【デートの後の仕様変更】
「ちょっと力~。悪いけど買い出し行ってきてくんない?昨日重いもの持ったせいか腰がちょっと痛くてねー。」
現実世界に戻ると姉が目の前にいて、買い出しのメモを渡してきた。
「びっくりした…。あー…まぁいっか。うん、行くよ。」
俺はベッドから起き上がった。
「ゲームばっかやってないで、たまには陽子ちゃんとデートにでも行ってきなさいよ。付き合ってるんでしょ?」
「は!?え…えっと…今は付き合って…ない。」
「今は?あれだけ毎日イチャイチャしてて?」
「ゲームの中では結婚してるから…つい。」
「ゲームの中ねぇ。」
「それに陽子と付き合ったら陽子捕まっちゃうよ。」
「まぁ、父さんが警察だもんねぇ。…さ、じゃあ。お願いね。これお小遣い。買い物ついでにデートしてきな。」
姉から買い出しのメモと小遣いを受け取った。
「うん。ありがとう。」
外に出る準備をしてから部屋を出ると陽子が不安そうな顔をして部屋からでてきた。
「りき…何かあったの?」
「あ、ううん。違うんだ。姉さんに買い物頼まれただけ。一緒に行こう。」
「え?私も?」
「うん。」
陽子は長い髪の毛をまとめて帽子に入れて被ってさらに上から黒いパーカーのフードを被った。
「どこいくの?」
「んー…ちょっと遠くまで行こう。」
「遠く?」
「ドラッグストアとホームセンターに行かないと。この辺田舎すぎて何もないから。」
陽子と俺は外に出て駅まで歩く。
「いきなり落ちちゃったけど、護大丈夫かな?」
「大丈夫。あの人は理解できる人だから。」
「……えっと、聞いていい事…かな?護について。」
「セーレは普通のAIじゃなくてね。………。」
陽子の視線が下を向く。
「言えないなら今はいいよ。言える時に教えてくれたらそれでいいから。」
というと陽子は立ち止まった。
「どうして…どうしてそんなに物分かりがいいの?…どうしてそんなに優しいの?」
どうしてって…どうしてそうなる?最近色んな人と関わって女の人が如何に難解かをわからされた。
陽子も…よく謎な言動を…。
「俺が聞き詰めて、それを聞いてしまってこの先やらなきゃいけない事失敗になっちゃったら陽子との未来なくなっちゃうから。」
陽子は瞳を潤ませる。
「うー…優しすぎるー!!…ごめん。」
「謝ったり怒ったりとか終わってからにしよう?今は全部に蓋をして…進むしかないし。」
「うん。弱音吐いてごめん。」
弱音だったんだ…。
「姉さんがゲームばっかやってないでたまには遊んでこいってさ。だからとりあえず大きめのショッピングモールに行こう。」
ゲームの中で買い物するとき楽しそうにしてたからきっと現実世界でも好きなはず。
「え。いいの?」
「うん。」
「やったー!」
オモチャを買ってもらった子供のように嬉しそうにはしゃぐ陽子は見た目的にも子供にしか見えなくて和んだ。
目的の大きなショッピングモールに着いて色々と見て回ってから昼食をとった後…
「あのね、さっき思い出した事があるんだけど。」
「ん?」
「ムーンバミューダ社の社長は日本人!」
「え!?」
日本人!?携帯とドローン又はネット回線があるだけで別の世界に移動できて言語の壁をぶち壊してしまうほどのゲームを作ってしまった人が日本人?
それと陽子はまだ全部思い出せてなかったのか。
「陽子ってバミューダ社とはどういう関係だったんだ?」
「そこがまだはっきりしないんだよね。社員?派遣社員…アルバイト…でも深いところまで入ってたのは間違えないし、何をやってたのかははっきり覚えてるし…早く全部思い出したいんだけどなー。」
「急ぐ事なの?」
「ううん、重要な事は覚えてるからヘーキなんだけど…やっぱり気持ち悪いし…それに将来 力と結婚する時困るし。」
さらっと将来結婚すると言われて顔がカァッと熱くなった。
「は、話変わるけど…バトル王でバミューダ施設から接続してる人って、ログインしっぱなしみたいだけどどうなってるんだ?」
「んー…医療チームがちゃんと色々管理してて、一般プレイヤーは現実世界で他人が近づいた時とか体に異常が感じられた時はホログラム画面に警告がでたり、強制ログアウトしたりするようになってると思うけど施設接続の人は一切ならないようになってるって事しかわからない。」
「色々管理って…凄いな…。」
「私もソルだった頃は似たような感じだったかなー。」
「ゲームマスターの権限があっても?」
「うん。その時はどうしてもやらなきゃいけない事が私にもあったから。」
「今は…?」
「りきに全部託した!!」
「全部…って。ゲームマスターに出来なかった事を俺ができるのかな。」
「できるよ。力にしかできないかもしれないくらいだよ。」そう言った陽子の目に一瞬影ができたような気がした。
妙なところは色々ある…どうしてヒルコさんに一回負けただけでソルを辞めてしまったのかとか聞きたいけど…今は我慢だ。
「頑張ってみる。」
「うん!」
存分にデートを楽しんで姉さんに頼まれたものを買って家に帰ると夕方6時だった。
「うわぁ!凄い買い物したわね。」と姉が驚いていた。
確かに…ゲーム内のお金が使えるせいでかなり買いすぎたかも…。
俺は両手にたくさん買い物袋を持っていた。
「えへへー。」と陽子は満足そうな笑みを浮かべる。
夕食と風呂を済ませたあと【リアル】にログインした。
ログインすると右手に分厚い本を持っていた。
あ…そうだ。本返さないといけないんだった。
トゥートゥートゥーっという聞きなれない音が鳴って目の前にホログラム画面が現れて【着信:AIシンカ】と書かれていて着信をとるような緑色のマークを押してみると「もしもし。りきさんですか?」とシンカさんの声が耳元で囁かれるかのように聞こえた。
「はい。どうかしましたか?」
「そこは大図書館のどこですか?」
「どこって…えっと…あ。シンカさんが前に案内してくれた倉庫のある図書館の前です。」
「そこを動かないでくださいね。」と言われて電話を切られた。
待つこと10分。
咲と今日行ったショッピングモールの話をしているとシンカさんが背後から現れて二人で驚いた。
「うわっ!」
「わっ!」
「ここ…外なんで現実世界の話は控えるように。」
「あ、はい。すみませんでした。」
「で、何の用事なのー?」
「あぁ、大変なんですよ。ヴァルプルギスのイベントに大きな変更が入ってしまったんです…。」
「えぇ!?」
「待って…それ今日公開されたの?」
「はい。近々くる大型アップデートの内容とヴァルプルギスのルール変更について…。」
「どんな内容なの?」
「新しいAIのタマゴガチャと新しい武器とかの…。」
「そっちじゃなくてヴァルプルギスの方!!」
「ですよね。知ってました。」と爽やかな笑みを浮かべるシンカさん。
「・・・・。」咲は怒り筋を立てながらゴゴゴゴと殺意のオーラを出す。
「現実世界の時間で24時間…迷路のような広大な新MAPで全連合対抗バトル…ってとこですかね。ただし、バトル申請だとかそういうのが無いらしく、奇襲を受ける事も…集団リンチされる可能性もあります。一番人数が残ってる連合に報酬が来ます・・・・MAPで死んでしまった人は観戦用ルームで観戦できるっぽいですよ。」
「死亡者にペナルティとかは無いんですか?」
「今のとこ無いっぽいですよ。」
「連合対抗って…随分と貰える人数多い気が。」と咲が少し考えこむ。
「年々【リアル】民は増加してるんで、連合にしても…どうせほんの一握りですよ。」
「あ。そっか。そういえばそうだね。」
連合対抗のバトル…か。
「それでギルドの大広間で軽く会議をするっぽいんで集まってほしいそうです。」
「それを先に言ってくださいよ!」
「ん?なんで りきさんがその本持ってるんですか?」
「え?これですか?」
持っていた分厚い本を見る。
「はい。どこでそれを…。」
あれ?今日落ちる前シンカさんはこれの事知ら無さそうだったのに…。
「えっと持ち主というか…登録されてない本だったようなんですけど持ちだしちゃって。」
色々説明すると長くなるからシンさんの事は黙っとこ。…というか…こっちではだいぶ時間たってるからあの時の会話忘れてるのかな。
「ふーん。持ち主知ってるんで自分が渡しておきましょうか?」
「え?知ってるんですか?」
「はい。」
どうなってるんだろ。
「りき、早く戻って情報が見たい!」
「あ。うん。じゃあシンカさんお願いします。」
俺は分厚い本をシンカさんに渡した。
「お任せください。」
ゲートを開いて俺と咲はギルドハウスの大広間へ移動した。




