼薫に仰々しい挨拶や言葉遣いはしない。

もちろん公の場では別だが、その心枢の態度について、礼薫も注意や促す事もしなかった。

それが、南で唯一「闘王」では無い付き合いの一面なのかもしれない。

「その後、何か報告は?」

長い沈黙をようやく破ったのは礼薫の方だ。

「いや、それらしいものは特に。あるとすれば、義胡から「薬玉」の依頼があった位だね」

「…薬玉?」

「おそらく「智功」の頼まれ物だろう。今回、火遁が来た件に関して、智功は少し「バツ」が悪いようだからね」

心枢は小さく笑を漏らして、茶碗を口元に運ぶ。

そんな心枢につられて礼薫も笑を漏らした。

「しかし、疑いをかけられたお前にも責任はあるだろう、心枢」

「まあ、それは…。しかし、まさか義胡が火遁を出してくるとは思いませんでしたけどね。あいつなら、貴殿に協力を煽るかと」

「どうかな?私はお前が「裏切り者」ではないという事は始めからわかっていたからね」

「…というと?」

少し笑いを含んだ礼薫の言葉に、心枢は首を捻る。

「まあ、顔馴染の子供という事もあったが、俺はお前が生まれた時からお前をずっと見ていた。お前は、幼い頃から揺ぎ無い「何か」を持っていたからな」

「…何かとは?」

確かに礼薫とは家族ぐるみの付き合いが長い。

心枢はあまり厳格な父が好きではなかったが、礼薫の家を訪ねるときは必ずついていった。

自分が生まれた時には十九の礼薫が、その成長を見ていたというのも解る気がする。

「それが何かといわれると答えようが無いのだが、そうだな、智功の様な。境遇は似ているわけではなにのな。

どこか他の人には無いモノがな。きっと「火遁」に惹かれるものは同じものを持っているのかもしれない」

心枢は煙管い火を入れて、すぅっと一口吸い込むと煙と共に笑いを漏らす。

「確かに、両親のいう事を全て素直に聞き入れてきた智功と、父親の意見には絶対従わなかった私とではまったくと言って良い程正反対ですからね」

「しかし、全てを聞かなかったわけではないだろう、心枢。確かにお前は父親の家業である医者は継がなかった。しかし、関係のある仕事には就いた」

心枢は礼薫の言葉にゆっくり目を閉じる。

「…どこか、あの人を超えたいと思っていたのかもしれません」

「超えたい?」

「ええ。まあ、あの人が亡くなってしまった「今」では、もう確認もしようがありませんけどね」

礼薫は温くなった茶を一口飲み込んで、心枢へ目線を向ける。

「まあ、好きなように生きれば良い。何かに縛られずに生きる道が、お前には似合ってる」



□□□□



土輝邸の中に足を踏み入れると同時に、水杵は足の動きを止める。

その足を動かす隙間が無い程長い紙が広がっていたからだ。

「なんだ、これは」

「ごめん、今片付けるよ。納めるのに間に合わなくて」

部屋の奥の方から、その紙を筒状に丸めながら苦笑いを漏らす土紬が歩いてくる。

部屋の隅を見ると走書きをした紙の張り付いた箱の中に同じように巻き取られた紙の筒が何本か放り込まれている。

「土紬、何をしてる?」

「木櫟が家系図を纏めてるんだ。書くペースが早くてね」

「…そんなものは義胡達にやらせればいいだろう?なんでおまえがやってるんだ」

「他の仕事に専念させた方が良いかと思ってさ」

そんな土紬の言葉に、水杵は額を手で抑える。

今回の件の実行に関しては、三人のみの仕事で木櫟以外の五神は何もしなくて良い。

何か問題があればその時動けば良いだけだ。

食事や生活の世話は別としても、ここまでする必要はどこにも無い。

「土紬、それでは闘王に示しがつかないではないか」

「別にいいじゃない。闘王というより、お客さんみたいな感じがするんだ」

土紬は笑いを漏らしながら、巻き終わった紙を箱に入れる。

「あ、水杵!丁度良かった」

「義胡?」

「ちょっと頼みたい事が…」

義胡が水杵の横にいる土紬の姿を見て、言葉を止めた。

「いけね!水杵様!」

慌てて敬称を言い直す義胡に、土紬は笑いを漏らした。

「構わないよ。いつも通りで。「示し」はつかないだろうけど」

「…だそうだ、義胡」

口端を引きつらせる水杵に義胡が両手を合わせて頭を下げる。

「それで?頼みごととは?」

「陰国の上層部関係図を調べてたんだけど、数人「元」がわかんねえ奴がいるんだよ」

「元?」

「出生っていうか、「誰」の関係でそこに入ったかっていうの。炎遁様や風啼様ならわかるかと思ってさ。これなんだけど」

義胡の差し出した紙切れに目を落とした水杵の横から土紬が覗き込む。

現在の陰国王家の簡単な家系図に繋がって、国を指揮する立場の人間の名前が何人か書いてある。

その内の三箇所にただ赤い線が引かれていた。

「その赤線の部分は名前はわかんねえけど、全て子供だ。おそらく直接国に関わってるわけじゃないと思うが、その三人が高い位置にいる事は確かだろうな」

水杵が紙から義胡へ目線を移す。

「子供?」

「この辺の人物関係を調べたのは智功。直接会ってきた」

「会った?」

土紬と水杵が声を綺麗にそろえた。

「どうして?」

「普通にいたからだよ」

筆の尻を咥えながら奥の椅子に腰掛けている智功の声に、三人は目線を向ける。

「どういう事だ、智功」

「陰国はそいつらを隠す様子じゃなかったって事だ」

「…隠していない?」

「普通に王家人間しか入れない建物の周りにいたからな。普通の子供の様に。何してるかって聞いたら「国の仕事を手伝ってる」ってさ。そうだな、歳は少し上に見ても精々、十だか」

「十?その様な子供が何故、国に?」

「大人だったら、国に関する立場につく時は「登録証明」がいるでしょう?」

義胡の言葉に土紬が頷く。

「ああ、陽国との関係上での書類だね」

登録証明は互いの国において、誰が指揮をとるかを纏めた書面。

互いにこれを交付する事で、一方的な攻撃を避けるという公約の様なものだ。

これに記された人物は月一回の顔合わせとされる会議での双方監視下に置かれ、双方へ出入りする商人にまぎれた役員の監視もあり、虚偽の申請は略不可能とされる。

心枢が陰国に狙われたのは、この申請が通っていなかった所為だ。

土紬の言葉に、義胡は首を軽く立てに下ろす。

「この証明がある以上、国を指揮する立場に申請の通ってない人物を置くのは怪しめって言うようなもの。だけど、子供の場合はこれがいらない」

「…五神の子供の様に。という事だね」

「そう。これは陽国が提案した事だから、陰国が利用しても文句はいえない」

水杵が眉端を少しあげ、小さくうなる。

「…登録証明は国全体としてはいいものなんだが、小さい穴が多いものだからな。しかし、そう簡単に口を割る子供を何故?」

「双方の情報を得る為かもな」

智功が筆を机の上に置いて立ち上がる。

「情報?」

「少なくともそいつらには俺が国関係で動いている事はわかったわけだろ。あっちの情報をくれてやる変わりに、こっちの情報も得ようって事。あいつらを炙っても、大した情報はねえと思うけどな」

「もしくは、その逆かもね」

土紬の言葉に、水杵が眉を潜めた。

「逆とは?」

「子供を炙っても陰国としての大した情報は出ないだろうけど、その子供自体が「陰国」の主軸の可能性があるってだよ。例えば、部隊を指揮するとかね」

「まさか。十もいかない子供が部隊の指揮を?」

義胡が土紬の意見を否定する様な口ぶりをみせた。

「智功、お前はそうじゃないといえる?」

土紬の言葉に、智功は眉を潜めた。

「…言えませんね」

「智功、お前まで」

水杵は土紬の言葉の意味を汲み取った。

義胡の肩を叩いて、目線を智功へ向ける。

「智功が闘王になったのはいくつだ、義胡」

「…え?それは…」

義胡が思わず口の動きをと止める。

「智功並みの頭脳を持つ子供を「兵器」に仕立て上げるのは簡単な事だ。死を恐れず、相手を死に追いやる事も厭わない「兵器」にね」

「確かに、子供であることが、兵器にするもっとも有力な「元」だね。その存在が消滅しても、国にとっての痛手は少ない。子供には、国にとっての「力」はないから」

「…利用する為だけの糧だと?」

義胡が珍しく動揺している。少し呼吸が速い。

「義胡、どうした。少し落ち着けよ」

肩に置かれた智功の手を振り払って、義胡が口元を押さえる。

体が酷く震えていて、汗が滲んでいる。

「義胡。どうしたんだ、落ち着け」

「…一人に…してください」

駆け足で部屋に入った義胡に、水杵は小さく首を捻り、土紬に目で合図を送る。

「解った。智功と木櫟は続けて調査をして。水杵、経緯については炎遁様と風啼様に僕が聞いてみるよ。火遁の修行の続きを」

「…ああ」

「あ、土紬。これも持っていって」

奥からかけて来た木櫟が差し出した紙に書かれていたのは似顔絵だ。

「智功から聞いた人相だけで描いたからあんまり似てないかも」

智功が似顔絵を見て首を横に振る。

「いいや、結構良い線いってる。この悪ガキって顔がな」

智功は木櫟の頭を軽く叩いて笑みをこぼした。



□□□□



水龍邸に戻った水杵を出迎えたのは、金樺と火遁だ。

「お師匠、おかえりなさい」

「お疲れ、水杵」

「金樺、丁度良かった」

「ぅん?」

鼻に抜けるような金樺の返事に、火遁が小さく笑をもらした。

「ほらね、言ったとおりだろ?金樺」

笑いを含んだ火遁の言葉に、水杵は首を捻る。

「どういうことだ?」

「いや、お前が帰ってきたとき、必ず「俺がいて丁度良かった」って言うって火遁がな」

「師匠、俺いない方が良い?」

「…いや、かまわない」

知らない間に、火遁は水杵の行動パターンを把握していたらしい。

広間に移動して腰を下ろした水杵の向かいに金樺、その脇に火遁が腰をおろした。

「どうして、私がそういうと?」

「昨日俺、使いで土輝邸に行ったでしょ?そん時に木櫟が言ってたんだ、「戦闘においての主軸が子供かもしれない」って。ただ断定的じゃないから師匠には黙っててくれって言われたけど」

「子供?本当か?」

「ああ。まあ、それは炎遁様や風啼様への話で、金樺に聞きたいのは別のことなんだが」

「別?」

「子供を主軸に据えるのは多少なり、予測はしていた事だ。おそらく、今回の件で智功や義胡もそれ程驚いた事ではないだろう。しかし、土紬がその子供を「兵器」と言った後の義胡が少しな」

そんな水杵の言葉に金樺は目を細めた。

「あいつ、まだ引きずってんのか?」

「どういうこと?」

火遁が金樺を見て首を捻る。

「そうだな、あいつが闘王になる前だから十年位前の話だ。国家役員には必ず「疎開地」の偵察に回るっていう仕事があるんだよ」

「ああ、自国や報告の調査を兼ねたものだな。詳しくは知らないが、場所によっては相当悲惨だという話だが」

「今の西は大分、「マトモ」にはなっちゃいるが、端の村にいきゃ戦争で親を亡くした子供だけが集まってる所が結構あるんだ。闘王では、国家役員は礼薫様と義胡だけだからな。その手の話はあんまり聞かないし、行って見て初めて解るって事の方が多い。俺達も細かい所までは把握してないし、国の治安は国の王家の管轄だからな」

「それって戦争孤児ってやつ?」

火遁の問いに、金樺は軽く頷く。

近年ではこういった孤児の対策は進み、それ程陽国内での貧困の差は少なくなってきている。

しかし、それが全土というわけではないのも実情だ。

国によっては他の問題も多く、そこまで手が回らないという所も多い。

医療が不足する理由も、これに多く見られる。

「しかし、何故お前がそんなことを?」

「あいつが偵察に行かされる場所を聞いて、止めたよ。どうしても行くなら俺も一緒に行くっていったんだ。とてもじゃねえけど、一人で行くには危険すぎるからな」

「…どういうことだ?」

「そこは西の中で一番「悲惨」な村なんだよ。生きる為に、大人も子供も関係なく闘いをする。地図上に名前も記されない、陽国がお手上げの村だからな。内部は一回見たら忘れられない光景が広がってる」

小さく、つばを飲む音が聞こえた。

「誰かの為じゃない、自分自身を守る為に、自身が自身の為の兵器なんだ。子供も大人もな。偵察なんか出来る状態じゃない。よそ者を見ただけで、襲い掛かってくるんだからな。お前らも、あそこで見た子供の目は忘れられないと思うぜ。俺もしばらく頭の中から離れなかったけど、子供が好きな奴が見たら相当「傷」になるだろうな」

「…じゃあ」

「義胡の仕事は元から「子供の救済」が殆どだからな。偵察に選ばれたのがあの村なのも頷けるが、未だに引きづってるんじゃ、相当「酷」だったって事だ」

火遁は水杵の方へ目線を向ける。

「他の方国にも、そんな村があるんですか?師匠」

「…いや、南や北では、そこまで酷い所は聞かないね。西は昔、戦いの多い国だったから…」

「今はあの村も大分良くなったみたいだけどな。天照大神が手を付けられない村を変えたってだけでも、義胡は相当力を使っただろうな。精神的にもさ」

水杵は少し不安げに眉を潜めた火遁を見て、小さくうなる。

実践で子供を相手にする事が無いとはいえない。

ましてや、陰国の主軸にその子供がいるとすれば、避けて通れない道だろう。

その時、自分達は躊躇する事無く、敵を倒せるだろうか。

火遁が神になるまであと数月。

その決断はもう目と鼻の先だ。

「師匠?」

「どうした、水杵」

「え?ああ、すまない。大丈夫だ。少し早いが夕食にしよう。土紬から調達してきた」

「やった!土紬のご飯久しぶり!」

あからさまに明るい表情を浮かべる火遁を見て、金樺が笑いを漏らす。

「やはり、炊事用に人を雇ったらどうだ、水杵」

「…そんな必要は無い」

「頑固者…」



□□□□



風神邸の広間にある椅子に並んで腰掛けた風啼と炎遁。

今回の件で、炎遁は風神邸にいる事が多かった。

何かと「報告」をされて処理するのには、現行の火神である炎遁を頼らざるおえない。

炎遁にとって、これが火神としての最後の仕事となるだろう。

「お前には、火神引退の後にも何かと面倒をかけそうだな」

「構わないさ。どうせ引退しても一人で隠居生活だからな」

「やはり、後に嫁を取る気はないのか?まだ人生は長いぞ?」

炎遁は風啼の言葉に小さく笑みを浮かべた。

「そうだな。まあ、今回の事と火遁の件が済んだら考えるとしよう。俺が火神を止めても、俺と火遁が親子でなくなるわけじゃないからな。余計な心配はかけたくない」

「相変わらずだな」

「まあ、火神になれば新しい母親が出来ようが関係無い状態になるだろうがな」

鼻先で笑いを漏らし、風啼は煙管に火を落とした。

「風啼様」

玄関の方から聞こえた土紬の声に、風啼が顔を上げる。

「土紬、入っておいで」

しばらくして顔を覗かせた土紬は、炎遁の顔を見て軽く頭を下げる。

「やはり、こちらにいらっしゃいましたか」

「火凰邸へ?」

「いえ。おそらく、ここにいるだろうと思いましたので」

愛朱が椅子を引き、その前に茶を置いた。

「智功達の様子はどう?随分、熱心に世話を焼いてるようだけど」

「皆、元気ですよ、世話は邪魔にならない程度に。今回は智功達のことで報告が」

土紬の言葉に、炎遁と風啼はゆっくり顔を見合わせた。

「何か問題が?」

「問題…というか陰国の主軸の事なのですが、どうやら「子供」がいる可能性が」

「子供?」

「智功が陰国の国家建築物の近くで見たそうです。その口から「国の仕事」をしていると言ったと。その子供と関わる人物の事をご存知無いかという事です」

土紬の出した似顔絵を見て、炎遁は目を細めた。

風啼も炎遁の持つ紙を覗き込んで、眉を潜めた。

「何か?」

「…逐磨(ちくま)だ」

風啼と炎遁の声が揃う。

「…逐磨?」

不思議そうに首を捻る土紬。

しかし、風啼と炎遁が確信してその名を口にしたのだから、間違いではないだろう。

「逐磨は西国廃墟地にいた陽国の子供だ」

「西国廃墟地は、全住民を私設に移したのでは?」

「何人かの子供が抜け出したという報告はあったが、消息が殆どわからないと。抜け出した子供に逐磨がいたとは聞いていたが…」

風啼は炎遁を見て小さく舌打ちを鳴らした。

「その逐磨とは、どういった子供なのですか?」

「言うなれば、廃墟地の「筆頭」だな。廃墟地で生まれ、生きる為に、自分の両親や兄弟も殺した。保護した時が七つ、私設から出たのがその数月後、今は…九つという所か」

「保護した時が七つ?では…」

「両親や兄弟を殺したのは五、六だと聞いている」

土紬はそんな言葉に眉を潜めた。

西国の廃墟地については陽国でもっとも治安が悪い場所とは知っているが、実際に目で見たことは無い。

「そんな歳の子供が…」

「廃墟地では珍しい事ではないよ。西の廃墟地は天照大神すら手の付けられなった最悪の場所だ。義胡がいかなければ状況は更に悪化していた」

「…なるほど、それで義胡があんなに動揺したのか」

土紬の言葉に、炎遁が眉端を動かす。

「この似顔絵を義胡は?」

「いえ、義胡がいなくなってから木櫟が持ってきたので、おそらく見ていないと思います。二人が見ただけで解ったのなら、義胡は容姿を聞いた時点で解ったと思いますし」

「風啼、この件、逐磨が関わっているのなら義胡を外した方が良いかもしれない」

「…義胡はそれを聞くと思うか?炎遁。逐磨は、義胡が最後の最後まで粘って私設につれてきた子供だ」

炎遁が声を詰まらせる。

「…しかし、このままでは逐磨と戦う事になる」

「解っているよ。しかし、それについては義胡本人が決める事だ。苦渋かもしれないけどな」

「…義胡にはこの子供が逐磨という事を言うべきでしょうか?」

「そうだな。火遁が火神になるまであといくらもない。遅かれ早かれ、義胡にも解る事だ」

土紬は机の上に置かれた髪に書かれた似顔絵を見つめ、ゆっくり目を閉じる。

自分が中央神として、するべき事はなんなのか。

ゆっくり進んで行く、短い時間の中で。

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