第76話:超速進化の暴食女王と、遺伝子情報の『強制買収(DNA・M&A)』
第76話:超速進化の暴食女王と、遺伝子情報の『強制買収(DNA・M&A)』
第六天魔王・織田信長が引き起こした第二のビッグバンによって誕生した、壮麗にして狂暴なる新世界――【真・戦国宇宙】。
すべてが「闘争と野心」を前提にデザインされたこの大宇宙では、誕生したばかりの星々が互いの重力と熱量を喰らい合い、神すら凌駕する未知のバケモノ(覇王候補)たちが次々と産声を上げていた。
大日本・多元宇宙商会の大艦隊は、第一号の敵であった『原初巨神パンゲア』を粉砕し、その残骸から生成された超次元鉱脈を第一号店(領地)として確保。次なる獲物を求めて、荒れ狂う星海を猛進していた。
「へっへへへ! 御館様! パンゲアの跡地に建造した採掘プラント、絶好調でさァ! この新宇宙、どこを掘っても極上のエネルギーが湧いてきやすぜ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、黄金の天主のバルコニーで、ソロバンを弾きながらホクホク顔で報告する。
「ガハハハハ! 領地を広げりゃ広げた分だけ儲かる! まさに戦国時代の国獲り合戦(陣取りゲーム)そのものだな!」
オークの猛将・権六が、超絶・次元晶戦斧を磨きながら豪快に笑う。
「……ですが、御館様。この新宇宙の『同業者』たちも、大人しく領地を明け渡してくれる気はないようです」
戦略室の佐吉が、魔導盤のスクリーンに新たな警告サインを映し出し、眼鏡を光らせた。
「前方第3セクターの星域が、猛烈な勢いで『消滅』しています。ブラックホールでも超新星爆発でもありません。何者かが、星々を物理的に【捕食】し、急激に陣地を拡大しています!」
無限進化群生
「捕食だと?」
黄金の玉座に座る信長は、愛用の『魔力火縄銃』の手入れを止め、ニヤリと笑った。
「面白い。食い意地の張った害虫駆除といこうじゃねェか。全艦隊、前進しろ!」
大日本艦隊が空間跳躍を駆使して現場宙域に到達すると、そこには戦慄の光景が広がっていた。
数万の銀河が、赤黒く脈打つ「巨大な肉塊と触手の網」によって覆い尽くされ、星のエネルギーをジュルジュルと音を立てて啜り上げられていたのだ。
『……キチチチチ……新シイ、エサ……。美味ソウナ、エネルギー……』
赤黒い肉塊の海から、無数の節足と甲殻を持つ、星雲サイズの巨大な女帝――【進化の暴食女王カルマ】が上半身をもたげた。
彼女が率いるのは、新宇宙の「生存競争」というルールの中で、極限まで捕食と進化に特化して誕生した【無限進化群生】であった。
「ヒィィッ! 今度は宇宙サイズの虫のバケモノですかィ!? 気色悪ィ!」
猿が毛を逆立てて悲鳴を上げる。
「オラァッ! 虫ケラなんざ、潰してミンチにしてやらァ!」
権六が、迷うことなく跳躍し、カルマの巨大な頭部めがけて戦斧をフルスイングした。
空間を断ち切る赤黒い斬撃が、暴食女王の甲殻に直撃する。
ガキィィィィンッ!!!
だが、甲殻が割れることはなかった。斬撃が触れた瞬間、カルマの甲殻が瞬時に「次元晶の硬度を上回る超・反発素材」へと【進化】したのだ。
『……キチチ。物理打撃、学習完了。耐性獲得。……無駄デス。私タチハ、攻撃サレル度ニソレヲ取リ込ミ、最強ノ形態ヘト「進化」スル』
カルマが嘲笑うかのように触手を揺らす。
「なら、こいつはどうだ!」
又左と虎が、超光速で背後に回り込み、数億ボルトのプラズマ雷撃を叩き込む。
しかし、雷撃が命中した瞬間、カルマの身体から無数の「避雷針型の触手」が生え、エネルギーをすべて地絡させて無効化してしまった。
『……雷撃、熱量攻撃、学習完了。耐性獲得。私ハコノ宇宙ノ最高傑作。全テヲ喰ライ、全テニ適応スル絶対捕食者デス』
劇薬と呪いの無効化
「……なるほど。相手の攻撃を受けて、リアルタイムで遺伝子を書き換える『超速進化』ですか。実に理にかなった生存戦略です」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を構えて感心したようにつぶやく。
「ですが、生物である以上、病と毒からは逃れられませんよ」
軍師の官兵衛と、南の【腐海魔帝ベルゼビュート】が前に出た。
「極上のウイルスをプレゼントしましょう。お前の遺伝子そのものをドロドロに腐らせる【絶対崩壊の劇毒】です!」
ベルゼビュートが放った紫色の極大の毒の雲が、カルマの巨体を包み込む。
ジュウウウウッ……! と音を立てて甲殻が溶け始めるが、それも数秒のことであった。
『……遺伝子崩壊ウイルス、学習完了。抗体生成完了。……逆ニ、毒ヲ栄養トシテ吸収シマス』
カルマの身体が紫色に発光し、溶けた甲殻が前よりも分厚く、禍々しい姿となって再生した。
物理も魔力も毒も通じない。攻撃すればするほど、相手のシステム(進化)を助長してしまうという絶望的なサイクル。
「チィッ! なんてタチの悪ィ連中だ! これじゃあ攻撃のしようがねェぜ!」
権六が戦斧を構え直し、忌々しげに舌打ちをする。
魔王の市場論
『……キチチチ。理解シマシタカ? 貴方タチノ「資産」ハ、全テ私ノ進化ノタメノ「エサ」ニ過ギナイ。……サア、私ノ一部ニナリナサイ』
カルマが、無数の触手を大艦隊へ向けて伸ばし、一気に飲み込もうとしたその時。
「……フハハハハ!」
黄金の玉座から、織田信長の腹の底からの高笑いが響き渡った。
「御館様?」
蘭丸が振り返る。信長は、マントを翻してゆっくりとバルコニーの先端に立ち、眼下に迫る無数の触手を面白そうに見下ろしていた。
「進化、だと? 環境に適応して耐性を得るのが、お前らの言う『最高傑作』か?」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、鼻で笑った。
「笑わせるな、虫ケラ。相手の攻撃に合わせて耐性を作るなんざ、ただの『後追い(トレンド・フォロー)』じゃねェか」
『……ナニ……?』
カルマの触手が、魔王の放つ異常な覇気に気圧され、ピタリと動きを止める。
「他社の出した新商品(攻撃)を見てから対策を練るような会社は、永遠に市場のトップには立てねェんだよ」
信長は、火縄銃の銃口をカルマの巨大な顔面へと真っ直ぐに向けた。
「真の覇者ってのはな、環境に適応するんじゃねェ。……てめェのエゴで、環境そのものを創り出すんだよ!!」
遺伝子の敵対的買収(DNA・M&A)
「佐吉! 五郎左! 俺の火縄銃に、大日本商会の『企業買収プログラム』を限界までロードしろ!」
「了解しました! アザトス・ボイラーの資本エネルギー、120%充填!」
「おうよォ! ブチカマしてやりな、御館様ァ!」
信長の火縄銃が、黄金の資本エネルギーと漆黒の覇王色でパンパンに膨れ上がる。
相手は無限に進化を繰り返す遺伝子の集合体。ならば、その遺伝子情報を破壊するのではなく、根こそぎ『大日本のモノ』として書き換えてしまえばいい。
「耐性を作ってみろ、虫ケラ。俺が今からブチ込むのは、物理攻撃でも毒でもねェ。てめェの存在証明(設計図)に対する【強制買収提案(TOB)】だ!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれたのは、大宇宙のすべての価値を永楽銭に変換する究極の【遺伝子・強制買収覇王弾(DNA・M&Aバレット)】。
漆黒と黄金の極太のレーザーが、カルマの防御甲殻を「ただの紙切れ(契約書)」のようにすり抜け、その中枢へとダイレクトに突き刺さった。
『ガ、アァァァァァァァァァッ!? ナ、ナニ……!? 私ノ……私ノ設計図(DNA)ガ……書キ換エラレテイクゥゥゥッ!?』
カルマの超速進化システムが、猛烈なエラーを吐き出して暴走を始める。
彼女の遺伝子情報の中に、大日本商会の『新・永楽銭』のデータと、織田信長への「絶対忠誠(雇用契約)」が、ウイルスよりも速い速度で強制的に組み込まれていく。
『……エラー。適応不能。耐性獲得不能。……私ハ……私ハ……大日本・多元宇宙商会……【バイオ食品生産部門・第一工場長】デス……!』
ピキィィィィンッ!!!
断末魔の叫びと共に、星雲サイズの巨大な虫の化け物と、それに連なる無数の群生たちは、瞬く間に全身を黄金色に染め上げられ、完全に「大日本商会の自動生産プラント(子会社)」へとその姿を変貌させてしまった。
次なる開拓へ
「ガハハハハ! やりやがった! 無限に進化するバケモノが、まるごと俺たちの『自社工場』になっちまったぜェ!」
権六が、黄金に輝く巨大なバイオプラントを見上げて大笑いする。
「へっへへへ! こいつはスゲェや! この工場、敵のエネルギーを吸収して勝手に『超・高栄養サプリメント』を無限生産し続けてやすぜ! 社員食堂のメニューがさらに豪華になりまさァ!」
猿が、ベルトコンベアから流れてくる黄金のサプリメントをかじりながら狂喜する。
「……フゥ。環境に適応するだけのデカブツなど、優秀な『下請け工場』がお似合いだ」
信長は、火縄銃の硝煙を吹き消し、新たに獲得した領地(工場)を満足げに見下ろした。
「御館様、お見事にございます」
蘭丸が深く平伏する。
「これで、新宇宙における二つ目の巨大なシノギを完全に制圧いたしました」
「ああ。だが、まだまだこんなもんじゃねェはずだ」
信長は、玉座に深く腰掛け、果てしなく広がる『真・戦国宇宙』の深淵を鋭く睨み据えた。
「この狂暴な宇宙には、俺の天下布武に相応しい、もっとイカれた野心を持った『覇王候補』がウジャウジャ隠れている。……さあ、全艦隊前進だ! 次のバケモノのドタマをカチ割って、この宇宙を大日本の黄金で埋め尽くしてやるぞ!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
進化の極致すらも「敵対的買収」で自社工場へと変えてしまった第六天魔王。
自ら創り出した究極のバトルロイヤル宇宙を舞台に、大日本・多元宇宙商会の「常軌を逸した領地開拓」は、全100話の完結へ向けてさらなる極上のインフレ・デスマッチへと突き進んでいくのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




