暴発の矛先 第三話
「あなた方の内実はガタガタでしょうに。私が領内を見て回るとわかります。領主は狼藉を止めようとせず、土地を持たぬものがあぶれている……。隙あらば我が物にしようと、立場の弱き者を狙っている。いずれはエゾ衆だけでは済まなくなりますぞ。」
為信にもわかっている。”蝦夷荒” こそ、予期せぬ他者の善意によって落ち着く。しかし力のはけ口を失った者共をどうするべきか……外へ向かわせるのであれば南部氏もしくは安東という話になるし、それをしないとなれば内側へ矛先が……。彼らは新たなる “指導者” を望むかもしれぬ。
すると後ろに座す沼田は徳司に問うた。
「あなた方だってそうでしょう。バレないとでもお思いか。」
徳司は袂においてある扇子を持って、それをゆっくりと広げた。一気に開けるのではなく、骨ごとに余計な音をたてつつ……。口をそれで隠し、笑い声をわざと出してみる。
「よくお分かりで。あなた方ほどではないにせよ、我らも不穏な空気がありますな。前年に織田前右大臣が本能寺で死して後、織田の威光というモノは使えなくなり申した。我らは周りの勢力を ”織田信長” の名のもとに従わせていたという背景はありますから。」
その返答を聞き、沼田もわざと笑った。
「いやいやしかし、安東のお家は安んじておられる。内側で刃を向けよう者などおられぬ故。」
刃……
沼田は次に徳司へではなく、“殿” と為信に話しかけた。為信は首を曲げ、後ろを向く。
「もうお判りでしょう。このままでは、殿が殺されます。」
徳司は黙って頷き、沼田の横に座す八木橋は……目を丸くして沼田の言葉に驚いている。
「他国者は多くなり申した。私も含め、大勢がこの津軽に住んでおります。望みのモノを与えることができなくなった以上……彼らにとって、殿は無用なのです。となれば次に担ぐは他国者と親しい兼平氏、もしくは混乱に乗じて浪岡代官の白取氏が奪いに来るか。」
”まさかとお思いでしょう。それとも既に気づいておいでですか”




