第85話:歴史の絶対修正力(クロノス・レギュレーター)と、運命への『逆カチコミ』
第85話:歴史の絶対修正力と、運命への『逆カチコミ』
すべての次元を平定し、第六天魔王・織田信長が大日本・多元宇宙商会の「完全独占」を宣言した直後。
真・戦国宇宙の星海は、突如として真っ赤な【業火】に包まれた。
それは、ただの炎ではない。
信長と蘭丸がかつてその身を焼かれ、そして異世界へと転生するきっかけとなった原点の炎――【地球・西暦1582年・本能寺の業火】の概念そのものが、時空の壁を越えて大宇宙全体に燃え広がっていたのだ。
『――ピーッ! エラー! エラー! 全次元の資産データが、猛烈な勢いで「巻き戻り」を始めています!』
戦略室の佐吉が、魔導盤のスクリーンを埋め尽くす「ロールバック(過去への強制退行)」の警告表示を見て絶叫する。
「巻き戻りだと!? どういうことでさァ、佐吉!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、手元のソロバンから黄金の玉(永楽銭)がボロボロと崩れ落ち、ただの木端に戻っていくのを見て泡を吹く。
「そのままの意味です! 我々が支配した真・戦国宇宙も、買収したインフラも、アザトスの永久機関も……すべてが【最初から存在しなかったこと】として、宇宙の歴史から強制的に消去されようとしています!」
「ガハハハハ! ふざけんな! 俺たちが血反吐吐いて稼いだシノギを、勝手に帳消しにされてたまるかァ!」
オークの猛将・権六が吠え、超絶・次元晶戦斧を構えるが、彼の持つ戦斧の刃先すらも半透明に透け、かつての「ただの鉄の斧」へと退行し始めていた。
運命の編纂者
燃え盛る宇宙の空が大きく裂け、その中心から「巨大な砂時計」と「無数の歯車」で構成された、一切の感情を持たない巨大な機械仕掛けの天使が顕現した。
『……警告。特異点の異常膨張を確認。大宇宙の歴史法則に致命的なエラーが発生中』
その声は、神々の威圧感すら超えた、宇宙というシステムを維持するための「絶対的なメンテナンス・プログラム」の無機質な響きだった。
『我は【歴史の絶対修正力】。大宇宙の因果律を管理し、歴史をあるべき姿(正史)へと維持する者。……織田信長、ならびに森蘭丸。貴様らは本来、西暦1582年の本能寺で死を迎え、歴史から退場すべき存在である』
機械の天使が、巨大な歯車の腕を信長へと向ける。
『貴様らの「死の回避(転生)」という僅かなバグが、ここに至って全次元を呑み込む致命的エラー(大日本・多元宇宙商会)へと肥大化した。……これより、歴史の修正を実行する。貴様らを本能寺の炎へと強制送還し、この宇宙のすべての事象を「正史」へと戻す』
「本能寺へ強制送還……!」
その言葉に、蘭丸の白銀の瞳が揺れる。
彼の脳裏に、あの日の絶望がフラッシュバックする。迫り来る明智の軍勢、燃え落ちる御殿、そして、主君の最期。
「……御館様……」
蘭丸が、思わず信長の背中を見る。
すべてを失う恐怖。過去のトラウマ。大宇宙の法則そのものを敵に回すという絶望的な状況。
だが。
黄金の玉座(大宇宙の心臓)の前に立つ織田信長は、燃え盛る本能寺の幻影を見上げながら、肩を揺らしてククッと笑い始めた。
「……フハハハハハ!」
『……何がおかしい、特異点よ』
「おかしいに決まってるだろうが」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、極悪な笑みを浮かべてマントを翻した。
「俺が死ぬはずだった歴史だの、正史だの。……そんなもん、てめェら『運命』の側が勝手に書いた決算書に過ぎねェだろうが」
魔王の論理と、防衛結界の展開
「てめェらが俺に『死ね』と言ったからって、素直に死んでやる義理がどこにある。俺の命も、この大日本商会も、俺の野心で勝ち取った俺の資産だ。……帳簿の数字(歴史)が合わねェからって、現場の努力を勝手に全否定してんじゃねェ!!」
ゴオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!
信長の全身から放たれた極大の『漆黒の覇王色』が、巻き戻ろうとしていた宇宙の因果律に物理的に干渉し、大日本商会の資産(社員たち)が消えかかるのを強引に繋ぎ止める。
「金柑! 官兵衛! 会社の全システムを使って、この歴史修正プログラムの侵攻を食い止めろ!」
「ウフフ、承知いたしましたわ!」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が銀の杖を天に掲げる。
「買収した『法務・知財部門(旧・特許神アカシャ)』のシステムをフル稼働! 相手の歴史修正を『我が社の不当な権利侵害』として法的にブロック! さらに、絶対リスク管理部門(旧・ラプラス)の計算機を回し、消滅確率を強制的に『0%』に固定します!」
「過去への退行など、我が劇毒で腐らせて止めましょう」
軍師の官兵衛と【腐海魔帝ベルゼビュート】が、時空の巻き戻りを阻害する「絶対停滞の呪い」を次元の亀裂に流し込む。
大日本商会がこれまでに買収し、築き上げてきた『全インフラ』が、宇宙の絶対法則たる歴史修正力に真っ向から抵抗を開始したのだ。
『……エラー。歴史の修正が、対象の異常なエゴとシステムによって阻害されています。……強制執行レベルを【最大】に引き上げます』
クロノス・レギュレーターの背後にある巨大な砂時計が逆回転を始め、本能寺の業火がさらに激しさを増して大艦隊を飲み込もうとする。
「御館様! インフラによる防衛も長くは持ちません! 歴史修正の『源流』である1582年の本能寺からの干渉を根絶しない限り、ジリ貧です!」
佐吉が、火花を散らす魔導盤を必死に叩きながら叫ぶ。
本能寺への『逆カチコミ(出張)』宣言
「なら、話は簡単だ」
信長は、火縄銃の硝煙を吹き消し、ニヤリと笑った。
「源流が本能寺にあるなら、俺たちがそこへ直接【出張】に行って、運命の根源ごと買い叩いて(ブッ殺して)やればいいだけのことだ」
「な……ッ!?」
佐吉も、猿も、権六も、全社員が驚愕に息を呑む。
過去への干渉を止めるために、自ら過去のトラウマ(死の運命)の真っただ中へ飛び込むというのか。
「蘭丸!」
「ハ、ハッ!!」
蘭丸が、弾かれたように信長の前に跪く。
「お前には、あの本能寺で最後まで俺の盾になってもらった。……あの時の借りを、そろそろキッチリ返させてもらうぜ」
信長は、蘭丸の肩に手を置き、不敵に笑いかけた。
「俺と一緒に来い、蘭丸。あの燃え盛る本能寺のド真ん中にカチ込んで、てめェの運命の借金取り(クロノス・レギュレーター)のドタマを、俺とてめェの二人でカチ割ってやるぞ!!」
「御館様……!」
蘭丸の瞳から、迷いやトラウマの影が完全に消え去った。
そこにあるのは、自らの死の運命すらも主君と共に切り拓くという、絶対の覚悟と忠誠の炎だった。
「……御意!! この森蘭丸、いかなる地獄、いかなる運命であろうとも、御館様の御供をいたします!!」
時空を穿つ買収弾
「佐吉! 五郎左! 大日本の全資本と、アザトスの無限出力を俺の火縄銃に直結しろ! 照準は……西暦1582年、6月2日、京都・本能寺!!」
「おうよォォッ! 時空を超える超絶特急便だぜェ!」
「了解しました! 時空座標を固定! 因果律の壁に【強制突破口】を開きます!」
信長の火縄銃が、黄金の資本エネルギーと漆黒の覇王色で極限まで圧縮される。
相手が過去から引きずり込もうとするなら、こちらから過去のルールをブチ壊しに行く。
「てめェらの描いたチンケな歴史なんざ、俺の野心で黒塗り(黒字)にしてやる!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれた【超時空・強制買収覇王弾】が、宇宙空間に燃え広がる本能寺の業火の中心――歴史修正力の発生源である「時空の特異点」を真っ向から撃ち抜いた。
パキィィィィィィィィィィンッ!!!!!
ガラスが割れるような凄まじい音と共に、真・戦国宇宙の空間に【地球・本能寺へと繋がる巨大な時空の穴】がこじ開けられた。
穴の向こうには、猛烈な炎に包まれた木造の御殿と、喚き散らす無数の足軽たちの姿が見える。
「権六! 猿! 金柑! 俺が留守の間、この会社(宇宙)を死守しろ! 借金取りの指一本でも触れさせるなよ!」
「ガハハハハ! 任せとけェ、御館様! 社長の留守を預かるのが役員の仕事だァ!」
「へっへへへ! いってらっしゃいませ、御館様! ド派手なシノギを期待してやすぜ!」
「行くぞ、蘭丸!!」
「はっ!!」
信長と蘭丸の二人は、背後の家臣たちに会社を託し、迷うことなく【時空の穴(本能寺)】へとその身を躍らせた。
全次元を平定した魔王が、自らの死の運命を清算するため、すべての始まりの地「本能寺」へと帰還(逆カチコミ)する。
全100話の完結へ向けて、織田信長と歴史そのものとの、時空を超えた究極の最終決戦がいよいよ幕を開けるのであった。
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