第66話:アウトサイド支社の落成と、時空迷宮の『強行開通(インフラ整備)』
第66話:アウトサイド支社の落成と、時空迷宮の『強行開通(インフラ整備)』
すべての法則が存在しない未踏次元。
極彩色の泥が蠢く果てしない混沌の海の中央に、今や常識を破壊するほどに巨大な「黄金の要塞ビル」がそびえ立っていた。
それは、大日本・多元宇宙商会が底値で買収し、結晶化させた【旧支配者ナイアラ】の残骸をくり抜いて建造された、大日本の新たな最前線基地――『アウトサイド支社』である。
「ガハハハハ! 見ろ! 名状しがてェバケモノの抜け殻が、ピッカピカの新社屋に早変わりだぜェ!」
オークの猛将・権六が、黄金の装甲板で覆われたエントランスホールで高笑いする。
「おうよォ! ただの金塊じゃねェ! こいつの成分(未踏次元晶)は、オムニバースのどんな攻撃も『意味不明な理屈』で弾き返す最高の装甲材だ! 全宇宙戦艦のコーティングにも回してやらァ!」
ドワーフの鍛冶長・五郎左が、鼻息を荒くして特大の溶接機を担ぎ上げる。
「へっへへへ……! ただの泥沼だと思ってた場所が、掘れば掘るほどお宝が湧いてくる一等地でさァ! 御館様、アウトサイド支社の第一期決算、とんでもねェ黒字スタートですぜ!」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、新設された役員室のデスクにうずたかく積まれた『新・永楽銭』の山を前に、恍惚の表情を浮かべていた。
黄金のデスクの奥、最高級のふかふかな玉座に深く腰掛ける第六天魔王・織田信長は、愛用の『魔力火縄銃』を磨きながら、窓の外に広がる混沌の海を見下ろしていた。
「フン。旧支配者とやら、図体ばかりデカくて、解体してみればただの良質な『建材』だったな。……だが、こんな泥沼の入り口で満足している暇はないぞ」
信長は、葉巻を咥えてニヤリと笑う。
「この泥の奥には、まだまだ俺たちの会社の帳簿を賑わせてくれる『未登録の資産』が眠っているはずだ。全艦隊、直ちに前進させろ!」
非ユークリッド幾何学の罠
しかし、アウトサイド支社から大日本・超次元移動大艦隊(無量大数の宇宙戦艦群)が出発しようとした、その時。
『――ピーッ! 空間エラー! 現在地の座標が、無限にループしています!』
戦略室の佐吉の悲痛な声が、支社の役員室に響き渡った。
「どういうことだ、佐吉」
「御館様! 我々の周囲の空間構造が、突如として『非ユークリッド幾何学』……いや、それすらも超越した【狂気の迷宮】へと変異しました! 前に進んでいるはずが後ろに戻り、上下左右の概念がメビウスの輪のように永遠に繋がり続けています!」
佐吉の魔導盤のスクリーンには、大艦隊がいくらエンジンを吹かしても、まったく同じ極彩色の泥の海をグルグルと回り続けている様子が映し出されていた。
「ウフフ……。どうやら、私たちが勝手に支社を建てたのがお気に召さなかった『ご近所さん』がいるようですね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、銀の杖を構えて虚空を睨む。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!
空間のループの奥底から、無数の「虹色に輝く球体」が連なった、泡のような巨大な不定形存在が姿を現した。
『我ハ、門ニシテ鍵。全テノ時空ヲ内包スル者……【時空ノ旧支配者・ヨグ=トト】』
その声は、一つでありながら無数、過去でありながら未来からの声のように、全艦隊の乗組員の脳内に直接響き渡った。
『傲慢ナル特異点ドモヨ。ナイアラヲ物質ニ貶メ、我ラノ海ヲ荒ラス罪ハ重イ。貴様ラハコノ【無限ノ時空迷宮】ノ中デ、永遠ニ目的地ニ辿リ着クコトナク、狂気ト停滞ノ中デ朽チ果テルガヨイ……』
「ヒィィッ! 今度は球体のバケモノだァ! 永遠に迷子になっちまうってことですかィ!?」
猿が窓にへばりついて絶叫する。
どんなに強大な火力(資本力)を持っていようとも、敵の姿を捉えられず、永遠に無限の空間を歩かされ続ければ、やがてはリソースが尽きて餓死するしかない。それが旧支配者ヨグ=トトの「絶対の牢獄」であった。
大日本商会式・強行インフラ整備
「……永遠に迷い続ける、か」
だが、信長は玉座から立ち上がり、呆れたようにため息をついた。
「道がないなら、作ればいい。空間がループしているなら、ループごと真っ直ぐに『舗装』してやればいいだろうが。そんな簡単なことも分からんのか、お前らは」
信長のあまりにも物理的で横暴な解決策に、佐吉が眼鏡をズレ落とす。
「ほ、舗装!? 御館様、相手は無限の時空そのものです! 道を作るなど……」
「大日本商会の辞書に『不可能』という文字はねェ!」
信長の号令を合図に、武功派の猛将たちが一斉に目を血走らせた。
「ガハハハハ! そういうことか! 道が曲がってんなら、力ずくで平らに均してやらァ!」
権六が、アウトサイド支社の建材である『黄金の未踏次元晶』の特大ブロックを戦斧で切り出し、それをブルドーザーのように前方の空間へと押し出した。
「オヤジ! 舗装のスピードが遅ェぞ! 俺がアスファルト(次元晶)を超光速で敷き詰めてやる!」
又左が雷エイに跨り、切り出された黄金のブロックを次々と蹴り飛ばし、狂気の泥の海の上に「強引な直線道路」を猛スピードで形成していく。
「ウフフ、地盤が緩んではいけませんね。私の呪いと毒で、空間の歪みを【完全固定(セメント化)】して差し上げます」
金柑と官兵衛が、敷き詰められた次元晶の隙間に、空間の法則を縛り付ける強烈なデバフ魔法を流し込み、ガチガチのコンクリートとして固めていく。
『ナ……!? 何ヲシテイル、貴様ラハ……!』
時空の旧支配者ヨグ=トトの虹色の球体が、驚愕に激しく明滅した。
『我ガ創リ出シタ無限ノ非ユークリッド迷宮ガ……タダノ「一本ノ黄金ノ直線道路」ニ、物理的ニ塗リ替エラレテイクダト……!?』
「ガハハハハ! 迷宮だか何だか知らねェが、俺たち大日本の社員は【終わりのない仕事(無限の残業)】なんて慣れっこなんだよ! 永遠に続く空間なら、永遠に道を造り続けてやるァ!」
権六をはじめとする狂獣特攻隊のキメラ社員たちが、無限の体力と気合で、時空の歪みを腕力でへし折りながら『大日本・アウトサイド高速道路』を敷き詰めていく。
無限の迷宮という概念的恐怖が、「ブラック企業における果てしないインフラ整備作業」という、さらに理不尽なパワーによって完全に蹂躙されていく瞬間であった。
ゲート(料金所)の買収
「チェックメイトだ、シャボン玉野郎」
敷き詰められたばかりの黄金の高速道路の先端。
空間のループを強引に突破し、ついにヨグ=トトの本体(無限の球体の中心)の目の前に、織田信長が姿を現した。
「蘭丸!」
「ここにッ!」
信長の影から飛び出した森蘭丸が、『天叢雲』を煌めかせる。
「迷宮の主よ! 我が主君の敷いた道に、立ち塞がることは許さん!」
ズバァァァァァァンッ!!
蘭丸の神速の一撃が、ヨグ=トトの球体群の中心に強烈な「斬り込み」を入れ、そのコアを露出させる。
『ガ、アァァァァァッ!? 我ガ、全知全能ノ時空ガ、タダノ道路工事ニ……!!』
「門にして鍵だと名乗ったな」
信長は、露出したコアに向けて、愛用の『魔力火縄銃』の銃口を突きつけた。
「門があるなら、そこは俺の会社の【料金所】だ」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長が引き金を引いた。
放たれたのは、大宇宙の全マスター権限と、無限の資産を圧縮した『強行買収覇王弾』。
漆黒の弾丸は、時空の旧支配者のコアに直撃し、その「無限の時空を操る権限」を強制的に大日本商会のシステムへと書き換えた。
『ア……ガ……! 我ガ、門ガ……料金所、ニ……』
ヨグ=トトの虹色の球体群は、瞬く間に「ETC(自動料金収受システム)」のような強固な黄金のゲートへと変形し、アウトサイド高速道路の真ん中に設置されてしまった。
「ガハハハハ! 開通だぜェ! これで未踏次元のどこへでも、迷わずカチ込めるな!」
権六が、完成した黄金のゲートの前で戦斧を掲げる。
「へっへへへ! しかもこのゲート、通るたびに周囲のカオス・エネルギーを自動で徴収する超優秀な課金システム付きでさァ! 御館様、また一つ強力な子会社を手に入れやしたね!」
猿が、ゲートの横に設置された「売上メーター」が猛烈な勢いで回るのを見て歓喜する。
「……フン。当然だ」
信長は、火縄銃を肩に担ぎ直し、完成した高速道路の彼方――さらに深く、ドス黒く渦巻くアウトサイドの最深部を睨み据えた。
「道ができたなら、あとは突っ走るだけだ。全宇宙戦艦、アクセルをベタ踏みしろ! この高速道路の終点にいる『一番デカい泥人形』のドタマをカチ割りに行くぞ!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
クトゥルフ的恐怖の時空迷宮すらも「道路工事」で強行突破し、旧支配者をただの料金所へと変えてしまった第六天魔王。
全100話の完結へ向けて、大日本・多元宇宙商会の大艦隊は、すべての狂気の根源が眠る『混沌の玉座』へ向け、黄金のハイウェイを爆走していくのであった。
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