【夢のティータイム】
目を覚ますと青い空が広がる大草原に寝転がっていた。
「は?」
起き上がると正面にはお菓子がたくさん並ぶテーブルに、ルナさんがついていてアンティーク調のティーカップを手に取って、カップを口元へ持っていき音もなく啜る。
ルナさんのすぐ隣にはシンカさんが立っていた。ルナさんの給仕をしているように見える。
俺は思わず「何やってるんですか!ルナさん!!」と声をかけてしまった。しかし聞こえていないようで、ルナさんは持っていたティーカップをおいてマカロンを頬張る。
やはり夢なのだろうか…。パチンと指を鳴らす音が背後から聞こえて、真っ暗空間にワープした。
「どこからここに入りました?」とシンカさんは俺を見る。
「俺は…。」
「アンタ…誰です?」とシンカさんに言われれば大きく目を見開き、次の瞬間俺は拠点のテントの中で目を覚ました。
「夢…。」
やっぱりそうだよな…夢だよな…。
シンカさんに誰だなんて聞かれるのはおかしい。俺とシンカさんはちゃんと知り合い…だし。
俺とシンカさんってどういう仲なんだ…?まぁいいか。
どうやらまだ休憩時間なようだ。もうちょっと寝ておかないと疲労バフがとれない。
夢を見ませんようにと何度も心の中で唱えながら眠りについた。
ダメだった。
大草原に大空…お菓子がたくさん並ぶ小さいテーブル…。
目の前でシンカさんとルナさんが楽しそうにお喋りしていた。
シンカさんのルナさんを見る瞳がテーブルに並んでいるお菓子のように甘くて、ルナさんもシンカさんを見る時の顔がもう恋する乙女そのものな気がして…俺の顔が少し引きつった。
いったい何を見さされているんだと。夢の中でもこれは酷くないか?
起きたら全然寝た気しないし。
ダメ元で「あのー…。」と声をかけてみた。するとシンカさんがパチンと指を鳴らして、周辺に綺麗な桃色の薔薇を咲かせた。薔薇の花びらがヒラヒラと舞っていた。
「ルナ、少し待っててもらえますか?」
「えぇ。」
シンカさんの姿が消えて俺の背後から「おい。」とシンカさんの声が聞こえれば目が覚めてしまった。
休憩時間終了のアラームが鳴り響いていた。
いったい何の夢を見てたんだろ…いつものやけに生々しい夢と違っていた。
俺は気になって、中央のルナさんがいるテントに向かう事にした。
「りき?」と咲に声をかけられた。
「あー、ちょっと中央テントにいってくる。シンの事気になってさ。」
「わかった。外に出る時は声かけてね。」
「あ、うん。」
中央テントに向かう途中傷ついた人達がヒーラーにヒールをかけてもらっていた。
タクトを握りしめてスゥとハルをだした。
「スゥ、外側でいまもずっと戦っている人達のヒールに回ってもらってもいいかな?」
「了解なのでスゥ♪」
「魔力が切れそうになったら戻ってくることはできる?」
「はいなのでスゥ♪」
「じゃあ、お願い。ハルは俺と一緒に。」
ハルはコクリと頷いた。
中央のテントの中に入ると真っ先にシンが俺に気づいて「りき?どうしたの?」と声をかけてくれた。
辺りを見渡すと外からは小さなテントなのに中は凄く広くて驚いた。自分の寝てたテントである程度はわかっていたけど…広いな…だって中央には祭壇みたいなところがあって、そこで千翠さんがバリアを張る為の舞を踊り続けていた。ルナさんは隅の方のベッドに寝かされていた。隣にはシンカさんがルナさんの手を握ってベッドに座っていた。
「どうしたの?」とシンに声をかけられて視線をシンに戻した。
「あ、ごめん、テントの中がこんなに広いと思わなくて。」
「あぁ。りきのテントは確か中型だっけ。ここのテント特大だからね。」
やっぱりルナさんは放心状態のままか。シンカさんはルナさんを心配そうに見つめているだけだし…やっぱりあれは本当の夢かもしくは予知夢か。
「そっか。シン最近どうしてるかなってちょっと気になってさ。」
「ヴァルプルギスの間は心配しなくても大丈夫。なにがあっても流すって決めてるから。」
「そっか。わかった。じゃあ次の任務がくるまで外側のヒールでもしておくよ。」
「うん。気を付けてね。」
テントを出ると魔力切れぎりぎりのスゥが帰ってきて魔力を注いだ。
目を閉じてエイボンの目を借りて外側の様子を見ると、4つの連合が四方から攻撃してきているようだった。
ハクを呼び出して西へ、ハナビを東へ、フゥを北へと送り出した。
南はどうしようかな…と考えていると南にはスノーポークさんが地面に拳を叩きつけて稲妻を散らす凄まじい技を連発していて弱い人は一掃されていった。強い人はダリアさんとそのAIが戦っていた。南は大丈夫そうだ。回復だけ注意しておこう。
AIスキルにポイントを振り分けたおかげである程度遠くても魔力注入が行えた。
しばらく集中して魔力注入していると「中でやれば?」とシンに声をかけられて、もう一度テントの中に入った。
場所的に千翠さんに向かって指揮棒をふるはめになってシンがクスクス笑っていた。
数時間たって疲労バフが4になって俺は一度小人達を呼び戻して休憩する事にした。
「お疲れ様。」とシンが疲労回復促進茶をだしてくれた。
「ありがとう。」とお茶を受け取って何気なく千翠さんの状態をみると疲労バフが363と表示されていて飲みかけたお茶を吹き出してしまった。
「うわぁっ∑汚いよ。」
「あ、ごめん。千翠さんの疲労バフを何気なく覗いたら凄い事になってて…疲労バフってあんなにも蓄積するんだ。」
「疲労バフの蓄積量って12迄って決まってたんだけど、ヴァルプルギスに入って急に突破しちゃったみたい。」
「じゃあ、バグ?」
「バグじゃないみたい。ちょっと前に千翠さんが途中で倒れる可能性があるって。」
「え?千翠さんのバリアがないと、結構やばくない?」
千翠さんが踊っている間バリアの中に敵は絶対入れない。
「さっき倒れた時対策の為に捕獲しておいたから大丈夫。」
「捕獲?」
シンが千翠さんの踊る祭壇の裏かわに回ったのでついていくと、鉄格子の檻の中に東屋さんがいた。
「あ・・・東屋さん。」
「助けてください。友達でしょう?」
「え…。」
「友達…ですよね?」
「そんな情けない声ださないの!」と元気の良い女性の声が聞こえた。この声には聞き覚えがあった。振り返って姿を確認するとマグ子さんだった。
「マ、マグ子さん!!無事・・・だったんだね。」と涙ぐむ東屋さん。
「あずっちのおかげで帰ってこられたんだよ?一緒にいるからさ。頑張ろう?」と鉄格子越しにマグ子さんは東屋さんを励ます。
「マグ子さん…ここから出して。」
「ダメ。」
沈黙が流れた。
「マグ子さん!!俺、信じてたのに!!」
「だって逃げるっしょ?」
「うぅ…。」
容赦なく、鉄格子にペタペタと札を貼り付けるマグ子さん。
「マグ子さん、この札はなんです?」と東屋さん。
「そりゃぁもちろん、あずっちが逃げられないようにお手製の呪符だよ。」
その時、エイボンの目が頭に入り込んできた。スノーポークさんが死んでしまった。
「うそだ。そんな…さっきまで普通に。」
「どうしたの?」とシンが俺の顔を覗き込む。
「スノーポークさんが・・・やられた…。」
「なんだって!?蘇生は!?蘇生班が近くに…」とシンがホログラム画面で南に配置している班員を見る。南が半分壊滅していて「な・・・にが・・・?」と声を漏らすシン。
「俺がとりあえず南に向かう。俺は結界の中からでも攻撃できるから。」
「わかった。作戦をたてる。」とシン。
テントから出ようとすると、シンカさんに「りきさん。頼みます。」と声をかけられた。
「わかりました。」と答えて、咲と護に連絡して南に向かった。




