第70話:『見えざる手』の介入と、物理的マネーロンダリング(資金洗浄)
第70話:『見えざる手』の介入と、物理的マネーロンダリング(資金洗浄)
無数の大宇宙を飲み込む究極の経済特区【多次元ビジネス・センター】。
その中央に位置する超次元巨大スクリーンの前で、大日本・多元宇宙商会・代表取締役たる第六天魔王・織田信長が放った「全資産の強制買取(究極のIPO)」宣言は、このメガロポリスを支配する【超次元統括企業】との全面戦争の火蓋を切って落とした。
『――対象企業【大日本・多元宇宙商会】の悪質な市場操作を認定。これより、対象の全口座を【凍結】し、存在を差し押さえる』
大日本艦隊を包囲した数億体の幾何学模様の執行エージェントたちが、一斉にアタッシュケース型の概念武装を開いた。
そこから放たれたのは、絶対零度の冷気ではない。対象の「経済的活動」と「存在の流動性」をシステムレベルで停止させる、究極の【資産凍結光線】であった。
「チィッ! 体が、急に重くなりやがった……!」
最前線に飛び出していた虎の足が、不可視の重圧(負債)に縛り付けられたように泥土に縫い止められる。
「御館様! 敵の凍結プログラムが、我々の天魔艦隊の動力炉への接続ケーブルにまで浸透してきています! このままでは、大日本の全システムがショート(倒産)します!」
戦略室の佐吉が、魔導盤のキーボードから火花を散らしながら、必死にファイアウォールを再構築する。
悪徳金融と、毒入り資金洗浄
「フン。口座を凍結して動きを止めるか。いかにも官僚(お役所)仕事らしい陰湿な手だ」
黄金の玉座に座る信長は、葉巻の煙を吐き出しながら鼻で笑った。
「だが、相手が『金』で縛り首にしてくるなら、こちらはもっとドス黒い金で首を絞め返してやれ。……猿! 官兵衛! 奴らのシステムに【不良債権】をブチ込め!」
「へっへへへ! 合点承知でさァ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、ソロバンをギターのようにかき鳴らし、大日本商会の「裏口座」を開放する。
「クックッ……。綺麗な市場を誇るエリート企業に、我々のような泥水をすすってきたベンチャーの【毒】が耐えられるでしょうか」
劇薬の軍師・官兵衛が、南の【腐海魔帝ベルゼビュート】と目配せをする。
「ウフフ、綺麗に『資金洗浄』して差し上げますわ」
ベルゼビュートが、極大の致死性ウイルスと腐食の呪いを、猿が開放した裏口座の『新・永楽銭』のデータに限界まで混入させる。
そして、西の【魔氷魔帝クリオロス】の超演算が、凍結プログラムを放ってくる執行エージェントたちの「送金ルート」を逆探知。
そこに、毒と呪いでドス黒く染まった【大日本特製・超絶マネーロンダリング資金】を、天文学的スピードで逆流させたのだ。
『エラー! エラー! 未知の汚染データが、当社のメインサーバーに逆流……! 口座情報が、腐敗して……ガ、アァァァァァッ!?』
凍結光線を放っていたエージェントたちの幾何学ボディが、内側からドス黒い毒のデータに侵食され、次々と形を崩して自壊していく。
「ガハハハハ! 凍結が解けたぜェ! やっぱり小賢しい理屈より、俺たちの暴力の方が強ェな!」
体の自由を取り戻したオークの猛将・権六が、超絶・次元晶戦斧をフルスイングし、自壊していくエージェントの群れに突撃する。
「お前らの持ってる株、全部俺の雷で強制ロスカットだァ!」
又左が超光速の雷撃となって摩天楼の間を駆け抜け、エージェントたちを次々と串刺しにしては、大日本の『資産(光の粒子)』へと変換していく。
『見えざる手』の顕現
大日本商会の理不尽な「毒入り資金洗浄」と「物理的吸収合併(M&A)」により、数億の執行エージェント部隊は瞬く間に壊滅状態へと追い込まれた。
しかし、その様子を最上層のCEO室から監視していた超次元統括企業のトップ、【『見えざる手』アダム】は、依然として冷徹なままであった。
『……下等なウイルスで市場を荒らすか。ならば、市場の神が自ら制裁を下そう』
アダムが純白の手を振り下ろした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!
多次元ビジネス・センターの空を覆っていたホログラムの星空が裂け、そこから【星雲よりも巨大な、半透明の純白の巨大な手】が現れた。
「な、なんだァ!? 空からバカでけェ手が降ってきやがったぞ!」
市松が大斧を構えて上空を睨む。
「御館様! アレは……超次元統括企業が誇る究極の市場操作概念、【『見えざる手』の物理的顕現】です! あの手に触れられた対象は、いかなる強者であろうと『市場の需要と供給のバランス』に従い、強制的に【価値ゼロ(消滅)】へと再調整されます!」
佐吉が戦慄の声を上げる。
『需要のないバグは、見えざる手によって淘汰される。……消え去れ、大日本商会』
巨大な純白の手が、大日本の旗艦である黄金の天主、そして織田信長めがけて、圧倒的な質量と概念的圧力を伴って振り下ろされた。
魔王の決裁と、超次元摩天楼の買収
対象を完全に無に帰す、市場の絶対神の平手打ち。
だが、その掌が天主に触れる直前。
「……見えざる手、だと?」
黄金の玉座から跳躍した信長が、空中で巨大な掌と正面から対峙していた。
信長の全身からは、アザトスの無限エネルギーを限界まで引き出した、極大の漆黒の炎『覇王色』が太陽の如く燃え盛っている。
「コソコソと裏から手を回すのが、てめェらエリートのやり方か。だがな……俺の目の前で、手品師のように手を隠すんじゃねェ!」
信長は、愛刀『宗三左文字』を抜き放ち、巨大な掌のド真ん中へ向けて神速の次元斬撃を叩き込んだ。
ズバァァァァァァァァァァンッ!!
空間を両断する漆黒の斬撃が、アダムの放った「見えざる手」の概念的防壁を物理的に切り裂き、その中心に巨大な×印の傷を刻み込む。
『ナ……!? 市場の絶対法則(見えざる手)が、ただの一撃で傷つけられた……!?』
通信越しに、アダムの初めての動揺が響く。
「見えないなら、見えるようにしてやる。そして、そのふざけた手を、俺の会社の【ハンコ(印鑑)】で叩き潰してやるよ!」
信長は、斬り開いた掌の傷口に、愛用の『魔力火縄銃』の銃口を深々と突き立てた。
「大日本・多元宇宙商会、代表取締役! ……【公開買付(TOB)強行決裁】だ!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長の引き金が引かれると同時、大日本の無限の資本力と覇王色が圧縮された【黄金のスタンプ(決裁弾)】が撃ち出された。
弾丸は巨大な純白の手を根本から完全に粉砕し、さらにそのエネルギーの奔流は、アダムの「見えざる手」を構成していた莫大な市場データを、強制的に【大日本の新社屋】へと再構築(錬成)してしまった。
ピキィィィィンッ!!
粉砕された光の粒子が固まり、多次元ビジネス・センターの中央に、これまで存在したどの摩天楼よりも巨大で悪趣味な、黄金と漆黒の『大日本商会・超次元タワー』がドスンドスンと建ち上がったのである。
本社への進撃
「ガハハハハ! やりやがった! 敵の必殺技を叩き潰した上に、それを特大の自社ビルに変えちまいやがったぜェ!」
権六が、新しく建った黄金のタワーを見上げて腹を抱えて笑う。
「へっへへへ! これでビジネス・センターの中心は完全に大日本のショバでさァ! 敵の株価はもう大暴落、あっしらの独り勝ちですぜ!」
猿が、ストップ高で振り切れた売上メーターを掲げて歓喜する。
「……フゥ。たかが『手』一本で、俺の野心を押さえつけられると思ったか」
信長は、硝煙を吹き消し、新たに建った大日本タワーの屋上へと降り立った。
そして、その屋上から、多次元ビジネス・センターのさらに上層……天空を突き抜けるようにそびえ立つ、超次元統括企業の【真の本社ビル】を鋭く睨み据えた。
「おい、CEOとやら。てめェのつまらん手品は底が知れたぞ」
信長の声が、覇王色に乗って本社ビルへと直接叩きつけられる。
「次は、俺がてめェの社長室に直接カチ込んで、その首を物理的にリストラしてやる。……首を洗って待っていろ!!」
市場の絶対法則すらも力ずくで粉砕し、敵陣のド真ん中に巨大な自社ビルを打ち立てた第六天魔王。
多次元ビジネス・センターの下層から中層を完全に制圧した大日本艦隊は、すべての黒幕であるCEOアダムが待つ最上層の本社ビルへと、最後の【敵対的買収】の歩みを進めるのであった。
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