【リオの後始末。】
ジョンナム班とのダンジョンが終わった頃には次の日の夜で3人で自室に戻って爆睡する事になった。
部屋をノックされる音で目が覚めた。
目を擦りながらドアをあけるとシンが4人分の朝食をのせたカートを押していて部屋に通した。
「おはよう。随分眠そうだね。一応ダンジョンへ行く報告は受けてたけど、そんなに大変だったの?」
正直、この世界でも寝ても寝た気があまりしなかったりする。
「うーん。もともと上級までしかやった事ない人達で人数が多いから最上級に挑戦してみたらしいんだけど、俺と咲と護でしかまともにダメージを与えられなくて結局3人で最上級クリアするはめになってダウンって感じかな。」
「ご苦労様。そんな弱い人うちにいたっけ?」
「ジョンナム班のラフィさんとキムタクさんって人。知ってる?」
「あぁ。現実世界時間で一ヶ月前くらいにペナルティ終わって復帰してきた人か。装備も何もかも全部賭けた酷いバトルをして見事に負けるっていうね。負けたあと待ち構えてた敵の仲間にたて続けにバトルを仕掛けられてペナルティ逝き。」
「うわ…でも、どうして全部賭けたんだろう。」
「ジョンナム班は周りに仲間を数人潜ませて賭け試合をして、負けて身ぐるみをはがされた相手を更にペナルティに追い込む…っていう卑劣な手段をやってる側だから報復されたのかもね。」
「やってる側って…。」
「まぁ時期的にはギルド【ドルガバ】と敵対してた時期だからドルガバにやられたんじゃない?そもそもあの班はペナルティ受ける人多いし。」
シンは朝食をテーブルに並べてくれていて、俺は咲と護を起こしてテーブルについた。
「もーーほんっと許せない!あれで報酬3等分なんて!!」と椅子に座るなり文句を言う咲。
「まぁ、まぁ落ち着きましょうよ。あとで絞殺せば良いだけじゃないですか。」
シンがその様子を見て完全にドン引きしていた。
「あー…寝起き機嫌悪いタイプなんだ。二人とも。」とフォローを入れてみた。
「行ってたダンジョンって【迫りくる波の試練・最上級】だよね?」
「そう。キムってやつが二人用のバリアをはってラフィって人がそこから弓でペチペチしてるだけだったの。」
「素早さ自慢のジョンナム班が聞いて飽きれますよね。」
「でも二人ともダンジョンでは結構イキイキしてモンスター倒してたじゃん。」
「そ、それは体動かすの好きだしっ!」
「僕も運動がしたかったんで。」
シンがカチャっと音を立ててスプーンを置いた。
「おかしい。ジョンナム班に魔法を使う奴と弓を使う奴がまぎれてるなんて…。」
「え?どういう意味?」
「イメージで言えばガウルさんみたいな人の集まりなんだ。聞いてる感じどこにも属さないし、むしろスノー班の方が合ってる気がする。」
「へぇ。ペナルティ受けてる間に人が変わっちゃったのかな。」
「あとでジョンナムさんに聞いてみるよ。」
「あ、そうだ。シン、ダリア班のリオさんってどんな人がわかる?」
「リオ?また問題児の名前を的確にだすねぇ。リオはAIが揃えばルナ班に移動予定なんだけど、リオの【リアル】内の奥さんヌコアがそれを邪魔してる。まぁ、でも。リオのペースでいいとそこは思ってる。現実世界の人にとっちゃここは妄想の国なわけだし。」
妄想の国って…そこは夢の国とでも言ってほしかったけど。ゲーム内で夢とか見れないらしいし仕方ないか。
「そうだね。俺もあんまり首を突っ込まないようにするよ。」
数日後…
「もうやだ!!!ヌコアに文句言ってくる!!!」と大広間の席を立とうとする咲の腕を掴む。
「ダメだって。問題を治めるのも俺たちの班の役割なんだから。」
「じゃあ僕が行きますよ。」
俺はタクトで小人達をだして少し離れたとこにいた護の腕を掴んでもらった。
「二人とも頼むって!落ち着いてくれよ!」
「随分賑やかですね。何かありましたか?」とシンカさんに声をかけられた。
「シンカさんっ…場所を変えましょう。とりあえず。」
大広間の厨房へ移動した。
「…つまり、リオさんが色んなところでダンジョンへ行く約束をキャンセルしていて揉めてたところをりきさん達でカバーして揉め事をおさえていたと…。」
「そうです。」
「凄いですね。りきさん達じゃないとカバーしきれてなかった気がしますね。リオですか。課金もするしPSもあるし昼から夜中までいるし、何より強い。で、ヌコアは農業スキルに全振りしてくれている逸材…で正確にはエムルン班。まぁ農業の達人は他にも数名いますけど。うん。じゃあこうしましょう。どうせりきさん一人でクリアできちゃうんですから、リオさんがダンジョンへ行きたい時部屋を訪れてもらうっていうのはどうですか?」
「え…?」
「今より楽だと思いますけど。もっと良い解決策はリオさんの事を良く知ってから考えた方が良いと思います。どうですか?AIのお二方。」
「りきがしんどくないならそれでいいけど。」
「ですね。最近、ため息ばかりついてますし。」
「精神的な疲れは不味いですね。自分の方からリオに伝えておきます。りきさん、たまには現実世界に戻って早く睡眠をとった方が良いんじゃないですか?最近結構な時間まで残ってくれてますし。」
「あー…そうですね。そうします。」
「あ、そうだ。りきさんが落ちてる間、現実世界の朝9時から17時あたりまで護さんをお借りしてても良いですか?」
「え?えっと、護が良いなら。」
「何をするかにもよりますね。」
「一緒にレベ上げでもと。」
「え。ほんとですか?それなら行きます。」
「では、よろしくお願いします。」
自室に戻ってログアウトの準備をする。
心なしか嬉しそうな護に「良かったな、護。」と声をかけた。
「そう…ですね。少し行き詰まりを感じてたんで好都合でした。」
「りき、私はもう少し残っとくね。」と咲が言った。
「うん、じゃあ先に落ちるよ。」
現実世界に戻ってみると夜の10時半だった。
「は~~~~。」
今日はもう早く寝よう。ガウルさんが良くダンジョン疲れでログアウトしちゃう気持ちわかったかも。
寝よう…とにかく。
翌日
朝食をとっていた時に咲から最近入ったジョンナム班の新人が名前を変えてラフィとキムタムに成りすましていたという事を聞かされた。
速攻追放はしたけど、どこの誰かは追跡中らしい。
本物のラフィさんとキムタクさんは未だペナルティ中だとのこと。
「っと!!りきぃどうした?眉間に皺よってるぜ?」と豊に声をかけられた。
気が付くと俺は学校にいて昼休みだった。
「あ…あれ俺。」
「今日のりきは変だ。駅で声かけてもぼーっとしてたし、学校ついてもずっと上の空って感じだったし。」
「あぁ。ごめん、色々悩みというか。」
「悩みねぇ。どうせジョンナム班の事だろ?」
「何か知ってるのか!?」
「知ってるぜ?でも、タダで教えるわけにはいかねーなぁ。」
「え゛…。」
「俺と練習試合しねぇか?一回やってみたかったんだよなぁ。」
「それってもしかして…今からか?」
「もちろん。どうせ夜はリオとの事で立て込むんだろ?」
「なんで知って!?」
「情報班を舐めないほうがいいぜ?」
ゴクリと生唾を飲んだ。
「はぁ。わかった。やるよ。」
「屋上行こうぜ、あと見張りつけるか。おーい川野、ちょっと10分くらい見張りついてくれよ。」
豊は同じクラスメイトの川野亜里沙という女の子に声をかけた。
「えー!バイト代でるの?」
「出す出す!500円な!」
「10分500円なら24時間でもいいよ?」
「それはさすがに俺の金がもたねーよ!つか目なら金あるだろ。」
「なーに言ってんのよ。スパイダーネットの副官なら私より位上でしょ?」
目?スパイダーネット?これって…ギルドのシンボルの事か?
「…目とかスパイダーネットって?」
「あとであとで、潜ってから説明してやるよ。」
俺と豊と川野さんは屋上へ移動した。




