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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第五章 安東氏、為信と再び和睦す 天正十一年(1583)秋
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不犯札 第三話

 熱した頃合いは過ぎ、稲穂が垂れる季節……かつて水木(みずき)御所(ごしょ)があった近くに誰も耕さぬようになった土地があり、そこに多くの他国者が移り住んでいた。その場所を(さかき)村と名付け、嘉茂助(かもすけ)という者が先頭に立って指導している。そして入植して最初の秋……実りは豊かに、在来の者も含めて誰もが豊かに暮らす。そこへしばらく後……生玉(なまたま)角兵衛(かくべえ)らの集団が密かに入った。衣はたいそう汚れ、布のほつれなど見苦しい限り。嘉茂助はため息をつき、角兵衛へ苦言を呈す。


「ここに集まった他国者は、地道に努めていこうとする者ばかり。奪うことをせず、堰を作り、田畑を広げていく……。お主も落ち着いたらどうだ。」


 角兵衛は首を振った。


「いや。お前らは運よく、誰もいなくなった土地に入ることができた。残った者はどうする。水路も整っていないところで一から作れというのか。」


「角兵衛殿。もしあなたがそうなさるのなら、私どもも協力いたす。同じ他国者なのだから。」



 “ふん”と鼻で笑う角兵衛。嘉茂助の話は理想論としか思えない。もちろん武士だった者が生きるために鍬を握ることは仕方ない。しかしエゾ衆の土地が手にはいれば、最上の事。川に近く、水路も作りやすい。のうのうと土地に草を蓄えさせておくのは不服だ。それに奴らは和人の土地に住む “狄” ではないかと……。つまり、蔑んでもいい存在。このように口々に文句を言う角兵衛に、嘉茂助はあきれ顔で “おちつけ” と諭す。



「だがその結果、お主らはお尋ね者だ。エゾ村には南部の目が付き、襲おうものなら徹底的にやられる。」



 そして、“ただし浪岡では驚きだったようだな” と続ける。角兵衛は身を乗り出して “どういうことか”と。嘉茂助は渋りながら……ひとまずは無言で目の前の茶をすする。少し苦く、後味に残っている。舌触りもあまりよろしくなく。



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