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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第8話:美しき金柑の覚醒と、帝都絶対防壁の崩壊

これまでの設定と熱い展開を引き継ぎ、新たに加わった天才軍師・ルーギス(金柑)が、信長の「完璧なマネジメント」によって真の能力を覚醒させる第8話を執筆いたしました。

異形の家臣たちが織りなす極上のチームワークと、巨大帝国の絶対防壁を科学と魔法の融合で粉砕するカタルシスあふれる大攻城戦を、大ボリュームでお楽しみください。

# 第8話:美しき金柑の覚醒と、帝都絶対防壁の崩壊

 ルミナ神聖帝国の遊撃隊五千が、一人の血も流すことなく尾張軍に降伏してから三日。

 尾張城の最上階に新たに設けられた執務室で、美しきハイエルフの軍師ルーギス――織田信長より『金柑(キンカン)』の名を与えられた男は、淹れたてのハーブティーの香りに包まれながら、静かな感動に打ち震えていた。

 彼に与えられた部屋は、まさに「完璧」であった。

 エルフの鋭敏な五感に配慮された適度な湿度と採光。そして何より、机の上に山積みにされているのは、無能な貴族の機嫌取りや、儀礼的なだけの無駄な書類ではない。すべてが、この国の兵站、魔法技術のデータ、そして次なる戦の合理的な計算書だけだ。

「……信じられない。夜通し働かずとも、日暮れには業務が終わり、休息が与えられる。しかも、私の提案した戦術案が、翌日には稟議などという無駄な工程を飛ばして『実戦配備』されている……!」

 ルーギスは、震える手で自身の書き上げた書類を撫でた。

 帝国時代、彼は睡眠時間を削り、血を吐くような思いで完璧な作戦を立てても、上層部の「神の教えに反する」「貴族の面子が潰れる」という非合理な理由でことごとく却下されてきた。

 だが、今の主君は違う。

 織田信長は、ルーギスの神経質なまでの完璧主義を「最高の武器」として全肯定し、その頭脳が最も効率的に働くよう、一切のストレスを排除した環境(ホワイトマネジメント)を与え尽くしたのだ。

(これが……私の求めていた真の理(ことわり)の世界。ああ、御館様……あなたこそが、私のすべてを捧げるに相応しい真の覇王だ……ッ!)

 ルーギスの双眸から、歓喜の涙がこぼれ落ちる。

 かつて本能寺の変という最悪の結末を招いた「すれ違い」は、信長自身の成長と圧倒的な器量によって完全に払拭され、ここに、決して裏切ることのない最強の天才軍師が覚醒したのである。

     * * *

「――これより、帝都ルミナ攻略の軍議を始める」

 尾張城の大広間。円卓を囲む異形の家臣たちの前で、信長が重々しく宣言した。

 本隊五万を失ったとはいえ、ルミナ神聖帝国の帝都には未だ教皇アレクサンドルが健在であり、都市全体を覆う強大な防御魔法が存在していた。

「金柑。帝国の内情を知り尽くした貴様の口から、敵の壁について説明しろ」

「はっ」

 信長に指名されたルーギスが、優雅な所作で立ち上がる。その表情からは以前の鬱屈とした影が完全に消え去り、自信に満ちた美しい輝きを放っていた。

 彼が指差した地図の帝都の上には、半球状のドームが描かれている。

「帝都ルミナを覆うは、国宝『天使の心臓(巨大魔石)』を動力源とする超広域魔法障壁『絶対防壁(アイギス)』です。これは物理攻撃、魔法攻撃を問わず、外部からのあらゆる衝撃を大地のマナへと逃がし、無効化する恐るべき結界。正攻法では、いかに我が軍の新型筒でも貫通は不可能です」

「ちっ、面倒くせぇな。なら、どうやってその殻を割るんだい、新入りのエルフ殿よ?」

 狼獣人の又左(マティアス)が、足を投げ出しながらニヤリと笑って尋ねる。

「ご安心を、又左殿。すでに佐吉殿と計算は終えております」

 ルーギスが視線を向けると、向かいに座るハーフエルフの佐吉(イシオン)が、パチパチと算盤を弾きながら頷いた。

「はい。金柑殿から提供された『絶対防壁』の魔力波長データと、我が方の魔力螺旋陣の出力を照合しました。結界の防御力は確かに絶対ですが、それは『一定の波長』に対してのみ。もし、結界の波長と寸分違わぬ『逆位相の魔力』を超高圧力で一点に叩き込めば、結界は自壊し、共鳴崩壊を起こします」

「逆位相の魔力……つまり、毒をもって毒を制すように、壁の力を利用して壁をぶち抜くというわけか」

 猿(トックス)がポンッと手を叩く。

「いかにも。そして、その超高圧力の魔力を一点に撃ち込むための『鍵』は、すでに五郎左殿が鍛え上げてくださっています」

 ルーギスがそう言うと、ドワーフの五郎左(ダン)が、ニカッと白い歯を見せて笑った。

「おうよ! 御館様のアイデアと、佐吉・金柑の両軍師の設計図。俺の持てるすべての技術を注ぎ込んで、バカでかい『筒』を三門、造り上げといたぜ!」

 武功派、文治派、技術開発、そして元敵国の軍師。

 かつては互いに反目し合っていた者たちの才能が、信長という強烈な太陽の下で完全に噛み合い、恐るべき化学反応を起こしていた。

 信長は満足げに深く頷き、全軍に号令を下した。

「時は満ちた。ただちに全軍出陣! 帝国の思い上がった旧き神の首を、俺たちの新たな理で捻り潰してやるわ!」

     * * *

 帝都ルミナ。

 その巨大な城壁のさらに外側を、眩いばかりの光のドーム『絶対防壁(アイギス)』が覆っていた。

 大聖堂のバルコニーから、教皇アレクサンドルは冷笑を浮かべて眼下の平原を見下ろしていた。そこには、砂埃を上げて進軍してきた尾張の軍勢――人間と獣人、オークが入り混じった異形の軍団が布陣している。

「フン。無能なヴァンガードは遅れを取ったようだが、所詮は野蛮な獣の群れよ。神の加護たる絶対防壁の前には、奴らの筒とやらもただの棒切れに過ぎん。結界に張り付いたところを、上空からの神聖魔法で焼き払ってくれるわ」

 教皇が勝利を確信した、その時。

 尾張軍の最前列が左右に割れ、そこから重い地響きと共に『何か』が進み出てきた。

 それは、数十匹のオークたちが極太の鎖で引き摺る、巨大な車輪のついた鉄の塊だった。

 全長五メートルに及ぶ、黒光りする極太の鋼鉄の筒。

「……なんだ、あの大掛かりな鉄屑は? 破城槌のつもりか?」

 教皇が眉をひそめた。

 陣形の中心で、信長が右手を高く掲げる。

 その傍らで、ルーギスが魔導通信機を手にし、冷静かつ冷徹な声で指示を飛ばした。

『全砲門、展開。術式固定。魔力波長、第七階梯へ調整』

 三門の『魔導大筒(キャノン)』の背後に、佐吉によって厳選された高位の魔法使い(元帝国兵やエルフたち)が陣取る。彼らが大筒の基部に手を触れると、筒の表面に刻まれた複雑怪奇なミスリルの螺旋陣が、太陽のように眩い青白い光を放ち始めた。

「佐吉、魔力装填率は?」

「百二十パーセント。いつでもいけます、御館様」

 信長は、遥か彼方の教皇のバルコニーを真っ直ぐに見据え、振り上げていた右手を勢いよく振り下ろした。

「撃てぇぇぇッ!!!」

 ――ズドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!

 天地を裏返すような大轟音。

 三門の魔導大筒から射出されたのは、もはや弾丸というより、超高密度に圧縮された『光の奔流』であった。

 そのすさまじい反動で、巨大な大筒を支えていた地面がすり鉢状に陥没する。

 三筋の極太の光線が、空気をプラズマ化させながら一直線に飛び、帝都を覆う『絶対防壁』に激突した。

「無駄だ! 神の盾は――」

 教皇が叫ぼうとした次の瞬間。

 ピキッ、と。

 絶対に砕けないはずの光のドームの表面に、巨大な亀裂が走った。

「な、ば、馬鹿な……!?」

 ルーギスが計算し尽くした「逆位相の波長」。それが魔導大筒の圧倒的な物理圧力と融合し、結界の構造そのものを内部から食い破ったのだ。

 パァァァンッ!!という甲高いガラスの割れるような音と共に、帝都を数百年守り続けてきた絶対防壁が、細かい光の粒子となって霧散した。

「結界が……神の加護が、消えた……?」

 帝都の城壁を守っていた帝国兵たちが、絶望に武器を取り落とす。

『――八咫烏、潜入成功。動力源の国宝「天使の心臓」を制圧、無力化しました』

 信長の耳元で、すでに帝都の地下深くに潜り込んでいた蘭丸からの念話が響いた。

 すべては、信長の描いた盤面の通り。

「さあ、狩りの時間だ」

 信長が不敵に笑うと同時に、尾張の全軍が雄叫びを上げた。

「ヒャッハー! 一番槍は俺たち狼の群れがもらうぜェ!」

「退け又左! 城門を叩き割るのは俺の戦斧だァ!」

 又左率いる俊敏な獣人部隊が城壁をよじ登り、権六率いる重装オーク部隊が城門を物理的に粉砕する。

 魔法の加護を失い、さらに前線指揮官を失っていた帝国兵に、抗う術はなかった。

 近代化された軍事力と、圧倒的な暴力の蹂躙。

 わずか半日にして、帝都ルミナの大聖堂は尾張軍の軍靴によって踏みにじられた。

     * * *

 火の手が上がる大聖堂の最奥。

 ステンドグラスが砕け散った玉座の前に、教皇アレクサンドルは力なくへたり込んでいた。

 彼の前に立つのは、魔力火縄の硝煙を燻らせる織田信長と、その横に静かに付き従うハイエルフの軍師、ルーギス。

「……き、貴様ぁ……神への裏切り者め! 悪魔に魂を売ったのか、ルーギス!」

 教皇の血を吐くような罵倒に、ルーギスは哀れみすら浮かばない冷たい視線を下ろした。

「悪魔、ですか。違いますよ、教皇猊下。私が選んだのは、神の不条理よりも、人の理(ことわり)を愛する真の王です。……あなたの狂信が、この帝国を滅ぼしたのです」

「言い訳など聞く耳持たん」

 信長は無造作に歩み寄り、教皇の頭を鷲掴みにすると、そのまま大理石の床に力任せに叩きつけた。

「がはッ……!」

「神がどうした。奇跡がどうした。俺の前で、目に見えぬものを理由に敗北を語るな」

 信長は、玉座にどっしりと腰を下ろし、眼下に広がる燃え盛る帝都――いや、自身の手によって完全に制圧された新しい世界を見下ろした。

「ルミナ神聖帝国は、今日この日をもって滅亡した! 北の豊かな大地と魔石鉱脈は、すべて俺の領地、大日本(オオヤマト)のものとなる!」

 蘭丸、猿、又左、権六、佐吉、五郎左、そして金柑。

 最強の家臣団が、主君の玉座の前に集結し、一斉に深く跪く。

「天下布武の道は半ばぞ! 次は東の獣人連邦カイザー、そして大陸のすべてを飲み込む! 俺の覇業に、終わりはない!」

 異世界に転生した第六天魔王は、過去の因縁を完璧な勝利へと昇華させ、最強の国造りへ向けてさらに苛烈なる咆哮を上げるのであった。


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