【雷と雨】
南に着くと半壊滅していて、バリアと結界の中に瀕死のダリアさんが横たわっていた。
恐らく、爆風か何かを浴びてここまで飛ばされて、無敵空間に入って死亡を免れた感じか。
スゥがダリアさんにヒールをするとダリアさんはすぐに起き上がって「雪のヒーラーが全部いかれた。」と言ってスマホを取り出して誰かに電話をする。
エイボンの目を借りて生き残ってる味方にスゥを行かせてヒールをかけて回った。
フゥとハクでなんとか味方を運びこんでバリア内にいれると、派手な格好…黄金の花魁風着物に赤い派手な髪飾りをつけた金髪金眼の女性が真っ赤な槍でバリアを破ろうとしてくる。
「くっ…さすがミルフィオレ。普通のバリアじゃないな。もっと初歩的な…これは聖域の舞か?」とぶつぶつ言いながら槍でバリアを刺す。
もちろん俺はハナビに詠唱させていて、そこら一帯をマグマの海にしてしまおうと思っている。
けど…弱点がある。相手に氷や強い水の魔導書持ちがいたら防がれてしまうし、千翠さんと同じ聖域の舞を5分も踊られれば防がれてしまう。
でも、あの派手な槍の人だけでも倒せればなんとかいけそうな気がする。
どうにか…どうにか倒してくれ…!!!
ハナビが詠唱を終えて、俺の顔を見てコクンと頷く。俺もそれに答えるように頷く。
「マグマプール!!」とハナビの声がして何もないところからマグマが流れ出した。
「なに!?」といち早く花魁衣装の人が気が付いて下がるが、ダポダポと広がるマグマに足をとられ、熱さに顔を歪める。
氷の属性の人は詠唱するが、魔力にポイントを振っているせいか体力が少ないようで、そのままマグマと共に消え去ってしまう。
目視で踊ってバリアを張るような人もいない。空へ逃げてる人くらいか…って…空には翼のはえた人がちらほらいるのと…槍の人、体力がだいぶとギリギリだけど空中に浮いていた。
そこを容赦なく、ハクとフゥを使って倒しにかかった。
ハクの見えない斬撃に対して槍で攻撃をはじき返した。フゥが風の刃で攻撃をしかけると空いている方の手でバリアのようなものを張って防いだ。
「オート防御にオートバリアがついてる。星5武器とオートバリア付きの星5防具ってとこだろうな。」とダリアさん。
「オートバリアって結構な人が持ってるものなんですか?」
「いや、オートバリアっていう星5防具用合成素材と星5防具のグローブ、指輪、腕輪、爪のどれかと合成できる。」
「爪!?俺まだ装備穴ぼこのままなんですよね。」
「は?」と護と咲とダリアさんが声を揃えた。
「ま、間に合わなかったんです。」
「技増やすのに全力費やしすぎだろ。」とダリアさんが溜息まじりに言う。
ヴァルプルギス前、特に負けた経験が無いせいで技磨きに没頭していた。
ミスティック連合の人達と練習試合なんかしたりして、どういう事をされると防がれてしまうのかとか、どういう武器に弱いのかを研究していた。
集めるって言ってたはずの防具は手付かず。ヴァルプルギスが始まってから、防具の事を突かれたらどうしようかと頭の片隅で心配していて、自分で墓穴を掘って今突かれてしまった。
「すみません。」
「そんな事より、アイツをどうにかしないと話にならん。」とダリアさんの視線は派手な槍の人だ。
「あの人強いですよね。」
「Chaos連合長でTXTギルド長のコンビクトだ。」
「TXTは俺も聞いたことあります。あれがギルド長なんですね。」
コンビクトさんは大きな声で「召雷、降臨!!」と叫べば青い雷がコンビクトさんに落ちて、コンビクトさんの体に何かチカチカしたものがまとわりついく。まるで雷を纏っているようだ。
「りき、俺のヒールと他が俺の邪魔をしないように援護することはできるか?」
「はい。俺はこの中から攻撃できるんでできると思います。」
「言ってくる。頼んだ。来いアキ。」と言うと、ダリアさんの影から黒いねっとりしたような液状の物体がダリアさんの右手に集まって黒い刀になった。「ちいろ。」と呼べばどこからか桃色の猫が走ってきてダリアさんの左手に体当たりするように突進して刀となった。
そして結界をすり抜けて赤黒い翼を纏って真っすぐにコンビクトさんの方へ飛んでいく。
そこで俺はフゥで大型の竜巻をだして二人の世界にする。
コンビクトさんの動きは恐ろしく早い。ダリアさんの攻撃を受けた後の引きの速さと次の攻撃の速度は目で追えないレベルまできていた。
エイボンの目じゃなくて俺自身の目だったら絶対追えなかった。
「その武器、武姫か?矛盾シリーズ、限定1日販売の武姫タイプ。」
「あぁ。3本集めるのに苦労したよ。」
「3本だと?あれは1アカウント1個販売だろう?」
「契約切りをさせた。」
「なんだと!?」
ダリアさんの右手の刀は一度ぶつかるとねっとりとした黒い液体が相手の槍に絡んでなかなか離れない。
そこを左手の刀でさらに攻撃しようとするとコンビクトさんは離れてしまう。
それを数回繰り返す。
「お前では私を落としきる事は不可能だ。特に今のモードはほとんど無敵状態だ。」
「ほぅ。」
素早くなんどもうちあってる時に俺がハクでコンビクトさんの背後を狙った。
バチッと刀がはじかれた。瞬間バッと後ろを振り向いて「なんだ?後ろから投げ物でもされたか?」とコンビクトさん。それからダリアさんの方へ向き直って「それより、私の付近にいて感電を食らいながら体力が微動だにしないとはどういう事だ?」と口角を上げる。
スゥがヒールを頑張っているおかげだ。俺も小人達の魔力が減らないようにしっかり魔力を注ぎ続ける。
「さぁな。」と言って何度も同じ攻撃を繰り出すダリアさん。
「埒があかん。………避雷針!!」コンビクトさんが大きな声で詠唱すると空から雷がとんでもなく落ちてきた。
ダリアさんはそれを全て軽々と避けきる。
そしてコンビクトさんにまた攻撃をする。
「だから何度も同じ手は………ん?お前…左手の刀を持ちかえたか?」
いつの間にかダリアさんの左手の刀がちいろさんではなくミズキさんに変わっていた。
「雷と言ったら…雨…だろ?」とダリアさんが言うと、空から赤色の雨が降り注がれた。
「なんだこれは…うっうわぁぁぁ!!!」と血の雨は雷のバリアをすり抜けてベトベトとコンビクトさんにくっつき、くっついた先から蒸気のようなものがでている。恐らく…溶けているのだろう。
「ダリアぁぁ!!貴様…!!」
ダリアさんはニッと口角をあげて、降り注ぐ雷を避けながら竜巻から出て結界の中に戻ってきた。
コンビクトさんが消滅すると共に「ちいろ。」と呼んでちいろさんを呼び戻した。
血の雨が止んで猫の姿でダリアさんの肩に乗っかるちいろさん。
「流石です。最初からちいろさんでも良かった気がしますね。」
「…弱点がある。魔法防御を敷かれるとちいろの攻撃は無効化されてしまう。物理なのか魔法は通るのかを見極める必要がある。」
「そうなんですね。」
「後は雑魚だけか。引き続き援護を頼む。」
「はい。」
「行くぞ。俺に続け。敵をとるぞ。」とダリアさんが言うと近くにいた雪の班員がダリアさんの後ろについて結界の外へ出て戦いに行った。
しばらくダリアさんはギル員達と共にChaos連合の殲滅を目指していた。
数時間たって、ほぼ殲滅してダリアさん達は帰ってきたけど。スノーポークさんの班とヒーラー半分を失ってしまっているのもあって、残りの雪の班員達は泣いていた。
「残りの雪の班はスドーのところへ混じれ。りき、俺と中央。」とダリアさん。
「わかりました。」
俺とダリアさんは中央テントに向かった。




