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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第五章 安東氏、為信と再び和睦す 天正十一年(1583)秋
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不犯札 第四話

「言うと語弊はあろうが……妙誓(みょうせい)という尼は兄の奥瀬様も手を付けれられないと聞く。だから他国者からエゾ衆を守るというのは元々油川の意向ではない。」



 ……というのも実は、浪岡領の村長(むらおさ)が御所に集められたのよ。


 その話を聞いた角兵衛、身を乗り上げて嘉茂助の次の句へ注目する。


「実際に浪岡を仕切っている白取様より、領内のエゾの動きは如何様かとお伺いがあった。その場に榊村代表として出向いたのだが……俺には特に他国者の動向も(ただ)してきよった。」


 ……当然、なにも存ぜぬと突っぱねたがな。角兵衛はその言葉を聴いて、ひとまず胸をなでおろした。嘉茂助は再び茶をすすり、一息ついてまた話し出す。


「その場で他の村長(むらおさ)から聞いたのよ。おそらくは白取様はもうしばらく他国者を暴れさせておくつもりだったと。」


 よく意味が分からない。


「つまり大浦領で混乱が起こることは大歓迎。浪岡が再び乱れることは無いし、大浦家が潰れてくれれば……軍を率いて津軽を押さえ、あらたに津軽の領主として君臨する腹積もりだったと。特に白取様は養女を大浦に入れておられるから、大浦家の代わりを務めるという名分がある故。」


 それがあらぬ方向から止められてしまった。白取様の内心は穏やかではない。かといって何かできるわけでもなく。



「噂だと……初めこそ大浦なんぞに実の娘を出してたまるかと、わざとそこらへんで身売りされていた娘を養女として差し出したと。それに供回りに親しいものを付けておけば、大浦家の内情を探ることもできるしの。」



 ただ……後になって、白取様のお心に……欲が芽生えてきたという。うまく転がせば、津軽を奪い取れるのではないかと。ここ最近は為信の評判もよくないことであるし。


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