第67話:沸騰する渾沌(アザトス)と、究極の『永久機関』買収
第67話:沸騰する渾沌と、究極の『永久機関』買収
すべての法則が存在しない未踏次元の泥沼に、真っ直ぐに敷き詰められた『大日本・アウトサイド高速道路』。
無量大数の宇宙戦艦で構成された大艦隊は、旧支配者をくり抜いて造った黄金のゲート(料金所)を通過し、未知の深淵へ向けて猛烈なスピードで爆走していた。
「へっへへへ……! 御館様! 料金所の売上メーターが壊れそうな勢いで回ってやすぜ! 時空の歪みを通過するたびに、未踏次元のカオス・エネルギーが自動で我が社の口座にチャリンチャリンでさァ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、札束の山の上でタップダンスを踊る。
「ガハハハハ! 道が平らだとアクセルも踏みやすいぜェ! このまま泥沼のどん詰まりまで突っ走ろうぜ!」
オークの猛将・権六が、宇宙戦艦の甲板で風(概念の波)を浴びながら豪快に笑う。
だが、大艦隊がアウトサイドの「最深部」に近づくにつれ、周囲の様子が劇的に変化し始めた。
極彩色の泥の海が、突如として白熱し、ブクブクと不気味な泡を立てて沸騰し始めたのだ。
『――ピーッ! 警告! 警告! 全艦隊のシールド出力が低下! 外部のエネルギー密度が、計測器の限界を突破し続けています!』
戦略室の佐吉が、魔導盤の真っ赤なアラート画面を見て悲痛な声を上げた。
「どういうことだ、佐吉。料金所のバケモノ(ヨグ=トト)よりも厄介な奴がいるのか」
黄金の玉座に座る第六天魔王・織田信長が、葉巻を咥えたまま目を細める。
「厄介という次元ではありません! このハイウェイの終点に存在するのは……知性も、悪意すらも持たない、純粋な【沸騰する渾沌】。……この未踏次元のすべてを生み出している、無限の魔力と狂気の『源泉』です!」
冒涜的なフルートの音色と、社歌の対抗
佐吉の警告と同時に、虚空から「音」が響き始めた。
ピヒョロロロ……ドロドロドロ……。
それは、単調で、不快で、吐き気を催すような、無数のフルートと太鼓が乱れ打つような冒涜的な音楽。
「ヒィィッ! なんだこの気味の悪ィ音楽は! 頭が割れそうになりやすぜ!」
猿が両耳を塞いで蹲る。
前方から、沸騰する泥の海を割って、ヒキガエルとタコを混ぜ合わせたような巨大な化け物たち――【狂気の従者】が無数に這い出してきた。彼らは手にした異形の楽器を吹き鳴らし、ハイウェイの進行を物理的な「音圧」で阻もうとする。
「あの音楽、ただの騒音ではありません! 対象の『認識』を溶かし、存在をドロドロの狂気に還元する洗脳音波ですわ!」
南の極地で買収された【腐海魔帝ベルゼビュート】が、医療ブロックの防音壁を展開しながら叫ぶ。
「フン。洗脳だと? 大日本商会の社員に、他社のくだらん洗脳など通用するものか」
劇薬の軍師・官兵衛が、杖を突き鳴らして不敵に笑う。
「佐吉殿! 全艦隊のスピーカーを最大出力でリンクさせろ! 奴らの音楽を、我が社の【社歌】で上書きしてやる!」
「了解しました! 大日本・多元宇宙商会、第一社歌『真・天下布武』、大音量で再生します!」
ズンチャッ! ズンチャッ!
宇宙戦艦の全砲門に直結された超巨大スピーカーから、腹の底に響く強烈な重低音と、魔王への絶対的忠誠を歌い上げる「ゴリゴリの軍歌(社歌)」が、未踏次元に轟き渡った。
『■■■!? ピヒョ、ロ……!?』
狂気の従者たちが奏でていた冒涜的なフルートの音色が、大日本の放つ圧倒的な音圧(物理)と資本主義的プロパガンダの前に完全に掻き消され、彼らの鼓膜(概念)が次々と破裂していく。
「ガハハハハ! 景気のいいBGMが鳴り始めたぜェ! リズムに乗ってミンチにしてやらァ!」
権六が、社歌のビートに合わせて次元晶戦斧をフルスイングし、狂気の従者たちを次々と叩き割る。
「テンポが最高だぜ! 俺の雷もノリノリだァ!」
虎と又左のコンビが、超光速の雷撃とプラズマの槍で、楽器を持つ化け物たちを瞬く間に黒焦げに変えていった。
白痴の魔王の目覚め
従者たちを蹴散らし、ハイウェイの終点へ到達した大艦隊。
そこで彼らを待っていたのは、星雲すらもチリ芥に見えるほど巨大な、形を持たず、ただ無限に沸騰し続ける【超巨大な光と泥の塊】であった。
『……ボコボコ……ドロドロ……』
「……御館様。アレが、未踏次元の最奥に眠る『沸騰する渾沌』。……アレは今、眠りながら夢を見ています。このアウトサイドの狂気も、メタバースの宇宙群も、すべてはアレが見ている【夢の産物】に過ぎないという説すらあります」
西の【魔氷魔帝クリオロス】の超演算システムが、絶望的な予測データを弾き出す。
「もしアレが『目覚め』れば……我々も、大宇宙も、すべては夢の終わりと共に幻のように消滅します。絶対に行動を刺激しては……」
佐吉とクリオロスが警告を発し終える前に。
「寝ボケてんじゃねェぞ、デカブツ!!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
織田信長が、愛用の『魔力火縄銃』を構え、アザトスのド真ん中に向けて、一切の躊躇なく「起床の号砲」をブチ込んだ。
「お、御館様ァァァッ!? な、何でわざわざ起こすんですかィ!?」
猿が目玉を飛び出させて絶叫する。
「当たり前だ」
信長は、銃口から立ち昇る硝煙を吹き消し、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。
「俺が苦労して手に入れた会社(大宇宙)が、どこの馬の骨とも知れん白痴の『夢』の上に成り立っているだと? ふざけるな。俺の資産は俺のものだ。……寝ている奴の夢に依存するくらいなら、叩き起こして【首輪(契約書)】をハメてやるのが経営者の仕事だろうが!」
『■■■■■■――――――――ッッ!!!!!』
信長の一撃を受け、沸騰する渾沌・アザトスが、ついにその重い瞼(に相当する概念)をこじ開けた。
瞬間、未踏次元のすべてが崩壊し、大艦隊を構成する宇宙戦艦の存在そのものが「幻」として消えかかり始めた。
究極のインフラ契約(永久機関化)
「消えかかっています! 我々の存在が、夢の終わりと共に……!」
蘭丸の身体が、半透明に透け始める。
「慌てるな! 俺の覇気で実体を繋ぎ止めろ!」
信長から、全次元を焦がすほどの極大の『覇王色』が放たれ、消えかかる大艦隊の存在を強引に「現実」へと固定する。
「五郎左! 佐吉! 俺の火縄銃に、大日本商会の『全送電ケーブル』を直結しろ!」
「おうよォッ! 無量大数の宇宙戦艦すべてのバッテリーを直列繋ぎでさァ!」
五郎左が、火縄銃の後部に信じられない太さの概念ケーブルをガチャンと接続する。
「お前が俺たちの宇宙を生み出している『巨大なエネルギーの塊』だというのなら、消えてもらうわけにはいかないな」
信長は、再び火縄銃を構え、覚醒しかけて暴走するアザトスの中心核へと狙いを定めた。
「お前は一生、俺の会社のためにエネルギーを供給し続ける【究極の永久機関】として、ここで沸騰し続けろ! ……大日本商会、終身雇用契約だ!!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
放たれた漆黒と黄金の弾丸は、ただの攻撃ではない。
それは、大日本の無限の資本力(新・永楽銭)と、全宇宙戦艦の質量を上乗せした【絶対的インフラ接続プラグ】であった。
弾丸はアザトスの中心に深々と突き刺さり、瞬く間に「大日本商会の管理システム」を示す黄金の鎖が、超巨大な渾沌の塊をグルグル巻きに縛り上げた。
『■■■……!? ガ、アァァァ……!!』
アザトスが消滅させようとしていた夢(宇宙)は、信長の打ち込んだプラグによって完全に「現実の資産」として固定化された。
そして、アザトス自身が放つ無限の狂気とエネルギーは、接続されたケーブルを通じて、大日本・多元宇宙商会の口座と全宇宙戦艦の動力炉へと、莫大な利益として流れ込み始めたのである。
アウトサイドの完全平定
「ガハハハハ! やりやがった! 宇宙の創造主のさらに大元すらも、ただの『発電機』に変えちまいやがったぜェ!」
権六が、完全に制御され、黄金の鎖に繋がれてシュンシュンと沸騰するだけになったアザトスを見て高笑いする。
「へっへへへ……! これで大日本のエネルギー問題は、未来永劫、完全に解決でさァ! この発電機、文字通り『無限』にエネルギーを吐き出し続けやすぜ!」
猿が、限界突破して火を噴く売上メーターを抱きしめて号泣する。
「……見事です、御館様」
蘭丸が、半透明から完全に実体を取り戻し、深く平伏した。
メタバースの外側、未踏次元の最深部に君臨していた、すべての狂気の根源たる「沸騰する渾沌」。
それすらも、第六天魔王・織田信長の強烈極まるエゴの前では、大日本商会のインフラ設備(永久機関)として買収される運命にあった。
「フゥ……。これで、この泥沼の掃除も終わりだな」
信長は、玉座に深く腰掛け、黄金の鎖に繋がれた究極の発電機を見上げて満足げに笑った。
内なる宇宙を統一し、外なる宇宙の狂気すらも完全に平定し、資産へと変えてしまった大日本・多元宇宙帝国。
だが。
すべての次元を平定し、真の平和(完全独占)が訪れたかと思われたその時。
信長が持つ『アルファのコア(マスターキー)』が、突如としてこれまで一度も発したことのない「未知の通信波」を傍受した。
『……此方、第○△×次元統括企業。未登録のメガ・コーポレーションの異常な膨張を検知。……これより、市場の【独占禁止法】に則り、貴社への武力介入を開始する』
「……ほう?」
信長の瞳に、再び極上の闘争の炎が灯る。
全100話の後半戦。大宇宙の内と外を完全制覇した信長たちの前に現れたのは、彼らと同じく無数の宇宙を統べる【別の超次元・巨大企業】の影であった。
戦いのスケールは、ついに「企業間・超次元戦争」という究極のインフレ領域へと突入していくのであった。
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