第77話:絶対確率の裁定者(ラプラス)と、究極の『インサイダー取引(物理)』
第77話:絶対確率の裁定者と、究極の『インサイダー取引(物理)』
すべての生命が闘争と下剋上を宿命づけられた狂暴なる新世界――【真・戦国宇宙】。
第六天魔王・織田信長が率いる大日本・多元宇宙商会の大艦隊は、無限進化の暴食女王カルマを『完全子会社(バイオ食品工場)』として吸収し、さらにその莫大な資産(領地)を拡大しながら星海を爆走していた。
「へっへへへ! 第一工場のサプリメント生産、フル稼働でさァ! キメラ社員どもの疲労回復速度が跳ね上がって、24時間365日のカチコミ(営業)が可能になりやしたぜ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、黄金に輝く栄養剤を齧りながら、猛烈な勢いでソロバンを弾く。
「ガハハハハ! 食っても食っても力が湧いてきやがる! さあ、次の獲物はどこだァ!」
オークの猛将・権六が、有り余るエネルギーを持て余し、甲板で超絶・次元晶戦斧を素振りして空間に亀裂を走らせていた。
新宇宙の過酷な環境すらも完全に「自社のインフラ」として適応しつつある大日本軍。
だが、その進軍の先に、これまでとは全く異なる性質の『異常空間』が立ちはだかった。
『――ピーッ! 前方第7セクターに、異常な「演算領域」を検知! ……対象宙域の【確率のブレ(ランダム性)】が、完全に『ゼロ』に固定されています!』
戦略室の佐吉が、魔導盤のスクリーンに流れる異常な数式を見て声を上げた。
「確率がゼロだと?」
黄金の玉座で葉巻を咥えていた信長が、面白そうに目を細める。
「はい! 我々のいる宇宙は常に『不確定性』に満ちていますが、あの宙域だけは違います。すべての事象、原子の動き一つに至るまでが、完璧な『計算通り』にしか動きません。……まるで、宇宙規模の【イカサマ・カジノ】です!」
絶対確率の裁定者
大艦隊がその宙域に足を踏み入れた瞬間。
眼前の空間が巨大な「ルーレット」のように回転し始め、その中心から、無数のサイコロと数式で構成された幾何学的な魔人――【絶対確率の裁定者ラプラス】が姿を現した。
『……予測完了。大日本・多元宇宙商会ノ到達時刻、誤差ゼロ。……歓迎シヨウ、未開ノ覇王ドモ』
ラプラスの放つ声は、感情を持たない完全な機械音声でありながら、相手の運命を完全に見下しているかのような絶対的な響きを持っていた。
『我ハ、ラプラス。コノ宇宙ノ全テノ「運命」ヲ計算シ、決定スル者。……既ニ計算ハ弾キ出サレテイル。貴様ラガ我ニ敗北シ、全資産ヲ没収サレル確率ハ【100%】ダ』
「ヒィィッ! 戦う前から負けが確定してるってのかィ!? なんだそのふざけた計算は!」
猿がソロバンを抱えて震え上がる。
「オラァッ! サイコロ野郎が! 俺の斧でテメェの確率ごと叩き割ってやらァ!」
権六が吠え、天主の甲板から跳躍。空間を両断する全力の斬撃をラプラスの頭上へと振り下ろした。
だが。
カキィィィンッ……!!
権六の斧がラプラスに命中する直前、宙域を漂っていた「極小のデブリ(宇宙ゴミ)」が、あり得ない軌道でピンポイントに斧の刃と激突。そのわずかな衝撃で斧の軌道が逸れ、斬撃はラプラスの頬を掠めることすらなく空を切った。
「な、なんだとォ!?」
権六が驚愕に目を見開く。
「オヤジの狙いが外れるなんてあり得ねェ! 俺の雷撃ならどうだァ!」
又左が超光速次元エンジンを直結させた槍で、回避不能のプラズマ雷撃を全方位から叩き込む。
しかし、雷撃が命中するコンマ一秒前、突如として空間に『原因不明の磁気嵐』が発生し、すべてのプラズマが明後日の方向へと誘導されてしまった。
『……無駄ダ。貴様ラノ攻撃ガ我ニ命中スル確率ハ【0%】ニ設定サレテイル。偶然ダロウガ奇跡ダロウガ、我ガ計算シタ「絶対運命」ヲ覆スコトハデキナイ』
ラプラスが、サイコロの腕を掲げる。
『逆ニ、我ノ攻撃ガ貴様ラノ急所ヲ貫ク確率ハ【100%】ダ』
ズバァァァァンッ!!
ラプラスが適当に放った一本の光線が、あり得ないほどの空間反射を繰り返し、大日本の旗艦のシールドの「計算上の絶対死角(0.0001%の隙間)」を正確にすり抜け、動力炉の直前で爆発を起こした。
「ぐわぁぁぁッ!?」
旗艦が大きく揺れ、キメラ社員たちが甲板を転げ回る。
過去のデータと、創業者の『エゴ』
「……恐るべき能力ですね。相手の攻撃を無効化するのではなく、宇宙の因果律そのものを『ハッキング』して、自分に都合の良い結果(確率)だけを引き当てている」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を構えて冷や汗を流す。
「いかに圧倒的な火力があろうと、『当たらない』運命にされてしまっては、どうしようもありませんわ」
『……理解シタカ。貴様ラノ火力モ、カオスモ、過去ノデータカラ全テ予測可能ダ。……サア、倒産ノ時間ダ』
ラプラスが、大日本商会全体を飲み込むほどの「絶対命中(100%)メテオ・ストライク」を上空に展開し始めた。
だが。
絶体絶命の盤面にあって、黄金の玉座に座る織田信長だけは、最高に愉快そうに葉巻の煙を吐き出していた。
「……ククッ。ハハハハハハ!」
「御館様?」
蘭丸が振り返る。
「イカサマ・カジノだの、絶対命中だの……。てめェ、随分とスケールのちんけな商売をしてやがるな」
信長は、玉座から立ち上がり、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担いでラプラスを真っ直ぐに睨み据えた。
「確率だの予測だのってのはな、結局のところ『過去のデータ』の寄せ集めに過ぎねェんだよ」
『……ナニ?』
「過去に起きたことだけを繋ぎ合わせて、『だから未来もこうなる』と決めつける。それはただの臆病者の【安全牌】だ」
信長は、一歩前に踏み出し、漆黒の覇王色を爆発的に噴出させた。
「真の創業者ってのはな、データにも歴史にも存在しねェ【予測不能の野心】で、確率そのものをぶち壊すんだよ!!」
究極のインサイダー取引(物理)
「佐吉! 五郎左! 俺の火縄銃に、アザトスの無限エネルギー(混沌)を限界突破までブチ込め!」
「了解しました! すべての因果律を破壊する、純度一万パーセントのカオス・エネルギー、接続します!」
「おうよォッ! 確率ごとブッ壊してやりなァ!」
信長の火縄銃が、これまで大宇宙の誰も観測したことのない、規格外の【黄金と極彩色の狂気】でパンパンに膨れ上がる。
『……無駄ダ! ソレガドレホド強大ナ力デアロウト、我ノ計算式デハ「命中確率0%」……!!』
「なら、その計算式の盤面ごと、俺の金で【買い占めて】やる!!」
信長が引き金を引いた。
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
放たれたのは、ただの破壊光線ではない。
それは、大日本商会の無限の資本力を用いて、相手の「確率システム」の裏側に強引に介入し、オッズそのものを強制的に書き換える【超・インサイダー取引(物理)覇王弾】であった。
信長の放った弾丸は、ラプラスが展開した「回避の因果律」を、札束の暴力で強引に買収しながら直進する。
極小のデブリが立ち塞がれば「黄金の永楽銭」に変換して貫き、空間の歪みが生じれば「札束で舗装」して真っ直ぐに進む。
『バ、バカナ……!? 我ガ定メタ絶対確率ガ……過去ノデータニ存在シナイ「理不尽ナ資本力」ニヨッテ、強制テキニ【命中率100%】ニ書キ換エラレテイクゥゥゥッ!?』
「勝率が決まってるギャンブルなんざ、ただの作業だ。……てめェのつまらんカジノは、今日から俺の会社の【経理部】だ!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
黄金のインサイダー覇王弾が、ラプラスの中枢を完全に打ち抜いた。
因果律を操る計算式が内側から崩壊し、ラプラスの幾何学的な巨体は、一瞬にして黄金に輝く巨大な『スーパーコンピューター(大日本商会・特製ルーレット)』へと強制再構築されてしまった。
リスク管理部門の設立
「ガハハハハ! やりやがった! 運命を操るバケモノが、ただの『デカい計算機』になっちまったぜェ!」
権六が、黄金のルーレットの前で戦斧を打ち鳴らす。
「へっへへへ! 御館様! こいつはとんでもねェお宝でさァ! この計算機を使えば、今後のカチコミの成功確率を常に『100%』に調整し続けることができやすぜ! 大日本商会【絶対リスク管理部門】の誕生です!」
猿が、計算機から吐き出される「必勝の株価チャート」の束を抱きしめて号泣する。
「……フゥ。確率に逃げ込むような奴は、優秀な『計算係』がお似合いだ」
信長は、火縄銃の硝煙を払い、新たに手に入れた巨大なインフラ(カジノ)を満足げに見下ろした。
「御館様、お見事にございます」
蘭丸が、絶対の忠誠を示すように深く平伏する。
「物理、進化、そして確率……。この真・戦国宇宙で産声を上げた神を超える覇王候補たちすらも、御館様の前ではただの『優秀な人材』に過ぎませんね」
「ああ。だが、この狂暴な宇宙の中心には、こんな小手先の連中とは格が違う『本命のバケモノ』が必ず潜んでいるはずだ」
信長は、玉座に座り直し、黄金と漆黒が渦巻く新宇宙の最深部を鋭く睨み据えた。
「俺たちが創り出した最高の戦国乱世だ。……最後までしゃぶり尽くして、すべてのバケモノに大日本商会の【社章(烙印)】を刻み込んでやるぞ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
因果律すらも「インサイダー取引(物理)」で買収し、自社のシステムに組み込んだ第六天魔王。
未知なる最強の敵たちを相手にした大宇宙規模の「究極の陣取り合戦」は、全100話の完結へ向けて、さらなる理不尽と熱狂の渦へと加速していくのであった。
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