第69話:多次元ビジネス・センターの摩天楼と、究極の『新規株式公開(IPO)』
第69話:多次元ビジネス・センターの摩天楼と、究極の『新規株式公開(IPO)』
未踏次元の果て。
超次元統括企業の執行役員エクイティが乗る企業解体母艦を、自らの資本力と暴力で【敵対的買収】した大日本・多元宇宙商会。
彼らは敵のメインフレームから逆探知した座標へ向け、無量大数の宇宙戦艦群のアクセルを限界まで踏み抜いていた。
そして、極彩色の混沌の海を抜け、次元の壁を物理的にぶち破った彼らの眼前に広がったのは――これまでのいかなる宇宙、いかなる神の空間をも凌駕する、常軌を逸した【超巨大都市】であった。
「ヒィィィィッ……! な、なんじゃこりゃあ……! 星空が全部、ネオンサインになっちまいやすぜ!?」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、天魔艦隊・旗艦のバルコニーから身を乗り出し、ソロバンを取り落としそうになる。
眼前にそびえ立つのは、数千、数万の銀河をガラスケースのように固めて造られた【超次元摩天楼】の群れ。
ビルとビルの間には、光の帯となって無数のデータ(概念)が行き交い、空に浮かぶ巨大なホログラム広告が、めまぐるしく変わり続けている。
『――本日の【重力・先物取引】はストップ高。第43セクターの剣と魔法の宇宙群は、神話クラスの破産により一斉に上場廃止となりました』
『――【魂のデリバティブ商品】、大絶賛発売中! あなたの宇宙の寿命を担保に、新たな物理法則を融資します!』
「ガハハハハ! こいつはスゲェ! 神様どもがチマチマ管理してた宇宙を、ここでは完全に『商品』として売り買いしてやがる!」
オークの猛将・権六が、規格外のスケールに歓喜の声を上げる。
「……御館様。ここが、すべての超次元企業が覇権を争う究極の経済特区【多次元ビジネス・センター】です」
戦略室の佐吉が、滝のようなデータ流を魔導盤で処理しながら報告する。
「ここでは『命』や『エネルギー』はおろか、『運命』や『物理法則』すらも金融商品として取引されています。我々がこれまで制覇してきた大宇宙すら、彼らに言わせれば『地方の小さな工場』に過ぎなかったということです」
「ほう。地方の町工場か」
黄金の玉座に座る第六天魔王・織田信長は、最高級の葉巻を燻らせ、眼下に広がる超絶的な摩天楼を見下ろした。
「ならば、その町工場がどれだけ凶悪な力を持っているか、この大都会のスーツ野郎どもに叩き込んでやる必要があるな」
上場審査の拒絶
大日本艦隊が、多次元ビジネス・センターの境界線に接近したその時。
『――ピーッ! 警告。未登録のメガ・コーポレーションの接近を検知。直ちに進行を停止し、【市場参入税(上場審査料)】を支払え』
空間が歪み、ゲートを守るように数万隻の「黄金の防衛艦隊」が立ち塞がった。
彼らはビジネス・センターの治安と市場を管理する『多次元市場監視委員会』の直属部隊であった。
『大日本・多元宇宙商会。貴社は正規のライセンスを持たない違法ベンチャー企業である。当センターへの参入(上場)を希望する場合、貴社の総資産の99%を【保証金】として納入せよ。拒否する場合は、直ちに物理的・論理的排除を実行する』
「99パーセントだとォ!? ふざけんな! ヤクザのショバ代よりボッタクリじゃねェか!」
猿が、毛を逆立てて激怒する。
「ウフフ……。足元を見られたものですね。田舎者だと舐められているのでしょう」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を構えて冷ややかに笑う。
「払ってやるさ」
だが、玉座の信長は、ニヤリと極悪な笑みを浮かべて立ち上がった。
「その代わり、釣銭はいらん。てめェらの命と、そのゲートごと買い取ってやる」
信長の合図と共に、ドワーフの鍛冶長・五郎左が、旗艦の主砲の排熱レバーを力任せに引いた。
「おうよォ! 大日本商会からのご挨拶だぜェ! 受け取りなァ!」
アザトスの無限エネルギーと、大日本の全資本が充填された主砲が火を噴く。
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
放たれた『極大・永楽銭覇王弾』は、防衛艦隊の放つシールドを「札束の暴力」で紙切れのように粉砕し、数万隻の艦隊を文字通り【黄金の硬貨の山】へと強制変換してしまった。
爆発音すらなく、ただチャリンチャリンという軽快な音が宇宙空間に響き渡り、巨大なゲートが粉々に砕け散る。
「ガハハハハ! 審査通過だぜェ! ザルな警備だなァ!」
権六が戦斧を天に突き上げ、無量大数の大日本艦隊が、ビジネス・センターの摩天楼群へと雪崩れ込んでいった。
市場のパニックと、『見えざる手』アダム
一方、多次元ビジネス・センターの最深部。
天を貫く最も巨大な摩天楼の最上階、【超次元統括企業】の本社・最高経営責任者室にて。
壁一面を覆う無数の株価チャートが、突如として真っ赤な「暴落(ストップ安)」のアラートで埋め尽くされた。
『……何事だ』
役員デスクに座る、顔のない純白のヒューマノイド――シンジケートのCEOにして、多次元市場を絶対的に支配する【『見えざる手』アダム】が、冷徹な音声を発した。
『報告します、CEO! 第7ゲートが突破されました! エクイティ執行役員を消滅させた未知の企業【大日本・多元宇宙商会】が、センター内へ強行侵入! 奴らが通過した空間の企業が、次々と敵対的買収を受けて資産価値を書き換えられています!』
『……ただの無法者ではないな。市場のルールそのものを破壊する、純粋な「バグ(野心)」の塊か』
アダムは、ホログラムモニターに映る大日本艦隊の規格外の進軍を見て、純白の指を組んだ。
『これほどのエネルギー、放っておけば我々の市場独占が崩れる。……直ちに全執行エージェントを投下し、奴らの口座を完全に凍結させろ。市場の「見えざる手」が、いかに絶対であるかを教えてやる』
究極のIPO(宣戦布告)宣言
大日本艦隊は、摩天楼の合間を縫うように進み、センターの中央に位置する「超次元巨大スクリーン(市場のメイン掲示板)」の前に到達していた。
その周囲には、アダムの命を受けた数億体の幾何学模様の執行エージェントたちが、大日本を包囲するように展開し始めている。
「御館様! 敵の防衛部隊が全方位から展開してきます! さらに、我々のシステムに対して、猛烈な【資産凍結プログラム】がハッキングを仕掛けてきています!」
佐吉が、魔導盤のファイアウォールを死守しながら叫ぶ。
「フン。小賢しい手ばかり使いやがる」
信長は、愛刀『宗三左文字』を引き抜き、巨大なメイン掲示板に向けて刀を一閃した。
ズバァァァンッ!
刀から放たれた極大の覇王色が、掲示板のシステムを物理的にハッキングし、多次元ビジネス・センターの全摩天楼、全宇宙のモニターに【織田信長の姿】を強制的にジャック(同時放映)させた。
『――聞こえるか、次元のドブネズミ(経営者)ども』
信長の低く、しかし絶対的なカリスマを帯びた声が、メガロポリス全域に響き渡る。
数兆、数京という超次元企業のエリートたちが、モニターに映る漆黒の魔王の姿に息を呑んだ。
『俺は大日本・多元宇宙商会、代表取締役の織田信長だ。てめェらがこの箱庭でチマチマと数字を転がして、ふんぞり返っているのが気に食わなくてな。わざわざ田舎から出向いてやってきた』
信長は、愛用の魔力火縄銃をモニターの向こう側にいる全員に向けて突きつけた。
『本日、ただいまを以て、大日本商会はこのふざけた市場で【新規株式公開(IPO)】を行う』
信長の口元が、狂暴な三日月の形に釣り上がる。
『だが、俺たちは株を売るつもりは毛頭ねェ。てめェらが持っている全宇宙の株式、全資産、全技術……そのすべてを、今から俺たちが【強制的に買い取る】!!』
ゴオォォォォォォォォォォッ!!!!!
モニター越しに放たれた覇王色が、ビジネス・センターの空間を物理的に震わせ、株価チャートを一瞬にして「大日本商会の一強(ストップ高)」へと染め上げた。
『大人しく俺の傘下に入るなら、便所掃除の役員くらいには残してやる。だが、逆らう奴は会社ごと物理的にスクラップだ。……全軍、大日本の営業を開始しろ!!』
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
魔王の究極の宣戦布告に呼応し、権六、又左、虎、蘭丸ら最強の家臣団と、無量大数のキメラ軍団が一斉に摩天楼へ向けて飛び出した。
ついに始まった、多次元メガロポリスを舞台にした【企業間・超次元戦争】。
全100話の完結へ向けて、第六天魔王の「真・天下布武(完全独占)」は、すべての大宇宙を統べるエリート企業どもを、血と黄金で染め上げる究極のインフレ・デスマッチへと突入していくのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




