【禁忌合成】
「恐らく…タクミは、矛盾シリーズのAIを武器にしたまま合成を試みた可能性がある。」
スノーポークさんのその言葉は…衝撃的でシンさんもシンカさんも…僕も咲も凍り付いてしまった。
「コホンッ…いや、悪い。流石のアイツもそんな非道な事せんだろう。」
「いいや。あれはやってますよ。」と背後からジャンさんが…。
「なっ。」とスノーポークさんが驚く。
「……うわ。最悪。」とシンさんが怒ったような目でshiftさんを見る。
「まぁ…少しだけ…そうじゃないかなとは思ってましたけど…やっちゃいましたか。」とシンカさんは冷静に言う。
「そんな事できるの?伯父様。」
「…実装直後一度だけバグがあってね…矛盾シリーズAIをアイテム化した状態での合成…すぐに修正されてもうできないが…合成したあとに更なる合成を施して上手く隠したようですね。」
「そういや、タクミのAI見た事ねーな。」
「恐らく、バグの影響でAIが埋まった状態…なんでしょう。」
「そんな…AIだって心は本物なのに…。」とシンさんが言う。
「…シン、もしルナに一生自分の武器になれっていわれたら…どうします?」とシンカさんが試合を見つめながら問う。
「どうって………………ルナが…そう望むのなら…なるしか…ない…。」とシンさんは少し辛そうに寂しそうな顔をして答える。
「そういう事でしょ。タクミさんのAIは恐らく…力になりたくてなったんじゃないですか?」
「伯父様…、もしかして…伯父様もAIを合成したの?」
「…………何故そう思う?」
「だって…長い事やってるのに一体も持ってないなんて…。バトル回数もやや多めだからBPはたまってるでしょう?」
「……そうですよ。上限値に達した者にしかできんミラクル合成のバグだったんで…やりましたよ。案の定…AIを新しく持つことができなくなった。だが…俺の武器は…アレとは違う。」
ジャンさんはホログラム画面で何かを操作した。すると白い髪に青白い肌に赤い目を持つ双子っぽい女の子が手を繋いで現れた。
「これはっ…。」シンカさんが大きく目を見開いた。
「俺のAI、テレサとエルサだ…武器名は【パッゾバンビーナ】…勝手に戦って防御もする。」
テレサとエルサは嬉しそうにジャンさんと手を繋ぐ。
「完全な武器形態でないだけまだ許せますね。」
「……禁忌合成。」シンさんがとても嫌悪を抱いてる顔をしていた…。
「禁忌合成?」
「一部の間では…バグ利用した合成を禁忌合成と言われていますね。」とジャンさんが説明してくれた。
「シン、今は気にするな。ギルドを強くする事だけ考えろ。私情をもつな。」とシンカさんが呟くようにいつもより低い声でシンさんに耳打ちする。
「お、ルナのやつ。武器変えたなぁ。」とスノーポークさん。
気になって試合の方を見ると…ルナさんが淡い青色に光る玉のようなものをふよふよと浮かせていて、そこから水色の矢がうまれて…無数の針のようにshiftさんに降り注ぐ。
矢はカードの隙間をすり抜けてshiftさんの体力を少しずつ削った。
思わず「凄い…。」と声がでた。
だけど・・・shiftさんは無慈悲に「全回復!」と言って、全回復してしまって…ルナさんの魔力が減っただけになった。
shiftさんは鎌のような実態のなさそうな…なんとも言い表しにくい黒い武器を出して、ルナさんに切りかかるが、ルナさんの傘の自動防御ではじかれてしまう。
「………使いたくなかったんだけどな。」とshiftさんは呟く…。
shiftさんが次に出した武器は魔導書だった。
「太陽神の導き…集え…炎の光。」とshiftさんは詠唱するが…なんとも素晴らしい棒読みだった。
ルナさんの水色に光る矢を溶かしてしまう。
「宿れ、太陽の加護。」と詠唱すると無数に散るカードがそれぞれ光を纏い…ルナさんの攻撃を封じる。
「それで封じたつもり?それじゃあ攻撃できないじゃない。」
shiftさんはルナさんに体当たりする…ルナさんは体当たりをもろにくらう事となった。
「傘の自動防御抜きじゃ厳しそうですね。」とシンカさんが言う。
「今回はちょっともったんじゃない?」とシンさんが言う。
ルナさんの体力はジリジリ削れて…とうとう30%を切ってしまって…大きなドラゴンの姿になって…練習場がうわあ!!!っと沸き上がった。
……自分の時は恐怖でしかなかったけど…こうしてみると…かっこいい……黒と…深い紫のドラゴン…爪は金色…ルナさんの大好きな氷が一切感じられない。そして邪悪なドラゴン感が凄い…。
「あーあ。ほんっと嫌い。」とシンカさんが言う。
ルナさんの引っ搔く攻撃にshiftさんのカードが当たるが…貫通してそのままshiftさんを吹き飛ばす。
吹き飛ばされてる間に全回復をする。ルナさんは炎を吐いた。
「くっそ!!!全回復!!」
ルナさんの炎が吐き終わるまでに3回ほど全回復を使っていた。
「どんだけ長いブレスすんだよ!!」とshiftさんが怒っていた。
「ん…そういえば…あのshiftさんが着てる防具って…見た目はシンカさんとシンさんと同じですよね?スノーポークさんも…強いんですか?」
「これ?…これは防具ガチャの星5だったやつを合成で色々効果つけて星5レアにした布防具。氷雪・麻痺・火傷・睡眠耐性つきの胴装備。ズボンは素早さ300付きだから、素早さに振りたくない人は絶対これつけたほうがいい。」とシンさんが教えてくれた。
「前から気になってたんですよね。」
「防具は合成が一番でガチャ品と何か混ぜてやっと星5レアになるんだ。」
「合成ってやっぱりジャンさんに?」
「ああ。そうですよ。全て俺の作品だ。」
ジャンさん…ドルガバにいたのに結構ミルフィオレの装備作ってたんだ…。
ルナさんの体力は半分以上あって…shiftさんは色んな攻撃をうけていて…
「どんな当たり判定してんだよ!!!」とまた怒っていた。
それから数分後13回目の全回復をした時に…試合が終了した。
shiftさんは倒れていた。
「行ってきます。」とシンカさんが飛び出して、スノーポークさんも無言で飛び出して行った。
シンカさんはルナさんの目に触って…ルナさんを元の姿に戻した。
スノーポークさんはshiftさんを回収してゲートでどこかへ行ってしまった。
「なにがあって試合が終わったんですか?」
「ん?あぁ。13回目以降は…50%の確率で強制試合終了気絶ゲーム内時間12時間らしいよ。」とシンさんが教えてくれた。
「え!?その間ログアウトってできるんですか?」
「さぁ?詳しい事はわかんないけど。」
「酷いデメリットがついたもんですね。…まぁ俺の【パッゾバンビーナ】も似たようなものがついてるな…12時間体力魔力半減。」
「合成武器や防具はそういうの結構つくようにできてるからね。」と咲が言う。
「そういえば咲の武器は合成だけど大丈夫なのか?」
「うん、そもそも普通の人が使うと使えないし。」
「確かに…。」
シンカさんがルナさんをお姫様抱っこして戻ってきた。
「りきさん、今日の予定は?」
「あー…のんびりMAP埋めようかなって。」
「了解です。シン、一応いつでも駆けつけられるようにPT組んでおいてあげてください。」
「あ、うん。」
シンさんからパーティー招待がきて、それを受けると咲と僕とシンさんの3人パーティーになった。
「じゃあ、シン、戻りますよ。」
「あ。うん。じゃあね。」
「あ、はい。」
「じゃあ、俺もそろそろ帰るか。」とジャンさんも帰っていった。
「ね!どこいくの?」
「えーっと…とりあえず…【Water lily】っていう町の次…かな。」
僕は【Water lily】のゲートを出してくぐった。
「うわぁ!!綺麗な国。」
【Water lily】はパステルカラーの美しい国で…
「ちょっと見ていく?」
「ううん、通過して次行こう?」
「わかった。」
【Water lily】を通過すると【わん!だー!ランド】という国についた。
そこはトルコっぽい街並みの国で…門番の人のところへいくと…
「あーすみません。この国は犬の着ぐるみ着用必須となってますので、お持ちでない場合はあちらで購入してください。」と門のちょっと離れたところに着ぐるみ売り場があった。
「着ぐるみかぁ。」
着ぐるみ売り場にいってみると…色んな着ぐるみが1000enで販売していた。
「…なんの能力もついてないのに高いね…。」
犬の着ぐるみもあるけど…犬耳と尻尾がつく着ぐるみもあった。
「僕…これにしよ…。」
「私もこれにしよっと。」
…ていうか…これ着ぐるみなのかな…分類は着ぐるみだけど犬耳と尻尾がつくだけって。
国の中に入ってみると…犬だらけだった。
もちろん僕らの着てる着ぐるみのタイプの人もいる。
………なんていうか…犬になりきってる人がいっぱいいる気がする。
「今日はいい天気だワン。」
「何言ってるワン。毎日いい天気だワン。」
………これがNPCではなく一般ユーザーなのが恐ろしい。
こんな考えのほうがダメなのかな…。
「どうしたの?難しい顔して…。」
「え。いや…僕も語尾にワンをつけるべきか悩んでた…。」
「あっはっはは!何それ、おもしろい!じゃあつけるわん!」
………かっ…可愛い///
「…う。うん。」
「どしたの?顔赤くなってる。もしかして語尾にワンつけるの恥ずかしいの?」
「……あー…うん。」
……咲が可愛くて、勝手に顔が赤くなるエモーションが発動したなんて言えない。
1時間ほど歩いて、やっと出口についた…。
「はぁ…やっと抜けれる…。」
「楽しかったワン♪」
咲はとても楽しそうだった。ここの国の人はみんな犬になりきってるから…犬の国をみれたようで面白かった…でも一人一人がユーザーなのを考えると…人類は大丈夫なのかという不安にかられた。
【わん!だー!ランド】を通過して次の国に足を踏み入れると…【にゃん!だー!ランド】についた。
もう嫌な予感しかしなかった…。
門のちょっと離れたところに…猫の着ぐるみ屋さん…。
「またか。」と咲とハモった。




