第74話:完全独占(モノポリー)の退屈と、『真・戦国宇宙(カオス・ユニバース)』の創造
第74話:完全独占の退屈と、『真・戦国宇宙』の創造
すべての宇宙を金融商品として扱う究極の経済特区――【多次元ビジネス・センター】。
超次元統括企業のCEOアダムが変貌した「恐慌の獣」は、第六天魔王・織田信長が発布した『超次元・覇王徳政令』によってすべての負債をゼロにされ、莫大な純資産だけを残して完全に消滅した。
空からは、純度一万パーセントの『新・永楽銭』が黄金の雨となって降り注ぎ、ビジネス・センターの摩天楼群をキラキラと覆い尽くしていく。
ここに、大日本・多元宇宙商会を脅かす競合企業は、大宇宙のどこにも存在しなくなった。名実ともに、大日本商会が全次元の【完全独占】を達成した瞬間であった。
「ガハハハハ! 拾え拾えェ! 空から降ってくるボーナスを残らず回収しろ!」
オークの猛将・権六が、巨大な麻袋を振り回して永楽銭をかき集めている。
「へっへへへ! 御館様! 多次元市場の全口座、全特許、全インフラ、すべて我が社のシステムへ移管完了でさァ! もはや大日本商会の総資産は、数字という概念では表現できない【絶対無限】の領域に達しやしたぜ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、札束の山の上でソロバンを掲げて号泣している。
狂獣特攻隊も、腐海医療部隊も、機鋼重工部隊も、すべての社員(キメラ軍団)が勝利の美酒に酔いしれ、歓喜の雄叫びを上げていた。
だが。
多次元ビジネス・センターのど真ん中にそびえ立つ『大日本商会・超次元タワー』の最上階。黄金の天主のバルコニーからその光景を見下ろしていた信長の顔には、早々に「退屈」の色が浮かんでいた。
「……フワァ。終わってみれば、呆気ないものだな」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を壁に立てかけ、大きな欠伸をした。
安定という名の『死』
「御館様、お疲れ様にございます」
戦略室の佐吉が、分厚いホログラムの資料を抱えて恭しく頭を下げた。
「これより、全次元の『安定的な管理と経営』フェーズへと移行します。神々が管理していたメタバース、アウトサイドの資源地帯、そしてこのビジネス・センターを統合し、永遠に利益を生み出し続ける完璧なシステムの構築案を――」
「却下だ」
信長は、佐吉の資料を一瞥もせずに冷たく言い放った。
「え……?」
佐吉が眼鏡をズレ落とす。
「安定だと? 完璧なシステムだと?」
信長は、玉座に深く腰掛け、足を組みながら鼻で笑った。
「そんなものは、俺がぶっ殺してきた神様どもや、スーツを着た経営者どもがやっていたことと同じだろうが。すべてが計算通りに動き、誰も逆らわず、ただ利益だけが積み上がっていく。……そんな退屈な箱庭(会社)、死んでいるのと同じだ」
信長の言葉に、バルコニーに集まっていた武将たち――権六、又左、虎、蘭丸たちが、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。
「その通りだぜェ、御館様! 殴り合う相手がいねェ平和なんて、酒の味が薄まってしょうがねェ!」
権六が戦斧を打ち鳴らす。
「ウフフ……。現状維持は衰退の始まり。大日本商会は、常に『進化』し続けなければならないブラック企業でしたわね」
南の極地で買収された【腐海魔帝ベルゼビュート】が、扇子で口元を隠して妖しく笑う。
「……では、御館様。この完全独占した大宇宙を、どうされるおつもりですか?」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、美しい顔に期待の念を込めて尋ねた。
新事業計画『真・戦国宇宙』
「決まっているだろう。敵がいないなら、俺たちの手で【最高の敵と戦場】を一から創り出せばいい」
信長は、懐から『原初の設計者のマスターキー』を取り出し、宙に放り投げた。
「佐吉! 五郎左! クリオロス! すべての宇宙を戦艦にしていたシステムを解除しろ。メタバースの宇宙群、アウトサイドの狂気の泥、そしてこの多次元ビジネス・センターの超次元摩天楼……俺たちが手に入れた『すべての資産(素材)』を、一つの巨大なミキサー(概念融合炉)にブチ込め!」
「な、なんだってェ!?」
ドワーフの鍛冶長・五郎左が目ん玉を飛び出させる。
「御館様! そんなもん全部混ぜ合わせたら、物理法則も時間も空間もメチャクチャになっちまうぜェ!?」
「だからいいんだろうが!」
信長は、極悪な笑みを深めて立ち上がった。
「平和で安全な箱庭はもう飽きた。俺が創るのは、すべての生命が野心を燃やし、下剋上を狙い、永遠に進化と闘争を繰り返す【真・戦国宇宙】だ! そこでは神も悪魔も、狂気も資本も、すべてが等しく『俺の首(玉座)』を狙うために存在する!」
信長の常軌を逸した「大宇宙リセット&カオス化計画」に、佐吉は震える手で魔導盤を叩き始めた。
「りょ、了解しました……! アザトスの永久機関を暴走させ、全次元の質量と概念を一点に極限圧縮します! これは……意図的に【第二のビッグバン】を引き起こすということです!」
第ニのビッグバン(創業祭)
「ガハハハハ! 新しい宇宙を創る大工仕事か! 燃えてきやがったぜェ!」
五郎左が特大のスパナを振り回し、全宇宙艦隊の接続を解除、すべてを一箇所に集める作業(物理)を猛スピードで開始する。
「へっへへへ! 既存の市場を全部ぶっ壊して、まったく新しい『超・巨大市場』を立ち上げるってわけでさァ! これぞ究極の新規事業ですぜ!」
猿が、ソロバンを弾きながら狂喜乱舞する。
大日本商会のインフラと資本力、そして四大帝国のキメラ軍団の莫大なエネルギーが、信長の足元に構築された『超絶・次元融合炉』へと次々と注ぎ込まれていく。
神々が創った秩序ある宇宙群も、這い寄る混沌の泥も、ビジネス・センターの摩天楼も、すべてがドロドロに溶け合い、超高密度の「混沌の核」へと圧縮されていく。
「蘭丸!」
「ここにッ!」
絶対の剣・森蘭丸が、信長の傍らに跪く。
「新しい宇宙が生まれれば、そこには俺の覇気を受けた『とんでもねェ化け物ども』が次々と誕生するだろう。神すら凌駕する、未知の強者どもがな」
「……はい。我が剣は、いかなる強敵が現れようとも、御館様の御為に振るうのみにございます」
「フッ。頼もしいことだ」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を構え、限界まで圧縮され、今にも爆発しそうな「混沌の核」へと銃口を向けた。
銃には、アルファのマスターキーと、アザトスの無限エネルギーが完全に直結されている。
「さあ、全社員(家臣)ども! 退屈な平和はここで終わりだ! 永遠に終わらない極上の戦国乱世を、俺たちの手で開幕させるぞ!」
信長は、全身から全次元を焦がすほどの『覇王色』を放ちながら、引き金を引いた。
「大日本・多元宇宙商会、新規事業立ち上げ! ……【真・天下布武ビッグバン】!!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長の放った究極の一撃が、混沌の核を打ち抜き、限界を超えたエネルギーが全方位に向けて爆発的に解放された。
それは、古い大宇宙の終わりであり、全く新しい、常識を遥かに超越したスケールの『真・戦国宇宙』の誕生であった。
新たなる神話の幕開け
爆発の閃光が収まると、そこにはかつての無機質な純白の空間も、極彩色の泥沼も存在しなかった。
ただ果てしなく広がる、黄金と漆黒が入り混じった壮麗にして狂暴な星海。
無数の星々が、誕生した瞬間から凄まじいエネルギーを放ち、互いに喰らい合い、進化しようと蠢いている。
「……ガハハハハ! すげェ! 空気がビリビリ痺れやがる! こいつは極上の戦場だぜェ!」
権六が、新しい宇宙の空気を胸いっぱいに吸い込んで咆哮する。
「フフ……。すでに、この宇宙のあちこちで、尋常ではないエネルギー反応(新規参入者)が続々と産声を上げていますよ」
金柑が、次元の彼方で生まれる「強者の気配」を感じ取り、好戦的に笑う。
「来い、新しい宇宙の覇王候補ども」
信長は、新たに構築された【真・黄金の天主(大宇宙の玉座)】に腰掛け、不敵に笑った。
「俺の玉座が欲しいなら、這い上がってこい。すべてを喰らい、すべてを従え、最後に俺の火縄銃の前に立つのは誰か……楽しませてみろ!」
既存の次元をすべて征服した魔王は、自らの退屈を紛らわせるためだけに、全次元を『究極のバトルロイヤル宇宙』へと作り変えてしまった。
全100話の完結へ向けて、第六天魔王の覇道は、彼自身がデザインした「未知の超常存在たち」との、大宇宙を揺るがす真の神話大戦へと突入していくのであった。
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