第71話:本社ビルへのカチコミと、無限防衛壁『ポイズンピル』の粉砕
第71話:本社ビルへのカチコミと、無限防衛壁『ポイズンピル』の粉砕
無数の宇宙が金融商品として取引される究極の経済特区――【多次元ビジネス・センター】。
その中央に、周囲の摩天楼を睥睨するように突如として建ち上がった黄金と漆黒の超絶建造物『大日本商会・超次元タワー』。
屋上に立つ第六天魔王・織田信長は、天空を突き抜けるほど巨大な【超次元統括企業本社ビル】へ向けて、愛刀『宗三左文字』を真っ直ぐに突きつけた。
「全軍、出社の時間だ! あのふざけた本社ビルの最上階まで一気に駆け上がり、ふんぞり返っているCEOのドタマを物理的にリストラしてこい!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
魔王の号令と共に、大日本・多元宇宙商会の最凶の社員(家臣)たちが、黄金のタワーを蹴り出して一斉に天空へと跳躍した。
無量大数のキメラ軍団が雲霞の如く湧き上がり、超次元統括企業の本社ビルを包囲するように急上昇していく。
「ヒャッハー! エリート企業の本社襲撃たァ、血が騒ぐぜェ!」
市松が大斧を振り回し、ビルの外壁である「硬質化された星雲ガラス」を叩き割りながらよじ登る。
「ガハハハハ! 警備員どもがウジャウジャ湧いてきやがったぞ! 残業代の足しにもならねェが、全部ブッ殺してやらァ!」
オークの猛将・権六が、超絶・次元晶戦斧でビルから迎撃に出てきた幾何学模様の天使たちを、空間ごと真っ二つに粉砕していく。
CFO(最高財務責任者)ヘッジの登場
大日本軍が怒涛の勢いで本社ビルの中層を突破し、上層部の『役員フロア』へと差し掛かったその時。
彼らの頭上の空間が歪み、整然と並んだ無数の防衛ゲートと共に、一人の特異な存在が姿を現した。
『――不法侵入企業、大日本・多元宇宙商会。貴社らの野蛮なM&Aは、この階で完全にストップ(取引停止)とする』
現れたのは、全身が「緑色の計算式と株価チャート」で構成された、細身のヒューマノイド。
超次元統括企業のナンバー2にして、すべての多次元金融を管理する【CFO(最高財務責任者)ヘッジ】であった。
「へっへへへ! お偉いさんの登場でさァ! 財務のトップってことは、コイツの首一つでこの特区の金庫の鍵が手に入るってことですねィ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、よだれを垂らしながらソロバンを構える。
「オラァッ! 御託はいいから道を空けろ、モヤシ野郎!」
先陣を切っていた権六が、強靭な脚力で跳躍し、CFOヘッジの脳天めがけて戦斧をフルスイングした。
しかし。
『……野蛮なバグめ。当社が何の対策も打たずに敵対的買収を許すと思ったか。……防衛プロトコル【ポイズンピル(毒薬条項)】、起動』
ヘッジが指を鳴らした瞬間。
パキィィィィンッ!!
権六の戦斧がヘッジに届く直前、空中に「半透明の防衛壁(新株)」が突如として発生し、斬撃を完全に弾き返した。
「チィッ! ただの壁か!? なら、叩き割るまでだ!」
権六が二撃目、三撃目と連続で戦斧を叩き込む。
だが、壁が割れるたびに、その破片が瞬時に「2枚、4枚、8枚、16枚……」と倍々ゲームで無限に増殖し、一瞬にして数億枚の防衛壁となって大日本軍の行く手を完全に塞いでしまった。
究極の買収防衛策
「な、なんだァ!? 壁を割れば割るほど、壁の数が増えやがる!」
雷神の如き速度で突っ込んだ又左の槍も、無限に増殖する壁の前に威力を削がれ(希薄化され)、弾き返されてしまう。
「御館様! これは物理的な壁ではありません! 敵対的買収を検知した瞬間に、自動で自社の防衛権(株式)を無限に発行・増殖させるシステム……究極の買収防衛策【ポイズンピル】です!」
戦略室の佐吉が、魔導盤の異常な数値を睨みつけながら叫んだ。
「我々が攻撃を加え、彼らの資産(壁)を破壊しようとするたびに、彼らはその損失を補うために『新株(新たな壁)』を無尽蔵に発行します! 結果として、我々の放つ攻撃力(買収資金)は無限に【希薄化】され、最後にはダメージが『ゼロ』に限りなく近づいてしまうのです!」
『その通りだ、計算係よ』
無限の防衛壁の奥から、CFOヘッジが冷酷に笑う。
『貴社らがどれほど巨大な暴力を持っていようと、無限に分割・増殖するこの防衛策の前では、すべての攻撃が泥水のように薄められる。……さあ、無駄な攻撃を繰り返し、疲弊して消え去るがいい』
「……フン。ポイズンピル、だと?」
無数に増殖した壁を前に、大日本軍の足が止まりかけたその時。
最後方からゆっくりと上昇してきた黄金の天主のバルコニーで、織田信長が不敵な笑い声を上げた。
「買収を防ぐために、自社の株(壁)を無闇矢鱈に刷りまくるとはな。……随分と自暴自棄な防衛策じゃねェか」
「御館様! しかし、このままでは我々の攻撃が届きません!」
蘭丸が焦燥の声を上げる。
「慌てるな、蘭丸。佐吉、猿!」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ、極悪な笑みを深めた。
「相手が俺たちの買収を薄めるために、無限に株(壁)を発行するというのなら。……その無限に増えた株、俺たちが【全額買い占めてやればいい】だけだろうが!」
無限の自社株買い(インフィニティ・バイバック)
「な……ッ!?」
信長のあまりにも理不尽な思考回路に、CFOヘッジの顔から初めて余裕が消え去った。
「そ、そういうことでさァ!」
猿の目に、強烈なドル袋のマークが閃く。
「壁が無限に増えるってことは、1枚あたりの価値はゴミみてェに下がってるってことだ! なら、アザトスの無限エネルギーを持つ大日本商会なら、そのゴミを無限に買い続けることができまさァ!」
「佐吉! 五郎左! 天魔艦隊のメイン動力を、俺の火縄銃に全開でバイパスしろ!」
「おうよォッ! 究極の永久機関の出力、限界突破だぜェ!」
五郎左がレバーを引き倒すと、未踏次元の最深部で縛り上げられている「沸騰する渾沌」から、宇宙を創り出すほどの莫大な狂気と資本エネルギーが、極太のケーブルを通じて信長の火縄銃へと一気に流れ込んだ。
「相手が無限に壁を張るなら、俺たちはその壁ごと会社を丸飲みするほどの【超・インフレ資金】をブチ込むまでだ!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれたのは、大宇宙の根源たる無限エネルギーを『新・永楽銭』の概念へと極限圧縮した【究極・株式全取得弾】。
漆黒と黄金の極太のレーザーが、無限に増殖していたポイズンピルの防衛壁に着弾する。
『バ、バカナ!? 当社ノ防衛プロトコルガ……無限ニ発行サレル新株ガ、発行サレル端カラ全テ大日本商会ニ「買収」サレテイキマス!!』
CFOヘッジが、自らの身体(計算式)が黄金色に書き換えられていくのを見て絶叫した。
ポイズンピルによる「無限の希薄化」よりも、信長がアザトスから引き出す「無限の資本注入」の速度が上回ったのだ。
増殖した無数の壁は、瞬く間にすべて大日本商会の所有物(黄金の永楽銭マーク)へと変異し、逆にCFOヘッジを押し潰す「大日本の城壁」へと姿を変えた。
ゴールデンパラシュートの切断
『エ、エラー! 当社ノ財務システムガ、完全ニ乗ッ取ラレ……ッ! コウナレバ、私ダケデモ退避スル!』
ヘッジは、自身の周囲に黄金の脱出カプセル――役員専用の絶対逃亡システム【ゴールデンパラシュート(退職金割増逃亡)】を展開し、光の速度で上空のCEO室へと逃げ去ろうとした。
これに乗り込めば、いかなる追撃も無効化し、莫大な資産を持ったまま安全圏へと離脱できる。
「逃がすかよ、モヤシ野郎!」
「退職金は置いていきなァ!」
だが、その逃亡ルートの先回りをして、又左と虎の二人が立ちはだかった。
二人は、信長の放った無限の買収エネルギーの余波を自身の武器にチャージし、ゴールデンパラシュートに向けて同時攻撃を放つ。
「超絶次元・雷神プラズマ爆槍!!」
ズドバァァァァァァァァァンッ!!
絶対の逃亡を約束されたはずの黄金のカプセルは、大日本の武功派コンビの理不尽な暴力の前にあっさりと粉砕された。
『ガ、アァァァァァァァァッ!? 私ノ……退職金ガァァァッ……!!』
莫大なデータを撒き散らしながら、CFOヘッジは完全に消滅し、大日本の口座へと吸収されていった。
CEOへの扉
「ガハハハハ! 防衛策(壁)も、ナンバー2も、あっけなくぶっ壊れたぜェ!」
権六が、粉々になった役員フロアを見渡して高笑いする。
「御館様! この階層の制圧、並びに敵の財務データへのアクセスを完了しました。……この真上、本社ビルの最上階が、CEOアダムの待つ社長室です!」
佐吉が、輝く魔導盤を押し上げて報告する。
「……ご苦労だったな」
信長は、硝煙を払いながら、黄金の天主から本社ビルの最上階へと続く「光の階段」を見上げた。
「資金洗浄も、ポイズンピルも、俺の野心の前にはただの紙屑だ。残るは、てめェらのトップの首だけだぞ」
信長は、愛刀『宗三左文字』を抜き放ち、家臣たちを引き連れて最上階へと歩みを進める。
すべての多次元市場を牛耳ってきた【『見えざる手』アダム】との、大宇宙のすべてのルールと経営権を懸けた究極のトップ会談。
全100話の完結へ向けて、第六天魔王の覇道は、ついに企業間戦争の最終局面へと突入していくのであった。
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