【禁足の森】
俺は護と千翠さんとシンと…それからラスカンアリーナから強制的に呼び戻されて、かなり不機嫌なダリアさんとパーティーを組んでラストカントリーの中を歩いていた。
「端って、そろそろですかね。」とシン。
「この先は以前、レンガの壁だったはずです。」と千翠さん。
しばらく歩いていくと、本当に森が見えてきた。
「ちっ…またサイレントアップデートですか。」
「ユピの話じゃ、入ってすぐ魔物がでるみたいだけど。」
森に足を踏み入れると【禁足の森】という表示が出た。
「禁足の森…ですか。」と千翠さんが言うと、ダリアさんが「ふせろ!!」と言った。
素早い何かが俺達に襲い掛かってきた。
「ダリア!りき!シン!魔物をしばらくお願いします。私は…結界をはります。」
ちゃんと見てみると、ユピさんが魔物になっているような状態の魔物が2匹。
シンの前には大きな透明度の高い盾があって、魔物はシンに何度も体当たりをするが、シン自体にはダメージがいかないようだった。
ダリアさんは魔物の攻撃をかわし続けていた。
敵にダメージは与えられない。何故なら、その2匹は大事なギル員だからだ。
シンの体力が徐々に減ってたりするが、護のアリエルの力で徐々に回復して常に満タンを保っている。
10分ほど、その状態を保っていると千翠さんの結界呪文が周囲に展開されて、温かな光に包まれた。
次に千翠さんは数珠を巧みに操って黒い魔物の茜さんを捕縛して、ゲートを出してそこに数珠を巻き付けたまま放り込んだ。
ダリアさんは魔物のめうさんを千翠さんがはった結界の中におびき寄せた。
すると魔物の姿が一瞬で解かれて、可愛い女の子がドサっと倒れこんだ。
「これでギル員は回収できたかな。」とシン。
「もう戻っていいか。千翠。」
「待ちなさい。それよりも、狂気状態について解明しておかなければいけない事が色々ありますので。」
「ちっ。」
ダリアさん…Shiftさん並みに機嫌が悪い…。
「うわぁ。」とシン。
「どうした?」
「シンカからの連絡。狂気状態の茜をギルドハウスの隔離部屋に収容しただけでギルドハウス全体に魔力回復減少のデバフがかかるみたい。こんなの町へ溢れかえったら大変だよ。」
「今現在、澪がユピから色々話を聞いています。私も澪の耳に入る音声をそのまま聞いていますが、どうやらユピはこのことをギル員に知らせなければいけないと、魔物の姿に変わりつつもゲートを開いて、そして一番被害が少ない入り口に設定したようですね。
確かに入り口は一番人が少ないうえにダリア班の警備がいる。賢明な判断だったといえるでしょう。しばらくは茜で色々と実験をするとしましょう。」
「え?そんな…女性ですよね…?」
「茜はネカマだ。」とダリアさんに言われた。
「え…ネカマって…。」
「【リアル】では女性でも現実世界では男って事だ。」
「りき、問題はそこじゃないと思うよ。男だろうと女だろうと実験はよくないけど、茜さんなら自分を使ってくれってきっと言ってくれるから大丈夫。それに、茜さんは千翠班の人だからね。」とシン。
「そっか。」
「それより、めうの回復をしてあげよう。」
スゥの回復で意識を取り戻しためうさん。
「ここは…。」
「めう、私が誰かわかりますか?」
「千…翠…様?」
「はい。貴女は今まで何をしていたか覚えていますか?」
「いえ、でも…黒い沼のようなところで一生もがいている夢を見ていました。」
「なるほど、わかりました。しばらくそこで休んでいなさい。」
ガサガサと木々が揺れる音がしたと同時に此方に何かが突っ込んできて、千翠さんの右腕が捥がれてしまった。
「ひぃっ!!」とめうさん。
俺も最初はギョッとしたけど、千翠さんは顔色一つ変えずに涼しい顔をしてセンスを左手に持って自分を回復して右腕を元にもどした。
「さて?」
黒い魔物は結界の中で白いウェーブのかかった髪のエルフ型の男性へと姿を変えてドサっと倒れこんだ。
「ん?コイツ…見覚えあるぞ。」
「僕も見覚えがある。」
「奇遇ですね。私もです。」
「誰なんですか?」
「ギルド【シュタインズ】のギルドマスター、アイン。」
「え!?ギルドマスター?」
「バトル連戦でペナルティ送りにでもしましょうか?」と千翠さんは笑顔で提案する。
「え!?」
「冗談です。ルナ同様、この人も負けれない人ですからね。放置しておくしかないでしょう。ですが、隔離してギルドを解散させるまで精神的に追い込んでおくっていうのもありですねぇ?」
「うぐっ……何を…バカな事を言ってるんだ…千翠。」と瀕死状態のアインさんが目を覚ました。
「これはこれは、アイン様。お久しぶりでございますね。」と千翠さんは笑顔で挨拶をする。
「何がアイン様だ…ハァ…ハァ…呼吸がし辛いな…。」
「体力1回復につき100Enでいかがでしょうか?」
「却下だ。すぐに金をとろうとする癖をやめ……ろ。」
「りき、回復を。」と千翠さんに言われてスゥに回復を頼んだ。
「優秀なヒーラーを捕まえたもんだな。」
「お褒めに預かり光栄です。」
「欲しいのは金か?情報か?」
「頂けるのでしたらどちらも…。」
「はぁ…。ここを先に発見したのは恐らく俺達【シュタインズ】だ。お前達ミルフィオレとのバトルで傲慢になった幹部組がペナルティでいなくなって、やっと俺が権限を取り戻せたんでね。どこのギルドよりも早く新しい事に手をつけようとした。それがここ【禁足の森】だ。聖属性の結界をこうしてはっていないと10分で1狂気溜まる。これが15狂気溜まれば魔物の姿になって理性を失うようだ。」
「で、アイン様は魔物になっている間の記憶は?」
「俺はあった。だからこそ…にっくき千翠の顔が見えた瞬間…その右腕を食いちぎってやろうと思ってな。体の自由はきかなかったが、思いは伝わるようだ。」
「なるほど…この森は聖属性必須といったところですか。」
千翠さんはすぐに誰かを呼び出しているようだった
結界の中心にゲートが開いてラートさんが出てきた。
「はぁ…全く。面倒な事になってるな。」
「お忙しいところすみません。聖属性に全振りしててギルドハウスに残っているのは貴方くらいなものなので。」
「で。結界の外で立ってればいいだけか?」
「はい。」
しばらく、ラートさんを外に立たせたが、一向に狂気が溜まる気配はなかった。
「ふむ、つまり聖属性値がある一定数あれば狂気は溜まらないということが判明しましたねぇ。」
「俺はもうそろそろ帰る、次は俺より属性値が100低いやつを呼ぶ。」
「お願いします。」
ラートさんの班は主に聖属性に振っている人が多いみたいで100ずつ属性値を減らしていって、おおよそどれくらいの聖属性値が必要なのかを割り出すことに成功した。
だけどそれは最低でもバトルで50勝はしないと振れない数値だった。
「とりあえず、りきはこの事を報告書としてまとめてルナに…いや、シンカに送ってください。」
「ルナは長文だと読まない可能性があるからね。」とシン。
「わかりました。」
そしてある程度報告書が仕上がってシンカさんにメール送信したところで、一旦俺たちは千翠さんとシンをそこに残して帰る事になった。ダリアさんは寄り道するといってラスカンアリーナへと行ってしまった。
晩餐で【禁足の森】の事、狂気状態の事をルナさんが発表していた。
あの森は踏み入れただけで不快感を覚えたけど、聖属性があって、狂気が溜まらない人は不快感もないらしい。
【禁足の森】の話を聞いて目を輝かせる、うちの可愛いAI咲。
またとんでもない事に首を突っ込む事になりそうだ。




