【誰かの日記】
ヒルコさんとの戦いを終えて現実世界の3日後日曜日の朝。
俺は【リアル】の大図書館に来ていた。
ルナさんにシンを探してこいと言われたからだ。
「それにしても、強制召喚使えばいいのに変なの。」と隣を歩く咲が言った。
俺はまだ押した事がないけど、スマホのAIページを開くと強制召喚ボタンがある。
「強制召喚ってサモンゲートみたいな感じ?」
「ちょっ!りきっ!」
「え?あっ。」
俺はうっかりサモンゲートと言ってしまい目の前にゲートが開いて強そうな人が現れた。一応何度かすれ違った事はあるような…。
「ん?あぁ!!りき!?」
「え…あの…すみません。えっと…。」
「あぁ、ごめんごめん。あのヒルコを倒して、ヒルデガーデンの副官二人を無事に救出した期待のエースって噂がな。そうか。そうか。」
「だからアナタ誰?」
「優れた反射神経をもってるAI咲!いやぁ…近くでちゃんと見ると凄い装備だな!」
・・・・・・誰なんだろう?同じギル員な事は間違えないけど…。でもなんだろう?この声どっかで…それに…………ってか…現実世界と変わりないせいですっかり忘れてしまいがちだけど…名前表示すればいいや。
俺はスマホで名前表示ボタンを押した。
「ブショウホウ……フリガナ無し…日本人?」
「あぁ!自己紹介すっかり忘れてたな。俺はブショウホウ。日本人。ユナ班の副官だ。副官つっても、今まで安定したログインができてなかったから昨日正式になったばっかだけどな。昨日って現実世界の昨日な。」
「ミルフィオレってなんか日本人が多いですね。」
俺がそういうと「ぶふっ!!(笑)」とブショウホウさんが笑った。
「え?…」
やっぱりだ…この喋り方…この感じ…
「もしかして…豊か!?」
「やっと気づいたか。」
「え?どう…え?」
「ハハハッ!いやぁ、俺もお前に気づいたのはお前が金髪にしてからなんだ。それまで幹部にされるのが嫌でログインもあんまししてなかったしな。」
「え?…ミルフィオレだったんだ。」
「そ。ミルフィオレってデカいけどそこまで古くなくてなぁ。色んなとこの合併でできたギルドなんだ。俺のギルドも吸収されてここに辿り着いただけっていうな。」
「いやー…びっくりした。まさか豊が…。」
「おいおい、豊って呼ぶなよ?ここではブショウホウだ。」
「りき、この人現実世界の友達?」
「あ、うん。そうなんだ。高校の友達。」
「って、俺なんでここにいるんだっけ。」
「あぁ、ごめん。俺のサモンゲートで…あ。」
「あ…。」と咲がジト目で俺を見る。
目の前に新たなゲートが開いて…またもや見知らぬ人がでてきた。
「あれー…?僕どうしてここに。」
「あぁ、なるほどな。りき、俺はコイツ連れて帰るから、お前らなんかしてたんだろ?」
「あ、うん。ルナさんのAIを探しに。」
「んじゃ、またな。副官は仕事が山積みなんだ。」と言って、豊と召喚してしまった見知らぬ人は豊がゲートを開いて帰っていった。
「仕事って、今は朝だから完全休みなんじゃなかった?」と咲が言う。
今は日曜日の朝だから、朝の幹部が色んな雑務をするらしい。
「気を利かしてくれたみたいだな。」
「結構時間たってるみたい。急ごう?」
「うん。」
大図書館の中央にある土レンガでできたような大きな高い塔。
その中に入ってみるとシンがいて…本に夢中になってるようだった。
「シン。」
「ん?…あれ?りき?」
シンの目から涙が一筋。
「どうしたの?」
「ん…あぁ…。この本、落とし物みたいなんだ…筆者はFってだけ書いてあるんだけど、どこのものかわからなくてチェックしてみたんだけど…泣ける要素は特になかったのに…涙がでるっていうか。」
「どんな本なの?」
「主人公は男性で…寝たきりになった彼女の介護や世話をして過ごす日記みたいな感じなんだけど…ほら、りきに現実世界の事色々教えてもらったおかげでこういうのに理解がっ。」
とうとうボロボロ泣き始めてしまった。
「あーあーりきが泣かした。」
「え。いや…えっと…ルナさんが呼んでたんだけど。」
「あ…そうか。今って現実世界で朝?」
「うん。」
「忘れてた。行かなきゃ。」と必死に涙を止めようとするシン。
「そういえばどうして現実世界の朝から夕方までってシンがルナにぴったりついてるの?」
「え?そうだったの?」
そうか、咲は俺が学校に行ってる間ずっと【リアル】にいるから。
「そういえばどうしてだろう?嬉しくて考えた事なかった。」
「それに召喚使わずに私たちに探しにいけっていうのもおかしい。」
「確かに。」
シンはやっと涙がとまったようでハァーっと息をはく。
「とりあえず戻ろうかな。」
3人でルナさんの部屋に戻った。
「ごめん、ルナ。」
「さーみーしーかったー。」と膨れるルナさん。
「ルナ、強制召喚すればよかったんじゃないの?」と咲が問う。
「ソルだった人にはわかんないと思うけど強制召喚は1日3回までなの。」
「へぇ…。」
「え…知らなかった。」
「いつ危険な目にあうか分からないから。メールも電話も無視だし!」
「ごめんってば…本に夢中になっちゃって…って…あっ…本持って来ちゃった。」
「良かったら返しておこうか?」
「あぁ。ごめん、頼めるかな。」とシンから本を預かった。
「えー!また戻るの?」と咲が頬を膨らませる。
「あぁ、じゃあ先に昼ごはん行こっか。」
「やったー!」
「じゃあ俺は昼食べてからコレを戻しにいってくるよ。」
「あ、うん。ありがとう。」
「りき、これを。」とルナさんが俺にプレゼントを贈ってきた。
「えっと…なんですか?」
「お使いの報酬よ。」
「ありがとうございます。」
ルナさんの部屋から出ると…今度は機嫌の悪そうな護が廊下に立っていた。
「護?どうしたんだ?」
「起きたら誰もいない、メモすらないですし。」
「ごめん、すぐ戻ってくる予定だったし…その…途中でサモンゲート使っちゃって…。」
と色々護と喋ってる途中サモンゲートでシンがでてきて状況把握済みなようで無言でルナさんの部屋に入っていった。
「あの…空腹バフもついてるようなんで、ランチ用意しましょうか?」と通りかかったのかルナさんの部屋に戻ろうとしていたかのシンカさんが声をかけてくれて、大広間でシンカさんの手作りランチを振る舞ってもらう事になった。
「お昼もシンカの料理が食べられるなんて最高~!」と咲は機嫌よさげに言った。
「りき、その本は?」
「あぁ、シンさんが間違えて持って来ちゃったみたいで後で返さないと…。」
「あ、丁度良かった。僕魔導書が欲しかったんで、それもついでに良いですか?」
「あぁ。うん。」
「てか、これどういう本なんだろう?」
「シンの事だから、どうせ現実世界に関する何かでしょうね。」
試しに本を開いてみた。
「運ばれてきた女の人は顔は一緒なのに知ってる人じゃなかった。
上に嘘をついてしまった。顔が一緒だったから同じ人だと判断してしまった。
今日は満月が綺麗な夜で、その人がカグヤ姫のように思えた。
ちょっと匂いが気になった。髪染めのような匂い。
今までの事を何も覚えていないかのような顔で私に微笑む彼女を愛おしいと思ってしまった。
彼女はそれから寝たきりになった。
それを私がお世話する事になった。
彼女とは10は歳の差があった。もう少し自分が速く生まれていたら…もうちょっと身長が高かったらとか色々と考えてしまう。」
パラパラと数ページめくって文字を拾ってみたけど、本当に男性が一目惚れした女性の看病をするような日記っぽかった。
「うーん、恋愛小説ですかね。」
「へぇ…珍しい。」
昼食を終えた後、三人で大図書館へ移動して護の魔導書を選んで…それを購入し終わった時に…接続が切れて現実世界に戻ってしまった。




