暴発の矛先 第二話
「安東の殿様は、再び大浦殿が立つことを望んでおられます。」
部屋の隅に置いてある行灯は、ただただ辺りを照らす。薄い光ながら、神妙なる徳司の顔がはっきりと窺える。そして為信は……徳司に問う。
「ほう……。どのような風の吹き回しか。安東に寝返れというわけではなく、ただ “立て” と。」
為信の鋭い目は徳司を睨みつける。徳司は……
「あなた方津軽衆に、我らに “従え” と誘うのは無理というもの……。」
思わず為信は鼻で笑った。それもそうだ。じょっぱりどもに “ああだこうだ” と申しても、聞く耳持たぬ。最近では在来の者だけでなく、他国者も言うことを聞かなくなっているというに。
「無論、大浦が南部と戦っている間は安東は手を出さぬが、南から攻めぬことを約束するそうです。」
「それで、もし裏切って勝負を挑み、勝つ見込みは。」
徳司は為信の後ろの二人を見つつ……ニヤリとした。
「勝てるかどうかは……殿には頭の良い家来衆がいらっしゃる。戦は “武” のみではないでしょうに。」
ここで小さくなって座る八木橋が恐る恐る訊ねた。
「では……我らが南部を裏切った場合、安東の殿は支援してくださるのですか。」
徳司は……静かに首を振る。わざと作り笑顔をし、八木橋へ答えた。
「あくまで安東は “手を出さぬ” し、攻め込まぬことを約束するまでです。我らとて津軽から逃げてきた浪岡衆の家族を抱えている。公然と再び結ぶなどできようはずがありませぬ。」
この言葉を聞き、八木橋は強めに言い返した。
「それでは我らに一切の得はないでしょう。」
「ならば大浦は、このまま南部氏に従っておられるのか。」
行灯の光は、揺れ始める。




