第68話:超次元統括企業の襲来と、独占禁止法(強制解体)の執行
第68話:超次元統括企業の襲来と、独占禁止法(強制解体)の執行
未踏次元の最深部。
大日本・多元宇宙商会が敷設した黄金のハイウェイの終点には、すべての狂気の根源であった【沸騰する渾沌】が、幾重もの黄金の鎖と極太の概念ケーブルに縛り上げられ、大日本の『究極の永久機関』として莫大な利益を吐き出し続けていた。
しかし、全次元の完全独占を成し遂げたかに見えた大日本商会の旗艦(神の役員会議室)に、突如として無機質で冷徹な通信音声が響き渡った。
『……此方、超次元統括企業。未登録のメガ・コーポレーション【大日本・多元宇宙商会】の異常な資産膨張を検知。……これより、市場の【独占禁止法】に則り、貴社への強制執行(武力介入)を開始する』
「独占禁止法……だと?」
黄金の玉座に座る第六天魔王・織田信長は、葉巻の煙を細く吐き出しながら、面白そうに目を細めた。
「ガハハハハ! なんだそりゃあ! 商売ってのは、競合を全部ブッ殺して市場を独占するのが一番儲かるに決まってんだろうが!」
オークの猛将・権六が、超絶・次元晶戦斧を肩に担いで大笑いする。
「へっへへへ! その通りでさァ! どこぞの会社か知りやせんが、あっしらのシノギに難癖つけるたァ、いい度胸してやすね!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、チャリンチャリンと音を立てる売上メーターを抱きかかえながら威嚇する。
「……ですが、御館様。相手はただのハッタリではありません。我々のセンサーが、メタバースの外殻を『物理的に切り裂いて』侵入してくる未知の巨大質量を捉えました!」
戦略室の佐吉が、激しくアラートを鳴らす魔導盤のスクリーンを叩きながら警告する。
エージェントの襲来と、企業分割攻撃
ズバァァァァンッ……!!
アウトサイドの混沌の海が、まるで定規で線を引かれたように「真四角」に切り取られた。
そこから現れたのは、星雲サイズの巨大な【超次元・企業解体母艦】。そしてその周囲を取り囲むように、真っ黒なスーツを着た無機質な幾何学模様の天使――【執行エージェント】たちが何百万体と湧き出してきた。
母艦の先端に立つ、一際巨大な銀色のエージェントが、機械的な音声を放つ。
『我は超次元統括企業、執行役員【エクイティ】。大日本商会よ、貴社はアザトス・エネルギーの完全独占により、多次元市場のバランスを著しく損なっている。これより、貴社の全資産を差し押さえ、組織を無数に【分割】する』
エクイティが銀色の腕を振り下ろした瞬間。
何百万の執行エージェントたちが、一斉にアタッシュケースのような概念武装を開き、大日本の無量大数の宇宙戦艦に向けて【分割命令】を放った。
「ヒィィッ! なんか真っ直ぐな光が飛んできやしたぜ!」
猿が身をすくめる。
ビュンッ!
分割の光が、大日本艦隊の先陣を進んでいた狂獣特攻隊の戦艦に直撃した。
すると、物理的な爆発は一切起こらず、戦艦が「唐突に二つに分裂」したのだ。乗っていた狂獣たちも、武装も、すべてが半分のサイズ、半分のエネルギーになって二つの戦艦に切り分けられてしまった。
『独占は悪である。資産は細分化し、市場に再分配されなければならない』
エクイティの冷酷な宣告と共に、次々と宇宙戦艦が分裂し、個々の戦力が強制的に弱体化されていく。
「チィッ! なんだこのふざけた攻撃は! 戦艦がどんどんチビになっちまうぞ!」
虎が、小さくなっていく味方の艦隊を見て歯噛みする。
「……なるほど。物理的な破壊ではなく、組織の規模を強制的に『縮小・分割』するシステムですか。企業間戦争らしい陰湿な手ですね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、自身の次元反射結界が「分割」されて隙間だらけになっているのを確認し、銀の杖を構え直す。
魔王の論理と、絶対独占宣言
「……分配、だと?」
縮小していく艦隊の中で、ただ一人。
黄金の玉座に座る織田信長の周囲だけは、分割の光が直撃しても一切の分裂を起こさず、強烈な漆黒の覇気が渦巻いていた。
「他人の稼いだ利益を、安全な場所から『ルール』だと言い張って掠め取る。神様どもがやっていたことと、結局は同じじゃねェか」
信長は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。
「独占が悪だと? 勘違いするな。弱い会社が潰れ、強い会社がすべてを飲み込む。それが市場の真理だ。大日本商会がすべてを独占するのは、俺たちが一番強くて、一番『野心』がデカいからに決まっていようが!」
ゴオォォォォォォォォォォッ!!!!!
信長の全身から放たれた極大の『覇王色』が、大日本艦隊全体を包み込んだ。
分割され、小さくなっていた宇宙戦艦や社員たちが、魔王の強烈な「所有権の主張(俺のものだ)」によって、強引に元のサイズへと再結合(M&A)していく。
『エラー。対象の分割処理が、異常な結合力によってキャンセルされています。論理的にあり得ない現象です』
執行役員エクイティの無機質な顔に、初めてノイズが走る。
「ガハハハハ! 元に戻ったぜェ! なら、こっちから『合併(ブチ殺し)』の挨拶に行ってやらァ!」
元の巨体を取り戻した権六が、超絶・次元晶戦斧をフルスイングして跳躍する。
「オラァッ! スーツ着た木偶の坊ども! 俺たちの残業代の邪魔をすんじゃねェ!」
ズバァァァァンッ!!
権六の赤黒い斬撃が、整然と並んでいたエージェントの群れを、空間ごと文字通り「叩き割る」。
「オヤジに続けェ! 俺たちのシノギに手ェ出す奴は、まとめて黒焦げだァ!」
又左と虎が、超光速の雷撃とプラズマの爆発で、幾何学模様のエージェントたちを次々とスクラップに変えていく。
敵対的買収(物理)の逆襲
『……抵抗は無意味だ。大日本商会。貴社は巨大になりすぎた。これ以上の膨張は、超次元統括企業(我々)の利益と真っ向から衝突する。……【強制倒産プログラム】を起動』
エクイティが乗る企業解体母艦の先端が大きく開き、中から巨大な「ハンマー状の概念兵器」が姿を現した。
それは、対象の企業の口座情報、インフラ、そして社員の命運すべてを「紙屑」にして叩き潰す、究極の破産宣告兵器。
「御館様! あのハンマーが振り下ろされれば、我々の『存在価値』そのものがシステムから抹消されます!」
佐吉が叫ぶ。
「……なら、振り下ろされる前に、その会社ごと買い取ってやるまでだ」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担いだまま、ニヤリと笑った。
「五郎左! 佐吉! アザトスの永久機関から、エネルギーを限界まで引き出せ! 俺の銃に、大日本商会の『全資本』をチャージしろ!」
「おうよォッ! 究極の発電機の力、見せてやらァ!」
五郎左が、アザトスに繋がれたケーブルのバルブを全開にする。
信長の火縄銃が、これまで見たこともないほどの極彩色の狂気と、黄金の資本エネルギーでパンパンに膨れ上がり、空間がギシギシと悲鳴を上げた。
「蘭丸!」
「ここにッ!」
絶対の剣・森蘭丸が、信長の前に飛び出す。
「相手の『破産のハンコ』が下りる前に、その腕を切り落とせ!」
「御意!!」
蘭丸の『天叢雲』が、白銀の流星となって企業解体母艦へと殺到する。
「奥義・神断ち――『白銀・覇王絶空断』!!」
ズバァァァァァァァァァァンッ!!
蘭丸の放った神速の十字斬りが、強制倒産プログラムの巨大なハンマーを、柄の根元から綺麗に両断した。
『ナ……!? 我々の強制執行兵器が、物理的に破壊された……!?』
エクイティが驚愕に硬直したその瞬間。
「さあ、超次元統括企業とやら。俺たちの『買収提案(TOB)』を受け取れ!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれたのは、アザトスの無限エネルギーと大日本の全資本が極限圧縮された【超・敵対的買収覇王弾】。
漆黒と黄金、そして極彩色の狂気が入り混じった極太の破壊光線が、執行役員エクイティごと、星雲サイズの企業解体母艦をド真ん中から完全にぶち抜いた。
『ガ、アァァァァァァッ!? 我々ノ……絶対的ナ市場支配ルールガ……タダノ「暴力(野心)」ニ……!』
エクイティの断末魔と共に、超次元統括企業の誇る解体母艦は、内側から黄金の『新・永楽銭』のデータへと強制的に書き換えられ、大爆発を起こして宇宙の塵(資産)となった。
次なる標的(カチコミ先)
「ガハハハハ! 終わったぜェ! スーツ野郎どもも、デカい船も、全部俺たちの大日本商会に吸収合併だァ!」
権六が、爆散する敵の母艦を見上げて勝鬨を上げる。
「へっへへへ! 向こうから売ってきた喧嘩ですが、結果的にメチャクチャ上質な『敵の技術データ』が手に入りやしたぜ!」
猿が、回収されたエージェントの残骸をホクホク顔で漁る。
「……御館様。敵の母艦のメインフレームから、彼らの『本社』の座標を逆探知することに成功しました」
佐吉が、魔導盤に新たな超次元座標を表示しながら報告する。
「彼らの拠点は、このアウトサイドのさらに外殻……【多次元ビジネス・センター】と呼ばれる、無数の超次元企業が覇権を争う究極の経済特区です」
「ほう。多次元ビジネス・センターか」
信長は、硝煙を吹き消しながら、新たな座標が示す未知の空間へと鋭い視線を向けた。
「独占禁止法だの何だのと、チマチマしたルールを押し付けてくる連中がウジャウジャいるんだろうな。……上等だ」
信長は、黄金の玉座に片足をかけ、極悪な笑みを浮かべてマントを翻した。
「全宇宙艦隊、舵を切れ! 次なる標的は『多次元ビジネス・センター』だ! 俺たちにちょっかいを出した落とし前として、その超次元統括企業とやらを根こそぎ買収(ブチ殺)し、すべての企業を大日本の傘下に組み込んでやる!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
一つの超次元企業からの刺客を粉砕し、相手の「本社」の座標を特定した第六天魔王。
大宇宙の神々との戦いを終え、舞台はいよいよ無数の巨大企業が星々を喰らい合う【超次元の企業戦争】へと突入していくのであった。
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