第96話:超越消費者(メタ・コンシューマー)と、大宇宙の『陳腐化(オワコン化)』
第96話:超越消費者と、大宇宙の『陳腐化(オワコン化)』
大日本・多元宇宙商会・代表取締役たる第六天魔王・織田信長が、大宇宙の絶対メインサーバー(旧・オリジナル・ゼロ)の起動スイッチを打ち抜いた瞬間。
絶対虚無のキャンバスに、極彩色と黄金に輝く【超次元・真・大日本戦国宇宙】が産声を上げた。
「ガハハハハ! 最高だぜェ! 息を吸うだけで力が湧いてきやがる!」
オークの猛将・権六が、新たに創造された「肉と酒でできた超巨大大陸」に降り立ち、地平線まで続く極上の霜降り肉の大地を素手で引きちぎって丸呑みする。
「へっへへへ! 重力が全部【資本力】に連動してやがる! 金貨を落とせば引力が発生して新しい星ができまさァ! これなら無限に不動産ビジネスが転がせやすぜ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、空中にばら撒いた『新・永楽銭』が周囲のデブリを吸い寄せて黄金の小惑星を形成していくのを見て狂喜乱舞する。
闘争と労働によってエネルギーが無限に増殖し、野心ある者だけが成り上がれる究極のブラック・ユートピア。
社員たちが自ら創り出した「最高の職場(宇宙)」を満喫する中、新宇宙の中心にそびえ立つ真・黄金の天主の最上階で、信長はアザトス・ボイラーで醸造された神殺しの大吟醸をあおっていた。
「……フゥ。俺たちの野心を全部ブチ込んだ最高の市場だ。これなら永遠に退屈しねェな」
信長は、硝煙の匂いと黄金の光に満ちた新宇宙を見下ろし、極悪な笑みを浮かべた。
だが、その至福の時間は、長くは続かなかった。
メタ次元からの干渉
『――ピーッ! お、御館様! 異常事態です!』
戦略室の佐吉が、真っ青な顔で血相を変えて玉座の間に飛び込んできた。
「新宇宙の物理法則が……いや、【大宇宙という概念そのもの】が、外側から急速に『すり減って』います!」
「すり減ってるだと? どういうことだ、佐吉」
信長が眉をひそめた瞬間。
バリィィィィィィィィンッ!!!!!
新宇宙の極彩色の空が、まるで薄っぺらい「スクリーン」であったかのように、物理的な衝撃もなく無音で引き裂かれた。
引き裂かれた空の向こう側にあったのは、虚無でも星海でもない。【圧倒的なまでに高位の、理解不能な視線の渦】であった。
『……あーあ。またこのパターンの宇宙か』
空の裂け目から響いてきた声は、神のような威厳も、魔物のような殺意もない。
それは、退屈そうに欠伸を噛み殺すような、ひどく「気怠い」響きを持っていた。
『インフレを極めた主人公が、神様を倒して自分たちで宇宙を創る。……よくある「俺ツエー」の最終回だね。最初は面白かったけど、もう展開がワンパターンすぎて【飽きた】よ』
「……なんだと?」
信長が、持っていたグラスをピシリと握り割る。
超越消費者エンド
空の裂け目から、人型ではあるが、輪郭が常に「ノイズ」のようにブレ続けている不可解な存在――【超越消費者エンド】が姿を現した。
彼は大宇宙そのものを「一つのコンテンツ(商品)」として消費し、飽きれば次の宇宙へと乗り換える、次元のさらに外側(メタ次元)に棲まう【究極のクレーマー】であった。
『インフレしすぎたインフラ、カネと暴力だけの解決、エゴの押し付け……。もう新鮮味がないんだよね。この宇宙は、もう【陳腐化(オワコン化)】した。だから、ここで打ち切り(廃棄)にして、僕は次の新しいジャンルの宇宙へ行くよ』
「ヒィィィッ! な、なんだアイツは!? ウチの創ったばかりのピカピカの新宇宙を『オワコン』呼ばわりしやがったぞ!」
猿が、ソロバンを抱えて震え上がる。
「ガハハハハ! 俺たちの宇宙にケチをつけるたァいい度胸だ! 退屈だっていうなら、俺の斧で極上のスリル(死)を味あわせてやらァ!」
権六が、超光速で跳躍し、極彩色の新宇宙エネルギーを纏った【超絶・次元晶戦斧・改】を、エンドの頭上めがけてフルスイングした。
大宇宙すらも真っ二つにする、インフレの極地たる一撃。
だが。
『……ほら、またそれだ。大声を出して斧を振り回すだけ。展開が読めすぎるんだよ』
エンドが退屈そうに指を鳴らした瞬間。
権六の放った究極の斬撃は、エンドに届く前に「ペラペラの紙くず」のように威力を失い、パサリと虚空に落ちて消えてしまった。
「な、なんだとォ!?」
権六が驚愕に目を見開く。
「オヤジィ! なら俺たちのコンビネーションならどうだ!」
又左と虎が、雷撃とプラズマを神速で融合させた【超新星・双牙雷槍】を放つ。
しかし、それもまた。
『……熱血コンビの合体技。もう見飽きた』
エンドの一瞥だけで、雷光はただの「安い花火」のようにシュンと音を立てて消え去った。
究極の『陳腐化(オワコン化)』
「御館様! 奴は我々の攻撃を防いでいるのではありません!」
佐吉が、魔導盤の悲惨なエラー数値を読み上げる。
「奴は我々の行動、能力、さらには存在そのものを『消費済み(飽きた)』と認識することで、その【存在価値をゼロ(陳腐化)】に落とし込んでいるのです! 新商品が流行遅れになってゴミになるのと同じ理屈です!」
「ウフフ……つまり、私たちがどれだけ強力な魔法や物理攻撃を使おうと、奴が『ワンパターンだ』と思った瞬間に、無価値にされてしまうということですわね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を構えたまま冷や汗を流す。
『そういうこと。君たちの提供するエンタメ(暴力)は、もう僕の心を一ミリも動かせない。……さあ、撤収の時間だ。こんな型落ちの宇宙、資源の無駄だからね』
エンドが巨大な「ゴミ箱(廃棄フォルダ)」の概念を空に展開し、誕生したばかりの大日本戦国宇宙を丸ごと吸い込もうとし始めた。
魔王の商売論
新宇宙が「陳腐なゴミ」として廃棄されようとする絶望的な状況。
だが、真・黄金の天主の最上階に立つ織田信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、かつてないほどに深く、そしてドス黒い笑みを浮かべていた。
「……ククッ。フハハハハハ!」
『……何がおかしいの? もう打つ手はないはずだけど』
エンドが、ノイズの混じった顔を傾ける。
「おかしいに決まってるだろうが」
信長は、天主のバルコニーを蹴り飛ばし、エンドと真っ直ぐに対峙した。
「飽きただの、ワンパターンだの。……てめェは客(消費者)の分際で、随分と偉そうに商売を語りやがるな」
信長の全身から、新宇宙の法則すらもねじ伏せるほどの【極大の漆黒の覇王色】が、太陽のプロミネンスのように燃え上がり始めた。
「てめェらみてェな『消費するだけの連中』の言いなりになって、ご機嫌取りの小綺麗な商品(宇宙)を並べるのが商売だと思ったら大間違いだぞ」
『……強がりはよしなよ。君のエゴも、もう見飽き――』
「客の想像の範疇(想定内)のモンを出してるうちは、ただの三流だ」
信長は、エンドの「陳腐化の圧力」を、自らの覇王色の圧力だけで強引に押し返し始めた。
「真の起業家ってのはな、客が『もう飽きた』『こんなモンいらねェ』って言ってる口に、無理やり最高の商品(暴力)を突っ込んで、【てめェの価値観ごとブッ壊して熱狂させる(財布を開かせる)】んだよ!!」
究極の『新商品プレゼン(カチコミ)』の開幕
「佐吉! 五郎左! 俺の火縄銃に、新宇宙の全エネルギーと、大日本商会全社員の【規格外の狂気】を限界までブチ込め!」
「りょ、了解しました! 既存のセオリーをすべて破棄! 顧客の予想を完全に裏切る『超絶・変則的ブラック・プログラム』を構築します!」
「おうよォッ! お高く止まった客のドタマに、俺たちの最高のシノギ(新商品)を叩き込んでやりなァ!」
信長の火縄銃が、黄金でも漆黒でもない、誰も見たことのない【予測不能のカオスな輝き】でパンパンに膨れ上がる。
「てめェが飽きたって言うなら、脳髄が焼き切れるほどの『未知の狂熱』を味あわせてやる! ……受け取りな! 大日本商会がてめェに叩きつける、究極の【新商品プレゼン(カチコミ)】だ!!」
信長が引き金に指をかける。
次元の外側から訪れた究極の消費者に対し、大日本・多元宇宙商会が会社の全存在意義を懸けた「一切の妥協なき顧客満足(物理)」を叩き込む。
全100話の完結へ向けて、大宇宙の枠すらも飛び越えた【真の最終決戦】が、いよいよ最も熱く、最も狂気じみたフェーズへと突入していくのであった。
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