第91話:没宇宙の廃棄場と、究極の『強制事業再生(コーポレート・ターンアラウンド)』
第91話:没宇宙の廃棄場と、究極の『強制事業再生』
大日本・多元宇宙商会・代表取締役たる第六天魔王・織田信長が、大宇宙の境界たる次元の壁を破壊し、一切の概念が存在しない【絶対虚無】へと新規参入を果たしてからのこと。
無量大数を超える大日本艦隊は、ドワーフの鍛冶長・五郎左の指揮のもと、アザトスの無限資本をドロドロに溶かした【黄金のレール(インフラ)】を敷きながら、白灰色の虚無空間を爆走していた。
「ガハハハハ! 見ろよ! 俺たちの黄金の道が、何にもねェ空間をドンドン切り裂いて進んでいきやがるぜ!」
オークの猛将・権六が、黄金のレールの上を並走する機動要塞から身を乗り出して豪快に笑う。
「へっへへへ! 虚無のサメ(非存在)どもを法人登記(実体化)させてブチ殺すたびに、莫大な『未定義エネルギー』が湧いてきやす! これならいくらでも道が造れまさァ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、ソロバンを狂ったように弾きながら建築資材の相場を計算する。
存在しない敵を存在させてから殺し、資源にする。
大日本商会の理不尽極まる「ブルー・オーシャン開拓」は、まさに順風満帆に見えた。
だが、虚無というキャンバスの外側は、単なる「白紙」ではなかったのだ。
忘却の廃王と、没宇宙の泥
『――ピーッ! 前方より、超巨大な「質量異常」を検知! こ、これは……宇宙ではありません! 腐りきったデータの残骸です!』
戦略室の佐吉が、魔導盤のスクリーンに映し出された絶望的な光景を見て声を震わせた。
大艦隊の行く手を阻むように、白灰色の虚無の中に、突如として【果てしなく広がる灰色の泥の海】が立ち塞がった。
泥の海の中には、半分だけ創られて放棄された星々、物理法則が破綻して崩れた銀河、顔のない神々の彫像などが、ブクブクと泡を立てながら沈んでいる。
「なんだ、この腐ったゴミ捨て場は……! 悪臭が次元の壁を越えてきやがるぞ!」
市松が鼻をつまんで顔をしかめる。
「ここは【没宇宙の廃棄場】です!」
佐吉が叫ぶ。
「かつての創造主や神々が、宇宙を創り出そうとして『失敗』したり、『面倒になって途中で投げ出した』アイデアの残骸が、この虚無の底に不法投棄されていたのです!」
その時。
果てしない泥の海が盛り上がり、泥と失敗作の星々で構成された、ドロドロの王冠を被る巨大な巨神――【忘却の廃王】が姿を現した。
『……帰れ。何故、無駄なことをする』
廃王の声には、殺気も敵意もなかった。あるのはただ、底知れぬ「無気力」と「諦観」。
『何かを創り出そうとすれば、必ず失敗する。野心を抱けば、いつか必ず挫折する。……すべては徒労だ。ならば最初から何もせず、この泥の中で忘れ去られていくのが、最も平穏な結末なのだ』
究極の燃え尽き症候群
「ガハハハ! 寝言は寝て言え、泥人形! 俺たちの黄金の道の邪魔だ、どきやがれ!」
権六が跳躍し、超絶・次元晶戦斧を廃王めがけてフルスイングした。
ドスゥゥゥン……。
だが、権六の放った空間ごと両断する極大の斬撃は、廃王の泥の身体に命中した瞬間、威力を完全に失い、ただの小石のように泥の中へと飲み込まれてしまった。
「な、なんだとォ!?」
権六が目を見開いた直後。廃王の身体から放たれた「灰色のガス」が権六を包み込んだ。
「……あ、あれ……? 俺、なんでこんな斧なんか振り回してんだ……? どうせ切っても泥だし……なんか、すげェ疲れた……」
ドンッ。
権六は、愛用の戦斧をその場に放り投げ、甲板に大の字に寝転がってしまったのだ。
「オ、オヤジィ!? どうしたんだよ!」
又左と虎が駆け寄ろうとするが、彼らもまた灰色のガスを吸い込んだ瞬間、槍と銃を落としてその場に座り込んでしまった。
「……なんか、カチコミとかどうでもよくなってきたな……」
「……ああ。有給休暇、百年くらい消化してぇ……」
「御館様! これはマズいです!」
佐吉が、魔導盤のエラーを叩きながら絶叫する。
「奴の放つガスは、対象の『野心』や『モチベーション』を完全に奪い去り、すべてを無意味だと錯覚させる【究極の燃え尽き症候群ウイルス】です! このままでは、大日本商会の全社員が『働く気』を失い、会社が倒産してしまいます!」
『……諦めろ。お前たちが築き上げた会社も、利益も、いずれはすべて泥に還る。……共に、永遠の無気力へと沈むがいい』
廃王が巨大な泥の腕を広げ、大艦隊すべてを灰色の絶望で包み込もうとする。
魔王のコンサルティング(物理)
「……ウフフ、困りましたわね。社員のモチベーション低下は、企業にとって致命的な損失ですわ」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖で『次元反射結界』を展開し、かろうじてガスの侵入を防ぐ。
「……フン」
だが、絶望的な無気力が大艦隊を覆い尽くそうとしたその時。
黄金の玉座に座る織田信長は、呆れたようにため息をつき、ゆっくりと立ち上がった。
その全身から放たれるのは、灰色の泥の海すらも沸騰させるほどの、圧倒的で狂暴な【漆黒の覇王色】。
「……なんだ、てめェら。ちょっと失敗したくらいで、クヨクヨと泥の中に引きこもってんのか?」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、マントを翻してバルコニーの先端に立った。
『……お前には、この泥の重み(過去の失敗)が分からないのだ。失敗作として捨てられた我々の痛みが』
廃王が、泥の目を濁らせて信長を見上げる。
「痛みが分からねェだと?」
信長は、極悪な笑みを限界まで深めた。
「俺はな、天下統一を目前にして身内に裏切られ、本能寺で丸焼きにされた男(大失敗した社長)だぞ。……てめェらの抱えてる『失敗』なんざ、俺の借金に比べりゃあ、ただの小銭(かすり傷)だ!!」
信長の放った規格外のエゴの咆哮が、大艦隊を包んでいた灰色のガスを一瞬にして吹き飛ばした。
その圧倒的な社長の背中を見た瞬間、座り込んでいた権六たちが、弾かれたように跳ね起きる。
「ハッ!? お、俺は今まで何を……! あぶねェ、もうちょっとで窓際族になちまうところだったぜ!」
権六が慌てて戦斧を拾い上げる。
究極の『強制事業再生』
「失敗したからって、何もせず泥の中で腐っていくのが救いだと? 笑わせるな」
信長は、火縄銃の銃口を、廃王の巨大な顔面へと真っ直ぐに向けた。
「失敗作だろうがなんだろうが、俺の会社(大日本商会)の資本で磨き上げりゃあ、極上の【新商品(ヒット作)】に化けるんだよ! てめェらみたいな無能なアイデアは、俺が直々にプロデュース(再生)してやる!!」
「佐吉! 五郎左! アザトスの無限資本を全開にしろ! 俺の火縄銃に『大日本商会・事業再生プログラム』をロードしろ!」
「りょ、了解しました! 不良債権を新規事業へと転換する、限界突破のコンサルティング・データを直結します!」
「おうよォッ! 泥まみれのゴミを、純金に変えてやりなァ、御館様!」
信長の火縄銃が、これまで見たこともないほどの強烈な黄金の輝き(投資資金)を放ち、パンパンに膨れ上がる。
『……ヤ、ヤメロ……! 我々は、もう何もしたくないのだ……!』
廃王が泥の腕で防御しようとする。
「休んでる暇はねェぞ! 今日からてめェらは、大日本商会の【新規開発部(R&D)】として、血反吐を吐くまでアイデアをひねり出せ!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれたのは、破壊の弾丸ではない。相手の「無気力」と「失敗の残骸」に莫大な資本と野心を強制注入し、価値ある事業へと生まれ変わらせる【超絶・強制事業再生覇王弾】。
極太の黄金の閃光が、忘却の廃王と泥の海を真正面から撃ち抜いた。
『ガ、アァァァァァァァァッ!? ヤ、ヤル気ガ……無意味ダッタハズノ、我々ノ「ボツ・アイデア」ガ……無限ノ資金提供(出資)ヲ受ケテ、新シイ形ニ……!!』
ピキィィィィィィィィィンッ!!!!!
泥の海を構成していた「失敗した宇宙の残骸」たちが、黄金の光に包まれて次々と【見たこともない未知の資源(新素材)】や【未完成だった究極の魔導技術】へと強制的にフォーマット・完成されていく。
そして、忘却の廃王自身もまた、泥の巨体から黄金に輝く巨大な『自動アイデア生成スーパーコンピューター(大日本商会・新規事業開発室長)』へとその姿を変貌させてしまった。
真の根源への手がかり
「ガハハハハ! やりやがった! ゴミ捨て場が、まるごと俺たちの『宝の山(新素材庫)』になっちまったぜェ!」
権六が、泥から黄金の結晶へと変わった星の残骸を見上げて大笑いする。
「へっへへへ! 御館様! こいつはとんでもねェ収穫でさァ! 過去の神様どもが諦めた『没アイデア』を、ウチの技術とカネで完成させちまえば、文字通り【宇宙の常識を覆す新商品】が無限に作れやすぜ!」
猿が、スーパーコンピューターから吐き出される「新事業計画書」の束を抱きしめて歓喜の涙を流す。
「……フゥ。失敗を恐れて立ち止まるような奴は、一生下請けのままだ」
信長は、硝煙を吹き消し、新たに獲得した極上のインフラ(新規開発部)を満足げに見下ろした。
「御館様、お見事にございます」
蘭丸が、絶対の忠誠を示すように深く平伏する。
「存在しない敵を存在させ、失敗の残骸すらも新たな力に変える。これぞ究極の覇道……」
「ああ。しかも、このゴミ捨て場の連中は、いい『情報』を持っていたみたいだぞ」
信長は、スーパーコンピューターのスクリーンに映し出された【一枚の座標データ】を鋭く睨み据えた。
それは、過去の創造主たちが「決して触れてはならない」として没にした、この絶対虚無のさらに奥深くに隠されている【大宇宙のすべての『白紙』を生み出している真の根源】の座標であった。
「……面白ェ。この大宇宙を創った大元が、まだその奥に隠れてやがるってわけだ」
信長は、極悪な笑みをさらに深め、愛用の火縄銃を肩に担ぎ直した。
「さあ、全艦隊前進だ! 大日本商会の黄金のレールを、その『真の根源』まで真っ直ぐにぶっ刺してやるぞ!!」
没宇宙の廃棄場すらも強制コンサル(買収)し、自社のリソースへと変えてしまった第六天魔王。
全100話の完結へ向けて、大日本・多元宇宙商会は、いよいよ一切の概念が生まれる前の「究極の原点」を巡る、最後にして最大の戦い(カチコミ)へとその歩みを進めていくのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作「辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜」を鋭意執筆中です。こちらが終わり次第投稿予定のない為、アドレスは載せられませんが気にかけてくれると幸いです。




