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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第五章 安東氏、為信と再び和睦す 天正十一年(1583)秋
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暴発の矛先 第二話

「安東の殿様は、再び大浦殿が立つことを望んでおられます。」


 部屋の隅に置いてある行灯(あんどん)は、ただただ辺りを照らす。薄い光ながら、神妙なる徳司の顔がはっきりと窺える。そして為信は……徳司に問う。


「ほう……。どのような風の吹き回しか。安東に寝返れというわけではなく、ただ “立て” と。」



 為信の鋭い目は徳司を睨みつける。徳司は……


「あなた方津軽衆に、我らに “従え” と誘うのは無理というもの……。」



 思わず為信は鼻で笑った。それもそうだ。じょっぱりどもに “ああだこうだ” と申しても、聞く耳持たぬ。最近では在来の者だけでなく、他国者も言うことを聞かなくなっているというに。



「無論、大浦が南部と戦っている間は安東は手を出さぬが、南から攻めぬことを約束するそうです。」


「それで、もし裏切って勝負を挑み、勝つ見込みは。」



 徳司は為信の後ろの二人を見つつ……ニヤリとした。


「勝てるかどうかは……殿には頭の良い家来衆がいらっしゃる。戦は “武” のみではないでしょうに。」



 ここで小さくなって座る八木橋が恐る恐る訊ねた。


「では……我らが南部を裏切った場合、安東の殿は支援してくださるのですか。」



 徳司は……静かに首を振る。わざと作り笑顔をし、八木橋へ答えた。


「あくまで安東は “手を出さぬ” し、攻め込まぬことを約束するまでです。我らとて津軽から逃げてきた浪岡衆の家族を抱えている。公然と再び結ぶなどできようはずがありませぬ。」


 この言葉を聞き、八木橋は強めに言い返した。


「それでは我らに一切の得はないでしょう。」



「ならば大浦は、このまま南部氏に従っておられるのか。」





 行灯の光は、揺れ始める。

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