【裏切り】
俺は護と自分の班の子供たちの様子を見て回っていた。
「あー!りきにーちゃん!」と班員のシダが俺に抱き着いてきた。シダはエルフの子供型男の子だ。耳がとがっていて、肌が白い。シダの髪の毛の色は白色で目は赤い。
俺の班員のほとんどが白髪で目が赤い。ミルフィオレに入ってから髪の毛と目の色を変えちゃった子が何人かいるけど、最初は絶対白髪で目が赤い。
どうもこれは現実世界の記憶がない人のデフォルトなのかなとか思ったりもする。
母さん…いや、ヒルデさんも白髪で目が赤くて、記憶が戻ったら黒髪になっていた。
ムーンバミューダ社はいったい何を考えてるんだ?
「りきにーちゃん?」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっとぼーっとしてた。」
「疲れてるの?」
「大丈夫、疲れてないよ。」
シダの体が緑色に発光して、俺に癒しをくれた。体がすーっと軽くなったような気がした。
これはシダの特殊能力。精神異常を癒す効果のある魔法。
「シダ…ありがとう。元気になったよ。」
「やったー!!」
その後俺は班員の見回りを終えて、護と自室に帰ろうとした。
ピピピピと音がして、目の前にホログラム画面がでてきて、ミーナさんからの電話だった。
「もしもし、りきです。」
『りきさん、今すぐこっちに来てください。この世にあってはならないものができてしまって…。』
「…はい?」
俺はすぐにゲートを出して護と一緒に、サンフラワーの町、ミーナさんの店へ行った。
店に入って、とりあえず「こんにちは。」挨拶すると、ミーナさんが店の奥から手招きをする。
ミーナさんがいる方へいってみると、個室があって、そこに入った。
「りきさん、これは絶対にこの世にだしちゃいけない品です。もしかすると道具ではなく、そういう特殊能力を持ってる人がもういるのかもしれません。でも、これは絶対に【リアル】ではあってはならないんです。」
「えっと…いったいそれは何ですか?」
ミーナさんはホログラム画面を操作して、とても醜いマントを取り出して個室にある小さなテーブルの上に置いた。
どう醜いからというと、柄が酷かった。白と黒の…昔のテレビの砂嵐のような柄のマント。
「これ…もしかして、この前俺が送った【NOA】からドロップした素材で作りました?」
「そうなの。これは…私とりきさんだけの秘密にしておきたいの。私は武器専門でいままでスキルを上げてきて、防具のスキルを上げたのはつい最近なの。そのレベルでこれが作れてしまうっていうのは、とっても恐ろしい事なの。」
いったいこのマントのどこらへんが恐ろしいのか全くわからない。
ミーナさんはいったい何を恐れているんだろうか。
すると護が横から、そのマントをとって身に着けていた。
「なるほど…確かにこれは危険ですね。」
なんと護の体が透明化してしまった。
「……俺も今、やっと危険なものだってわかった。」
フードを被ると、完全に透明になってしまって、音さえも認識できない。
護はマントを脱いで、小さなテーブルの上に置いた。
「マントを装備してる間、どうやら声すらも遮断されるみたいですね。」
「これは…ほんとに危険だ。」
「はい。りきさん、絶対にNOAを狩り続けてください。材料はNOAの素材が5個ずつ。私は今回、別のBMの素材でマントを作れたことからヒントを得て、同じようにNOAの素材でマントを作ってみたんです。」
「…NOAの素材で武器を作るってなると…どうなるんでしょうか?」
「まだ試した事が…。ですがきっと…これ以上に危険なものができてしまいそうな予感がします。」
「ですよね。……とりあえずNOAのドロップ品はミーナさんに送ります。ミーナさんは作り続けてください。」
「わかりました。りきさん、このマントはりきさんが持っていてください。」
「はい。ありがとうございます。」
俺と護は一度自室に戻った。
「恐ろしいものができてしまいましたね。」
「うん、でも…NOAは絶対に俺が管理しないと…NOAのマントは危険すぎる。」
「やりたい放題…ですよね。情報を盗む事だって簡単だ。…それから…バトルで勝つ事だって…。」
どうしてこんなものを実装した?
意図が全くわからない。バトルバランスを崩壊させるようなアイテムだ。
誰にも盗まれないようにロックをかけておかないと…。
俺はスマホを操作して装備にロックをかけた。
「どこまでの範囲、認識されないかを確認してきたらどうですか?」
「うん。そうだな。このマントについて詳しく知る必要があるな。」
俺はマントをすっぽり被って透明化してギルドハウス内を歩く。
すると丁度リオさんがルナさんの部屋の前にいて、ルナさんの部屋のドアをノックした。
扉が開くとシンカさんがでてきて、シンカさんは凄く鋭い目つきでリオさんを部屋に招く…何故か俺もリオさんの後ろをついてルナさんの部屋に入った。
シンカさんはそのまま外へ出てドアを閉めた。
ルナさんに関する全ての謎の答えがそこにあった。
本気で見てはいけないものを見た気分だ…外へ出たくても出られないし…せめて後ろを向いておこうと思った。
晩餐の時間になって最初にリオさんが外へでて、後からルナさんが外へ出た。
その後、シンが入ってきて…装備を解除して、声をかけてしまった。
「シン…。」
「うわぁっ!?Σ…こんなとこで何してるのさ。ていうか、どうやって入ったの。」とシン。
「まぁ…ちょっと色々あってさ…。」
シンはしゃがんでいた俺にあわせてしゃがんだ。
「いつからいたの。」
「・・・・・・。」
「僕が入る直前までルナがいたし…リオさんもいたから…そっか。見ちゃったんだね。」
言えるわけがない…。ルナさんとリオさんが…。
「いいよ。言わなくて。だいたい察しがついてるからさ。……少し寂しいけど、でもルナは変わらず僕たちをちゃんと愛してくれてるし…いいんだ。今までだってこういうこと良くあったんだ。その時は僕もシンカもまだ生まれてなかったけどさ。……痛い。」
「え?」
「胸が痛いんだ。これって心があるって事…だよね?」
「うん。」
「そっか。AIの僕でも心はあるんだ。痛いけど…嬉しいや。」
シンは顔を歪めつつむほほ笑む。
「なんか…ごめん。」
「ううん。ほら。晩餐に行こう。」
「うん。」
晩餐の時、俺の隣にはリオさんの姿はなく…。
[リオ様がミルフィオレを脱退しました。ヌコア様がミルフィオレを脱退しました。ナムル様がミルフィオレを脱退しました。ポポ様がミルフィオレを脱退しました。最強death様がミルフィオレを脱退しました。]と連続して小さなホログラム画面が流れて、広間がざわついた。俺もぎょっとしたし、他の幹部も…あの千翠さんですら驚いた顔をしていた。
ただ一人…ルナさんだけは…ボロボロと涙を流していた。
さっきまで…リオさんと…
そんな素振り一切なかったのに…
「いったい何があった…というのです。リオ!!!!」と千翠さんは席を立ってゲートを開いてどこかへ行ってしまった。そのゲートにダリアさんも入っていった。
俺も何故かゲートに入って、すぐにマントを装備した。
そこはラストカントリーだった。
「リオ…どういうつもりです。」と千翠さん。
千翠さんの前には先ほどギルドを脱退したメンバーがいた。
「やってられないんスよ。何が大いなる目的だよ。だっせーの。ここはゲームだろ!自由にやらせろ!!」と最強deathという名前の男が言う。
「雑魚が…ほざくな。俺たちはリオに言っている。」とダリアさん。
「リオは私のなんだから、ついてきて当たり前でしょう?そもそも、このゲームに誘ったのも私だもん。私が誘わなかったら今ここにリオはいないの。私がいるところにリオはいないといけないの。」とヌコアさん。
「お前ら…誰のおかげで今の装備が揃ったと思っている。」とダリアさん。
「誰のおかげだって?そんなもん自分の力だろ!!」とナムルという名前の男性。
「本気で言っているのですか?…はぁ。あなた方がそんなに頭の悪い方々だったとは…ギルド加入審査をもう少し見直さなければ…。」と千翠さん。
「頭が悪いって俺達の事か?千翠。ゲームがうまいだかなんだか知らないけどなぁ…お前のやり方にはもうウンザリなんだよ!!頭が悪いのはお前の方だろ!!ガチガチに縛って…強制的に楽しみを奪われて…現実世界の会社みたいで息がつまる。ゲームって楽しむ為にあるんじゃねーのかよ。」とナムルさん。
「私に対して…頭が悪い…と?」と千翠さん。
「俺達に土下座していただけますか?千翠様。」
「「ど・げ・ざ」」と脱退メンバーがコールする。
「それができないなら…もう、ほっといてくれ。」とナムルさん。
千翠さんは…ゆっくり…ゆっくりと片膝をつく…。
「千…翠…?」とダリアさんは大きく目を見開いた。




