【知恵の樹】
ここは戦場だ。
相変わらずマッピングを進めてるが戦いっぱなしだった。罠にかけようとしてくる連合もたくさんいた。仲間に変身して近寄ってくる敵もいた。色んな敵がいた。なのに誰一人かけることなく進めているのは、Shiftさんのチート武器のおかげだった。
途中何度も何度も死にかけたけど、Shiftさんの全回復でゾンビのように復活して戦い続けた。
スマホをいじりながら空を飛ぶダリアさん。突然「休憩しよう。」と言い出して、全員着地して、そこにバリアを張る。
「俺、帰るわ。」とダリアさん。
「え?」と回りがざわつきはじめた。
「ここはりきに任せても大丈夫…だろ?」
「え、そんなっ。俺一人じゃ何回も死にかけました。」
ダリアさんはニヤリと凄みのある笑みを浮かべてゲートで拠点へ帰ってしまった。
しばらく沈黙が流れた。
「あん?なんでダリアはゲートを出して帰った?」とShiftさん。
「わかりません…。」
「は?ゲートの話してんだけど?ほいほい出せるのか?このエリアは。」
「あっ…そういえば…そう…ですね。当たり前な光景すぎて忘れてました。」
「はーん、なるほどな。」と言いながらゲートを出すShiftさん。
「何かわかったんですか?」
「さっぱりわからん。」
「はい?」
「今わかってる事は俺が入るとここには戻ってこれないって事だけ。どうやってゲート先になったのかってところを解消しないといけない。あっちにあってこっちにないもの。それとスマホからゲートを開こうとすると、画面に残り時間がでてる。これは…なんの時間だ?」
「あっちは色々たくさんあるじゃないですか!こっちは無いものばかりだ。それに残り時間って…。」
「これを解消できれば、あちこち点々とすることができるし逃げ場所を確保する事もできる。ここを仮拠点にして検証するかぁ。」
「木じゃない?時間って事は木が枯れるまでの時間かな。電話を繋いで木を維持するための聖なる水をかけてもらうしかないんじゃないかな。」と咲。
聖なる水を木にかければ残り時間が増える…それをゲート画面をだして見張りながらやるのか。
「なるほど。木…か。で、水か。」とShiftさん。
「ここじゃ何も解析できないから…うーん。」と咲。
Shiftさんがシンカさんに連絡をとってくれて、すぐに植わっている木の検証をしてもらい、何個か割り出す事に成功した。
「良いか?一本ずつ育ててから次の木を育てるからな。」というShiftさんが指示をする。
まずはブドウの木。次に葉が全て餡子味な餡子の木。次に育てたのが林檎の木。最後に桃の木。
育てるのに数日かかったが、どれもゲート登録できる木にはならなかった。
「どういうことだ!!」とShiftさんはテーブルをドンっと叩く。
「その木のどれかっていうのは確かなはずよ。私はだいたい割り出せた。この木の中でレアな木ができる木があるの。たしか…林檎の木とブドウの木を同時に植えたらできるはず。」
「よし、次はそれを試そう。」とShiftさん。
俺はShiftさんの積極的な姿に驚いて思わず「随分積極的ですね。」なんてまた余計な事を口にだしてしまう。
「あ?当たり前だろ。命かかってんだぞ。」ととんでもない正論を突き付けられた。
「そうですね…すみません。俺が間違ってました。」
俺の考えの甘さが心に突き刺さる。Shiftさんは何だかんだ真面目な人だ。命がかかっているっていう事を常に俺も頭に入れて行動しないとな。
Shiftさんは慎重に林檎の木とブドウの木を両方同時に植えて育てた。数日かけてどちらも実がなるまで成長させると真ん中に小さな苗木が自然と植わっていた。
「これか。」と呟いてShiftさんはスマホで写真をとって、その苗木をアイテムストレージへしまってしまう。
「育てないんですか?」
「お前はいつも質問ばっかだなぁ!まぁいいけど。木ってある一定の距離をあけねぇと育たねーんだよ。」
「あぁ、それで…。」
Shiftさんはスマホをいじって肥料やら土やら良い物を取り出してからそこに苗を植えた。ここでの肥料は育つまでの時間を短縮する効果がある。土はつける実の数を増やす効果だ。
わずか数分でブドウの木っぽい見た目に成長して林檎に似た実を沢山つけた。
「知恵の樹?…。で?この後どうするんだ?」とShiftさん。
「木を維持し続ける必要があると思う。実は種にしておくといいよ。」と咲。
「維持か。切られる可能性もあるな。面倒な結界をはれるやつ連れてこねーとダメだな。」と言ってShiftさんは班が休憩しているテントの中に入って行き、しばらくすると東屋さんの腕を引っ張って連れて来た。
「やれ。」
「何をです?」
「結界だ!!んな事も言わねーとわかんねーのかよ。」
「言われないとわかんないですよ!!」
「口答えするな!」
「理不尽極まりない…。で、どの種類の結界を張れば良いんです?」
「んー…そうだなぁ。とりあえず俺らからは干渉できて、敵からは一切の干渉を許さない、それで見えない。みたいなのかな。」
うわぁ…凄い難題だ。結界って凄く計算がいって難しいって聞いたけど…。
「はいはい。」と東屋さんは魔導書を取り出してブツブツと詠唱しだした。
「あ、魔力が無くなりました。」と東屋さんが言うとShiftさんは魔力回復の液体がつまった瓶をふんっと言って東屋さんの口に突っ込んだ。
「ぐっ……げほっげほっ!!げほっ!!」
可哀想だ。もはやパワハラだ。それでもブツブツと詠唱し続けて、魔力が無くなるたびに瓶を口に突っ込まれていた。
しばらくすると「でき…ま…した。」と言って東屋さんはバタッと倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?東屋さん…。」
「くっ…俺にもう少し発想力ってものがあれば‥。」と言い残して気絶してしまった。
木の回りに青白く浮かぶ数字や文字の羅列。それが凄くキレイに見えた。
「おー完璧じゃん。」とShiftさん。
「わかるんですか?」
「まぁ、ある程度まではな。こんな無茶な結界張れんのは限られてる。」
確かに、バリアを張れる人は沢山いるけれど、結界を張れる人は数人しかいない。うちの連合で言えば100人もいない。
バリアは魔力と詠唱又は踊りで張れる。でも結界は計算と計算式が書かれた魔導書がいるらしい。
東屋さんって…実はかなり凄い人なんじゃ…いや、そもそも幹部だ。凄いに決まっている…晩餐にも出席してる事は少ないから接点がなさすぎて見落としてた。
「東屋さんの発想力ってどういう意味だろ?」
「あれはきっと、結界を張る為の知識があっても、どんな結界を張ればいいかっていうのが分からなかった、思いつかなかったって意味でしょうね。」と護。
「なるほど。そこをShiftさんが発想したわけか。」
「そうみたいですね。」
「咲もああいう結界張れるんじゃ…。」と言いかけると咲がしーっとジェスチャーした。
張れるけど内緒って意味かな。まぁ、咲は結界を張るよりも戦ったりする方が好きだしな。
「ただいま。」と後ろから声が聞こえた。振り返るとその声の主はダリアさんだった。
「時間がかかりそうだからわざと帰っただろ。」とShiftさん。
「帰れそうだったから試しに帰ってみただけだ。寝不足気味だったしな。」とダリアさん。
確かに…俺らは数日交代で見張りやら戦闘やらして、寝不足気味ではあった。
「東屋もぶっ倒れちまったし、一旦帰るか。」とShiftさんが言うと班のみんなが喜びはじめた。
俺達は一旦全員で帰還した。




