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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第72話:CEOアダムの『市場調整』と、究極の非公開化(MBO)

第72話:CEOアダムの『市場調整』と、究極の非公開化(MBO)

 すべての宇宙を金融商品として取引する究極の経済特区――【多次元ビジネス・センター】。

 その頂点にそびえ立つ超次元統括企業コズミック・シンジケートの本社ビル最上階。分厚い次元合金で閉ざされた「社長室」の巨大な扉が、極大の漆黒の斬撃によって紙切れのように消し飛ばされた。

「オラァッ! アポ無し訪問だぜェ! ドタマかち割られに顔を出しな、社長サンよォ!」

 オークの猛将・権六ゴルグが、吹き飛んだ扉の残骸を踏み越え、真っ先に足を踏み入れる。

 それに続き、大日本・多元宇宙商会・代表取締役の第六天魔王・織田信長と、最強の家臣団が堂々と社長室へとカチ込んだ。

 しかし。

 踏み込んだ彼らの眼前に広がっていたのは、豪華絢爛なオフィスでも、神々しい玉座でもなかった。

 そこは、上下左右の感覚すら狂う【完全なる純白の虚無空間】。

 そして、その果てしなく広がる純白の中央に、ただ一つ「マホガニー材のシンプルな役員デスク」がポツンと置かれていた。

 デスクの奥の革張りの椅子に座っているのは、目も鼻も口もない、のっぺらぼうの純白のヒューマノイド。

 彼こそが、この多次元市場を絶対的に支配する【『見えざる手』アダム】――超次元統括企業の最高経営責任者(CEO)であった。

『……ようこそ、下等なバグ(起業家)ども。我がコズミック・シンジケートの頂へ』

 アダムが声を発した瞬間、純白の空間に「ピリッ」と、大日本の武将たちの肌を刺すような極寒のプレッシャーが走った。

「ヒィィッ……! な、なんだこの部屋! 金目のものがデスクしかねェじゃねェか!」

 大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、ソロバンを抱きしめて震える。

 神の役員マモンのような黄金の威圧感はない。ただ「すべてを計算式として処理する」という、底知れぬ冷酷さがそこにはあった。

「フン。大層なビルのてっぺんに引きこもって、随分と殺風景な部屋じゃねェか」

 信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、悠然とアダムのデスクへと歩み寄る。

「てめェが多次元ビジネス・センターの親玉だな。挨拶状ポイズンピルの返礼に来てやったぞ」

市場調整マーケット・コレクションと上場廃止

『……大日本・多元宇宙商会。貴社は市場のルールを無視し、過剰なエネルギー(アザトス)を独占した。それは多次元経済における「悪性のインフレーション」を引き起こす』

 アダムは、純白の指を顔の前で組み、無感情に宣告した。

『我々シンジケートの目的は、市場の「完全なる均衡」を保つこと。乱れた相場は、我が手によって正されねばならない。……これより、貴社に対する【絶対的・市場調整マーケット・コレクション】を実行する』

 アダムが指をパチンと鳴らした瞬間。

 信長たちの足元の純白の空間が、突如として【真っ赤な株価チャートの暴落グラフ】へと変貌した。

 足場が崩れ落ちるような感覚と共に、大日本の家臣たちの身体から、彼らを構成する「存在のデータ」が猛烈な勢いで吸い上げられ、空中に散華していく。

「チィッ!? 体が、体が透けてきやがる! なんだこりゃあ!」

 キールが十文字槍を床に突き立てるが、床そのものが「暴落」の波に飲まれて消えかかっている。

「御館様! 敵の攻撃は物理や魔力ではありません! 大日本商会という企業の『市場価値』を強制的にゼロに引き下げ、この多次元市場から抹消する究極のシステム……【絶対的・上場廃止デリスティング】です!」

 戦略室の佐吉イシオンが、激しく明滅する魔導盤を叩きながら絶叫する。

「上場廃止された企業データは、このビジネス・センターの空間法則によって、存在自体が無かったこと(紙屑)にされます! 我々の存在が、システムから強制消去されようとしています!」

『その通りだ。市場システムに不要と判断された企業は、例外なく消え去る運命にある。これがいかなる武力も及ばない、経済の真理だ』

 アダムが、冷酷な目で(顔には何もないが)大日本軍が消滅していくのを見下ろす。

究極の『非公開化(MBO)』

「……フハハハハ!」

 だが。

 存在が紙屑になりかけているという絶望的な状況下で、信長の腹の底からの高笑いが、純白のCEO室に響き渡った。

「市場価値がゼロになるから消えるだと? 上場廃止が怖いのは、てめェらの作った『市場ルール』に依存している雇われ社長だけだ!」

 信長は、漆黒のマントを大きく翻し、自らの足元で暴落し続ける赤いチャートのグラフを『覇王色』を纏った足で力強く踏み砕いた。

「猿! 佐吉! てめェらのつまらん市場で株を公開しているから、こんな舐めた真似をされるんだ! 今すぐ大日本商会の全株式を、俺の手元プライベートに買い戻せ!」

「ッ!? そ、そういうことでさァ!」

 猿がソロバンの玉を弾き飛ばす勢いで操作を開始する。

「御館様! まさか、この多次元ビジネス・センターの市場から、大日本商会を【非公開化(MBO:マネジメント・バイアウト)】するおつもりですか!?」

 佐吉の眼鏡がカッと光る。

「了解しました! アザトスの無限エネルギーを投入し、市場に出回る我々の『存在価値(株)』を、すべて御館様の個人資産として強制買い戻しを実行します!」

『エラー。市場からの離脱(MBO)だと? そのような莫大な買い戻し資金、いかなる企業にも……!』

 アダムが初めて立ち上がった。

 だが、遅かった。大日本商会には、未踏次元で手に入れた究極の永久機関・アザトスという「無限の財布」がある。

 ズオォォォォォォォォォォッ!!!!!

 信長の全身から、極大の黄金の光(資本エネルギー)が噴出した。

 アダムが「上場廃止」にして消し去ろうとしていた大日本軍の存在データが、信長自身の莫大な資本によってすべて『買い取られ』、システムの手の届かない【魔王の私有財産】として完全に固定化されたのだ。

「ガハハハハ! 体が元に戻ったぜェ! 俺たちの命は、誰の市場にも属さねェ、御館様だけのモンだってことだァ!」

 権六が、完全な実体を取り戻して戦斧を打ち鳴らす。

「俺たちの価値は、システムじゃなくて俺たちが決めるんだよ!」

 又左マティアスが、超光速の雷撃を纏いながら槍を回す。

役員たちの粉砕と、魔王の一撃

『……バカナ。市場の絶対ルール(デリスティング)を、個人の資金力エゴで突破したというのか……!』

 アダムの純白の身体が、計算の限界を超えてバグのように明滅する。

『認めん! 市場を否定する存在など、断じて認めん! 全防衛システム起動! 【『見えざる手』・千手観音】!!』

 アダムの背後の純白の空間から、先ほど大日本タワーを打ち立てた際に粉砕したはずの「巨大な純白の手」が、今度は千本、いや万本もの数となって一斉に襲いかかってきた。

 需要と供給のバランスを強制的に押し潰す、市場の暴力の権化。

「ウフフ……手数が多ければ勝てるなんて、三流の考え方ですね」

 金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を振りかざし、超広範囲の【次元反射結界・万華鏡】を展開。襲い来る無数の手を鏡の迷宮に閉じ込めて軌道を逸らす。

「腐れ落ちなさい、市場の亡霊ども!」

 南の【腐海魔帝ベルゼビュート】と軍師の官兵衛クロードが、狂気の猛毒と呪いを結界内に充満させ、純白の手を次々とドス黒く腐らせていく。

「道は開いたぞ、蘭丸!」

「ここにッ!!」

 絶対の剣・森蘭丸が、腐れ落ちる千手の隙間を縫って一筋の白銀の閃光となる。

「我が主君の前に、遮るものなし!」

 蘭丸の『天叢雲』が、アダムの守りを固めていた最後の概念防壁を、神速の十字斬りで完全に両断した。

「チェックメイトだ、のっぺらぼう」

 防壁が裂けた瞬間、すでにアダムの眼前に織田信長が立っていた。

 信長の愛用の『魔力火縄銃』の銃口が、アダムの顔面(何もない純白の面)に深々と押し当てられる。

「市場のルールを語るなら、一番シンプルなルールを教えてやる。……俺の前に立った奴は、死ぬ。それだけだ」

 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 信長の引き金が引かれた。

 放たれた【究極・非公開化(MBO)覇王弾】は、市場の神たるアダムの頭部を完全に吹き飛ばし、その背後に広がる純白のCEO室の空間ごと、一直線に宇宙の果てまで粉砕した。

CEOの暴走ハイパーインフレ

「ガハハハハ! やったぜェ! これで超次元統括企業も、完全に俺たちのモンだァ!」

 権六が勝鬨を上げる。

 首を吹き飛ばされたアダムの身体が、マホガニーのデスクの上に崩れ落ちた。

 これで、すべての多次元市場の完全独占が完了したかに見えた。

 ……しかし。

『……ガ……ギギギ……』

 首を失ったアダムの身体から、突如として赤黒い「ノイズ」が噴出し始めた。

 崩れ落ちた身体が、デスクを、オフィスを、そして本社ビルそのものをドロドロに溶かしながら、異常な速度で「巨大化」していく。

「な、なんだァ!? 御館様、奴の死体からとんでもねェバグが溢れ出してきやすぜ!」

 猿が後ずさる。

「……御館様! アダムのシステムが完全に破壊されたことで、彼がこれまで抑え込んでいた多次元ビジネス・センター全体の『負債』と『恐慌』のデータが逆流しています! 奴は今……市場そのものを飲み込む【超・恐慌のハイパーインフレ・ビースト】へと変貌しようとしています!」

 佐吉が、完全に狂った魔導盤を放り捨てて叫んだ。

「ほう」

 信長は、崩壊し巨大化していくアダムの残骸を見上げ、最高に楽しそうに笑みを深めた。

「エリート面を剥がされりゃ、結局は泥沼のバケモノ(アウトサイド)と同じか。いいぜ、てめェの底なしの負債、俺の火縄銃で全部焦げ付かせてやる!!」

 トップを失い、完全に制御不能となった経済特区の暴走。

 全100話のクライマックスへ向けて、第六天魔王と大日本商会は、市場のすべてを飲み込もうとする「宇宙規模の大恐慌バケモノ」との、真の最終決戦ファイナル・デスマッチへと突入していくのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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