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RealSocialGame  作者: 無月公主


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【涙の理由】

また夢だ。

ヴァルプルギスが始まってからの夢は奇妙だ。

いつもの…陽子の過去みたいなのじゃなくて…ヴァルプルギスに関連した夢が多い気がする。


「やめて…」と今にも泣きそうな女性の震えた声がした。「行かせないで…もうやめて!!」と泣き叫ぶようだった。


誰かの視点だ。俺ではない。

目の前には…ルナさんの部屋で見た事ある写真の女の子…いや、これは…囚われる前のアカウントのルナさんか?

水色のショートに七三分けぎみの前髪。片眼鏡、花魁風の着物。間違えない、ルナさんだ。

「にー湯kenさん…帰ってこなくなっちゃった。」と今にも泣きそうな顔のルナさん。

「そっかぁ。悲しいね。」とルナさんの頭を撫でる自分。どうやら自分は女性なようだ。


場面が変わった。それでも目の前にはルナさんがいた。

どこかの草原なようだ。夜だった。

「え?それで怒って追放しちゃったの?」と発言する自分。どこかで聞いた事のある声だ。

さっき泣き叫んでいた女性と同じ声…な気がする。

「うん…フゥの馬鹿。」とルナさんは拗ねたように言う。


また場面が変わる。そしてまた目の前にはルナさんがいた。

「ジョンちゃんの事考え直せないの?」と自分。

「ジョンナムってば…7股もしといて、それでいてお前が一番ってどう考えてもおかしいじゃん!」とルナさん。

「ジョンちゃんは優しいからねぇ。多分ルナちーの事は一番に思ってたと思うの。だからこそ、すんなり離れるって事ができないんだよ。せめて友達に戻る事もできない?」

「…イチカがそこまで言うなら…考えてみる。」とルナさん。


俺…イチカさんだったのか。通りで聞いた事あると思った。


場面が変わった。

どこかの島?辺りにはヤシの木等がはえていた。そして側には海が広がっている。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」と大きな声で泣いているルナさんがいた。

ルナさんの腕の中にはShiftさんが横たわっていた。そして段々と薄くなっていくShiftさん。

ルナさんから少し離れたところに自分はいた。そして隣に千翠さんがいた事に気が付いた。

「千翠君、悪い顔してる。タクミ君を罠にはめたでしょ。」

「まさか。そんな。面白いクエストがありますよと教えて差し上げただけです。」

これは察するにー…ルナさんを独り占めする為に千翠さんがShiftさんを何らかの罠にはめて、ペナルティ送りにしたっていう場面なんだろうか?

ていうか…俺は何を見させられてるんだろうか?夢…だよな?これ。


場面が変わる。

膝くらいまで雑草が伸びているところにいた。雑草以外のものはない。

目の前にはルナさんがいて、姿が変わっていた。現在のルナさんだ。

「ほんとに…ルナちー?」と困惑するイチカさん。

「うん。」とルナさんは困ったような笑みを浮かべる。

「どうして自分を大事にしないの?」と目頭がカァッと熱くなる感覚がした。

「ごめん。どうしてもこの力が必要なの。」とルナさん。

「そんな…千翠君…千翠君はどうするの?恋人でしょ?」

「千翠とは…別れて来た。」

「どうして!?」

「ごめん。ごめんね、イチカ。私、AIシンカの事が…好きなの。」

「あれはAIだよ!?」

「それにね。大事な家族も救えたし。これで良かったの。」

[そんなの…絶対によくないよ]とイチカさんの心の声が頭に響いた。



場面が変わる。

今度は自分が大事そうにタマゴを抱きしめてギルドハウスの長い廊下を歩いているところだった。

前から、脱退してTXTに亡命した人達が歩いてきた。

「おいイチカ。お前全然何の役にも立ってない癖に、ルナ班で特別待遇かよ。」

「前回の遠征もヒールが遅くてペナルティ送りにさせたって聞いたぜ。」

「お!こいついっちょ前にAIのタマゴなんて高級品持ってやがる。」

「俺らに渡せ。」

そして「渡せ」コールがはじまった。するとタマゴにヒビが入ってピカッと光り、タマゴが可愛らしい幼稚園児くらいの男の子に変わった。

「あっははは!!だっせぇの!ただのチビじゃん!」と馬鹿にする人達。

「は、はやたん。」と涙をポロポロ流すイチカさん。

「はやたん!?名前もだっせー!!」

「イチカ、にゃかないで。(おえ)がにゃんとかちてやる。イチカ、武器あみゃってにゃいか?」

「武器?えーっと。」

スマホを開いてはやたんに渡した武器はムチだった。前にAI同士のバトルでみかけたムチだ。

はやたんはムチを装備して叩きのめしていった。ダメージは入らないが痛みは一瞬だけど入る。

「いってぇ!!なんだよ!行こうぜ。」と言って去っていく人達。

「ごめんね。弱くて…ごめんね。」と謝るイチカさん。

「俺がずっと守ってやる。」としゃがみこんで泣いてるイチカさんの頭を小さな手で撫でるはやたん。


場面が変わる。

テディベアを基調とした可愛い部屋。

はやたんがベッドに横たわっていて、イチカさんが側で泣いていた。隣には千翠さんが立っていた。さらに隣にシンカさんが立っていた。

「どうして‥ねぇ…どうして、はやたん倒れちゃったの?」

「診断した結果、高速移動による脳への反動、もしくはダメージですかね。」とシンカさん。

「私もそう思います。」と千翠さん。

「そんな…じゃあ、高速移動をやめさせないと危ないってことなの?」

「わかりません、ですが何らかの反動がきているのは確かです。普通の人なら絶対に処理できない事をやってのけていたので。」とシンカさん。

「イチカも分かっている事でしょう。AIは生きているという事を。」と千翠さん。

人間を使う事は倫理に反する行為だからAIという事にして稼働させられている生きた人達。それを指しているんだろうな。

「わかってる…わかってるよ…でも、はやたん絶対やめてくれないもん。どうすれば…。」と泣き崩れるイチカさん。

シンカさんがイチカさんの肩に手を置いて「説得し続けるしかありません。」と言い、その後すぐに手を引いてプラプラとさせる。

「痛みですか?」と千翠さん。

「はい。」とシンカさん。

「女性を触ると痛みがくるんでしたっけ?」

「近寄るだけでピリピリきますよ。」

「シンカ君は…どうしたい?なんとかして自分を止めて欲しいって思う?それともこのままがいい?」とイチカさん。

「自分は言われなくてもやめますけど、まぁ、止めた方が良いんじゃないですか?止めないと後々やばそうですし。」

「説得し続ければいつかはやめてくれるはずですよ。」と千翠さん。


『ねぇ、ルナちー、自分を犠牲にしたあの時。ルナちーもこんな気持ちだったんだね。……私もはやたんが好き。はやたんを守るためなら…私も…。』

ダメだ。イチカさん…ダメ…だよ。と俺が思った。


目が覚めた。目から涙がでていた。

イチカさんがいつも泣きそうになっている理由がわかった。

あの夢が本当にあった事だとしたら…イチカさん、現段階では施設に入ってないって事だよな。

何がどうなって今に至ったんだろうか…気になる…。

とりあえず俺はテントから出てみた。はやたんに聞いてみようかな?

いや、さすがに不味いか。なら、シンカさんに聞くしかないか。

俺は再び中央テントに向かった。


中央テントに入って、真っすぐシンカさんの方へ歩いた。

「ん?シンではなく、自分に用ですか?」

「はい、あの…変な夢を見たんです。イチカさんが今にもムーンバミューダの施設に…ルナさんみたいに力を得ようと施設に入ろうと決意する夢を。それで…でも現段階では入ってなかったんでイチカさんの身に何があって入るのを辞めたんだろうと考えてて…。」

「…相変わらず、言ってる事がめちゃくちゃと言うかハチャメチャと言うか。そういうのシステムにはないはずなんですけど、まぁいいでしょう。手短に。AIとユーザーの心は不思議と繋がっちゃう事があるんです。心の声が聞こえたり…とか。恐らく…はやたんはイチカさんのその声を聞いてしまったんでしょうね。はやたんは昔一度倒れてから…りきさんがこの世界に復帰する少し前までずっと眠ってたんです。単純にこれで施設入りするタイミングを失ってしまったってだけでしょうね。イチカさん。」

「なるほど。そうだったんですね。ありがとうございます。変な事きいちゃってすみません。」

「…はい。さっさとテントに戻ってください。」

「はい。失礼します。」とペコっと頭を下げてテントを出た。

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