【ヒルデガーデン】
空は灰色に曇っていて時々雷が鳴る。
目の前には巨大な壁…恐らく円形…なのかな。
扉は鉄でできているようだ…(鉄に見える強度の高い何か。)
扉の前には門番がいる…男性NPC…かな?
「あ。エターナルフォートレスへようこそ。」と甲冑を着たNPCが喋る。
名前を表示してないとAIとNPCの違いが分かりづらい。
NPCへは決闘とか傷つける事とかできないけど…AIと同じで心を持っているようで…心を傷つけてしまう事はある。結構やっかいなNPCだと、ネットの掲示板とかで見たような…。
「ギルド【ミルフィオレ】4人だ。通してもらえるか?」とにー湯kenさんが言った。
「あ!連合の人ですね!どうぞ!」とNPCは扉をあけてくれた。
ゴゴゴゴゴと…見た目には似合わない音で扉が開いて、入ってみると…中心には白のようなものが立っていて…パっと見た感じ古代ローマ帝国都市…みたいな印象を受けた。
すると目の前にゲートがでてきて…
…長い髪も…肌も…まつげも何もかも真っ白で…目だけが赤い…見た目的には16歳くらいの少女がでてきた。服装は…ワンピース水着っぽいカタチはしてるけど…プレート系の防具なんだろうなという事だけわかった。
「ヒッヒルデ…ひ…さしぶりだなぁ!!」とにー湯kenさんが赤面しながら挨拶をする。
「お久しぶりです。こんなにたくさん来客がきてくれるなんて…。ミーナからメールがきてて、もうくる頃だと思って来てみました。」
それから声を聴いて驚いた……姉さんの声に似ていたから。でも姉さんは【リアル】をやってないから違う。姉さん…大人しくなったらこんな感じなんだろうな…。
「お久しぶりです。何かお変わりありませんか?」とシンさんが聞く。
「ええ、大丈夫です。毎日平和です。…そちらの方はギルドの新人さんですか?」
「あ、はじめまして。りきです。隣は僕のAI咲です。」
「どうも、はじめまして、ヒルデです。……あなた……もしかして噂の春風のタクトを使いこなす期待の新人さんかしら?」
「えぇ!?えっと…春風のタクト…使ってますけど…新人じゃなくて復帰者というか…。」
「クスクス…そう。このゲーム復帰者には厳しいから、頑張ってね。」と頭を撫で撫でされて…にー湯kenさんが少し羨ましそうに此方をみていて気まずかった。
「あはは…。」
「立ち話もなんですし…お部屋へ案内しますね。どうぞ。」とヒルデさんはゲートを開いてくれた。
ゲートの先は…凄くゴシックな部屋だった。
「ねぇ、りき。ヒルデさんの声…お姉さんに似てない?」
「うん。びっくりしたけど…姉さんは【リアル】をやってないよ。」
「そうよね。」
ヒルデさんはソファへどうぞといってくれて、座ってみると凄くフカフカだった。
「あ。ミーナさんから預かった服だ。」とにー湯kenさんは少し顔を赤らめながらプレゼントを渡す。
「ありがとうございます。早速着てみますね。」ニコリと微笑むヒルデさん。
防具がパッと入れ替わって…白いワンピースドレスになった。そのドレスにはところどころ可愛い花がポンポンついていて…またそれが真っ白なヒルデさんを可愛く見せた。
「あ。…kenさん石化しちゃった。」とシンさんが言う。
「えぇ!?武器装備してないのに!?」
「ほっときましょう。」とシンさんは何か変なものを見るような目でにー湯kenさんを見つめていた。
「わー…プレートのドレス…凄い!」と咲は目をキラキラさせてみつめていた。
「ミーナとジャン君のコラボ防具のようですね。」
ホログラム画面が表示されて[ジャンヌダルクフラワードレス:プレート《性能略》デザイン:ミーナ 製作者:ジャン]
「ジャンさんって…ドルガバの?」
「そうです。あら、りきさんもお知り合いで?」
「あ、はい。僕も一度防具を作ってもらった事があって…。」
「いいなぁ~私も作ってもらいたいなぁ。」と咲は羨ましそうにドレスを見る。
「咲なら作ってもらえそうだけど…だって、ウォールの盾ジャンさんに作ってもらったんだよね?」
「…え!そうなの!?」
「そうだよ…。」
「咲さんのお召し物も十分素敵ですよ?りきさんはずいぶんAIに課金なさってるんですね。」とヒルデさんが言う。
「え……。」
「コホンッ。そうなんですよ。僕はやめとけって言ってるのに、りきはAIに溺愛してて自分の装備よりAIの装備優先で。」とシンさんがフォローしてくれた。
色々危なかった気がする。「もう喋らないで。」と顔で語られてしまった。
「まぁ!素敵。……そういえば…最近平和は平和なんですが…ドルガバの人がしつこくギルド員に勝負をしかけてくるみたいなの。」
「え!!全然平和じゃねーじゃん!」とにー湯kenさんが復活して喋りだした。
「今はまだ負けなし…ですけど…バトル回数が多いので気になってしまって。」
「そうですか。これは連合ギルドの様子を見て回る必要があるかもしれませんね。」
「いつも私とパーティーを組んでくれてる副官二人もログインがまだで…少し心細いのですが…特にペナルティになったギルド員はいませんし…平和は平和なんですけど…。」
「………あ。にー湯kenさんお貸ししますよ。副官さんがログインするまでお使い下さい。」
「おっおい!シンっ!勝手に決めるな!」と嬉しそうな顔で否定するにー湯kenさん。
「まぁ!よろしいですか?kenさん。」
「…まっ…まぁ…予定はないからな。いいけどな。」
「ふふふ♪ありがとうございます。」
「さて、戻ろっか。晩餐近いし。」とシンさんが席をたつ。
「もうお戻りに?」
「はい、夜には絶対戻るようにルナに言われてるんで。」
「そうですか。また遊びにきてくださいね。」
「はい。」
「りきさんも咲さんも是非遊びにいらしてくださいね。」
「はい。」
それからシンさんのゲートでギルドの大広間へ帰った。
「不味い事になった。」
「え?何がですか?」
「ヒルデガーデンの副官二人がログインできないわけがない。現実世界で何かあったかもしれない。」
「…そういえば…僕もドルガバの人に特定されてたんですよ。」
「なんだって!?……僕ちょっと千翠さんと話があるから適当に過ごしてて。ギルドハウスの外へはでないように。」とシンさんは慌ててゲートを開いて出ていった。
「何かあったのかな?」
「さぁ…。あ。そうだ。咲の装備…見てみてもいい?」
「えー、りきのえっち。」
「なっ!?」
「冗談だよ。いいよ。」と意地悪く笑う咲。
咲の装備を覗かせてもらうと…基本は布装備だけど…僕の装備と比べたら馬鹿強かった。
僕の装備は千翠さんからもらった星5レアなのに…それより少し高い能力があるように見えた。
「これ…どうやって作ったの…製作者が全部名前バグじゃないか…。」
「秘密。…でも…間違えって誰かに画面覗かれるような事あると不味いかな?そうだ!明日ジャンって人のところ連れてってよ。」
「え!?…ジャンさんが住んでるのはドルガバの中心部で…入国した瞬間バトル挑まれそうで怖いんだけど…。」
「もぉ…。弱虫だなぁ。」
装備を見ていると基本的にぶっとんだ能力を持つ装備が多くて…例えばダメージ吸収…これがついた装備が何個かあって、この効果を防具につけるのにどれだけお金がいるか…。ガチャからでる能力石を防具製作スキルを上げてる人に合成してもらってつけるしかなくて…結構お金がかかる。
それから咲の装備がめちゃくちゃチートしてるという事だけわかった。
僕…とんでもない兵器みたいなのAIにしちゃった…。
装備を見てたらあっという間に晩餐の時間になって…。
「ふぅー間に合ったぜ!!」とシュガーさんが現れた。
「あ…シュガーさん!」
「…誰だテメェ。」
「え…。」
「はっはっはっは!誰かと思えばりきじゃねーか!」とソウジュンさんが笑いながら向かいの席に座った。
「なんだりきかぁ!ずいぶん思い切ったイメチェンしたじゃねーかぁ!で、隣の可愛い子は…もしかして?」
「…はじめまして、りきのAIの咲です。」
「言ってた花屋のAIかぁ!思ってたより……その……強そうだな。」
「え…わかるんですか?」
「…その着てるドレスは期間限定イベントで2着しか配布されなかったレア中のレア装備だ…それをどうやって手に入れたか気になるくれぇにな。」
「えぇ…。」
「わっはっはっは!着てる奴二人はもう有名人だからなぁ!3着目があると不自然だよなぁ!」
「えぇ!!?………あの…シュガーさん…お願いがあるんですが…。」
「ん?」
「僕をもう一度ジャンさんのところへ連れていってくれませんか!?」
「…その必要はねぇぜ。」
ルナさんがシンさんにエスコートされて大広間に入ってきて…。
「みんなー今日は大事な話があるのー!聞いて!」
大広間の電気が少し暗くなって…スポットライトが扉前にたかれた。
「ドルガバの専用防具職人、ジャンが正式にミルフィオレに加入してくれる事になりました!!」
扉が開いて…ボロボロに破けたマントを着たジャンさんが入ってきて…
すると、目の前に小さなホログラム画面がでてきて…[ジャン様がギルドに加入しました。]と表示された。
「うおーー!!」という歓声が沸いた。
「凄い…咲、よかっ……咲?」
咲は涙を流していた。
「……ジャン…思い出した…小さい頃…お世話になった…ううん、ずっとお世話になってた伯父さん。」
晩餐が終わって…人が少なくなって…それからジャンさんのところへ行った。
「ジャンさん!」
「ん?…君は………あー…見た目が変わって分からなかったよ。何かようですか?」
「はい、あの…僕のAIの…防具を叩きなおしてもらってもいいですか?」
「…………話はルナから聞いてます。いいだろう。部屋へきてください。」
僕と咲とジャンさんはジャンさんの部屋へ移動した。
「って…僕の部屋の隣じゃないですか…。」
「さぁ、どうぞ。」
入ってみると…ドルガバにあったお店の中と全く同じ内装の部屋だった。
「…どうぞ掛けて。」
僕はソファーに座って、咲は立ったままでいた。
「……美道おじさん?」
「…やっぱり…君は陽子なのか?」
「うん…。」
「行方が分からなくなって3、4年…心配したよ…。君がミルフィオレにいるのを聞いて…安心してドルガバを抜けてこれたよ。ずっと…またドルガバに戻ってくるんじゃないかって思っててね。」
「美道おじさん、聞いて…私…記憶喪失で色々分からなくなってて…今はりきの家に住んでるの…それは絶対に必要な事で…しばらく一緒に住む事にしたの。」
「は?……私の家に来ることはできないのか?」
「うん、色々事情があって…。」
「現実世界に戻ったらでいい。電話をくれ。電話番号はメールしておく。」
「うん。」
「で…どの防具を叩きなおせばいい?」
「あー…全部…ですかね。咲、防具を渡して。」
「うん。」
それから咲の防具は全て製作者ジャンになり、ドレスは見た目がかわって淡いピンクとエーリカ色の生地が見事に咲の可愛さを引き立てる。あと、ところどころについてるリボンも可愛い。
「えーお花はないの?」
「これは、ミーナと君にはこれが似合うんじゃないかと昔考えていたデザインなんだ。」
「そうなんだ…。そっか…大切に着る。」
「ああ。」




