第64話:未踏次元(アウトサイド)の狂気と、這い寄る混沌の『市場開拓』
第64話:未踏次元の狂気と、這い寄る混沌の『市場開拓』
すべての宇宙を管理していた【真・神の管理室】の絶対防壁が砕け散り、大日本・多元宇宙商会が率いる無量大数の『宇宙戦艦』は、ついにシステムの「外側」へと躍り出た。
そこは、星も光も闇も、時間も空間すらも定義されていない未踏次元。
赤、紫、緑といった極彩色の「概念の泥」が蠢く狂気の海から這い出してきたのは、無数の目玉と触手と獣の牙を併せ持つ、星雲の数千倍のサイズを誇る【這い寄る冒涜的な影】であった。
『■■■■■■――……!!』
その影が発した言語絶する咆哮は、音波ではなく「精神を直接腐敗させるノイズ」として大艦隊に襲いかかった。
「ヒィィィィッ!? なんだこの声! ソロバンの玉が勝手に割れちまいやすぜェ!?」
大蔵省長官の猿ことトックス(猿獣人)が、耳を塞ぎながら甲板を転げ回る。
「御館様! 敵の放つノイズ波長、メタバースのいかなる物理法則・魔力とも一致しません! これは純粋な『狂気』……対象の存在意義を根底からゲシュタルト崩壊させる、未知の概念攻撃です!」
戦略室の佐吉が、魔導盤から噴き出す火花を避けながら絶叫する。
先陣を切るいくつかの宇宙戦艦(試験管)の表面にノイズが直撃すると、中の宇宙の物理法則がドロドロに溶け出し、「上」が「下」になり、「炎」が「冷気」に変わるという、無秩序な論理崩壊が広がり始めた。
「フフ……。計算で量れない狂気、ですか。これは少しばかり厄介ですね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、自身の展開した次元反射結界が「スリ抜けられて」いくのを見て、美しい眉をひそめた。
創業社長(魔王)の論理
だが、旗艦たる『神の役員会議室』の黄金の玉座に座る織田信長は、慌てるどころか、最高に愉快そうに葉巻の煙を吐き出していた。
「厄介だと? 笑わせるな、金柑」
信長は、玉座の肘掛けに足を乗せ、ドロドロに蠢く未踏次元の海を見下ろした。
「ルールが通用しないなら、それはただの『無法地帯』だ。価値が定まっていないなら、それは手付かずの『新規市場』だ。……誰も開拓していない泥沼に、一番に旗を立てて『俺のルール』を押し付ける。それが創業社長の仕事だろうが!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
魔王の狂気じみたポジティブシンキングに、恐怖しかけていた武将たちとキメラ軍団が一気に息を吹き返し、野獣のような勝鬨を上げる。
「ガハハハハ! 御館様の言う通りだ! 理屈が通じねェなら、理屈が通じるまでドタマをカチ割り続けるだけだァ!」
オークの猛将・権六が、超絶・次元晶戦斧を肩に担ぎ、宇宙戦艦の甲板から跳躍の構えをとる。
「オヤジ、泥に足を取られんなよ! 俺の雷で道を拓いてやらァ!」
又左が、超光速次元エンジンをブースターとして直結させた雷エイに跨り、十文字槍を構えた虎と共に前衛へと飛び出す。
「五郎左! 全宇宙戦艦、エンジン出力最大! あのバケモノの触手を物理的に轢き潰せ!」
「おうよォッ! 大日本重工特製・宇宙カミカゼ特攻だぜェ!」
ドワーフの鍛冶長・五郎左がレバーを押し込むと、無量大数の宇宙戦艦が、猛烈な推進力で「這い寄る混沌」へと突撃を開始した。
狂気と暴力の正面衝突
『■■■■■■――!!』
這い寄る冒涜的な影は、無数の極彩色の触手を伸ばし、突撃してくる宇宙戦艦を「捕食」しようと絡みついてくる。
触手に触れた空間は、意味を持たない泥へと還元されそうになるが、そこへ大日本の武功派たちが容赦なく割り込んだ。
「オラァァァッ!! 名状しがたいツラしてんじゃねェ!」
権六の戦斧が、空間の法則を無視して巨大な触手の群れを真っ向から両断する。
「お前らの泥より、大日本のカオス(エネルギー)の方がよっぽどドス黒ェんだよ!」
虎の十文字槍がプラズマの爆発を起こし、切り裂かれた触手の断面から「狂気」が漏れ出す前に物理的に焼き尽くす。
「ウフフ……。狂気には狂気を。私の『超腐食性ウイルス』で、その冒涜的な細胞ごとドロドロに愛してあげますわ」
南の【腐海魔帝ベルゼビュート】が、医療ブロックから致死の猛毒を散布し、混沌の触手を逆に腐らせていく。
神々ですら計算不能として見捨てた未踏次元の化け物に対し、四大帝国を吸収し、全宇宙を弾丸として扱うまでにインフレした大日本のキメラ軍団の「暴力」は、ついに狂気すらも力押しで相殺し始めた。
「佐吉! 敵のコア(急所)はどこだ!」
「解析不能ですが、奴の質量が最も密集している『中心の巨大な目玉』……あそこに、未踏次元のエネルギーの源泉が集中しています!」
佐吉の通信を受け、信長が玉座からゆっくりと立ち上がった。
究極の市場開拓(ルール押し付け)
「蘭丸!」
「御意ッ!!」
絶対の剣・森蘭丸が一筋の青白い閃光となり、混沌の海を一直線に切り裂いていく。
「我が主君の野心が行き届かぬ場所など、この次元の外側であろうと存在しない!」
蘭丸の愛刀『天叢雲』が、化け物の中心を覆う分厚い狂気の防壁に、神速の十字を刻み込んだ。
「奥義・神断ち――『白銀・覇王絶空断』!!」
ズバァァァァァァァァァンッ!!
概念の泥が真っ二つに裂け、その奥に隠されていた、星雲よりも巨大な「冒涜的な目玉」が露わになる。
「チェックメイトだ、泥人形」
信長の姿が、空間転移によって蘭丸の横、巨大な目玉の真正面へと瞬時に現れた。
その手には、アルファから強奪した全宇宙のマスターキーたる『アルファのコア』が、愛用の『魔力火縄銃』の動力源として直結されていた。
『■■■……!?』
化け物の目玉が、初めて「恐怖」に似た収縮を見せる。
「ルールが無いから無敵だと思ったか? 大間違いだ」
信長は、漆黒と黄金の極大の覇王色を銃身に纏わせ、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。
「俺が今日から、この未踏次元のルールを決めてやる。……俺の『永楽銭』で、てめェの狂気をすべて買い取ってやるよ!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長の引き金が引かれた。
撃ち出されたのは、破壊の光ではない。大日本商会の誇る無限の資本力(新・永楽銭)と、全宇宙のマスターキーの権限が極限圧縮された【絶対的市場統合弾】。
漆黒の弾丸は、化け物の巨大な目玉に直撃すると同時、ドロドロの狂気の泥を「強制的にフォーマット」し始めた。
それは、意味を持たなかった混沌に『価値』と『価格』を付与し、大日本商会の経済システムの中に強引に組み込むという、究極の理不尽ハッキングであった。
『■■■ガ、アァァァァァァァ……!!』
這い寄る混沌の巨体が、ピキピキと音を立てて硬直していく。
極彩色の泥は、瞬く間に黄金と漆黒が混ざり合った「純度一万パーセントの超・未踏次元晶コア(新素材)」へと結晶化し、無数の触手や牙は、巨大な資源の山へと変貌してしまった。
次なる大航海への布石
「ガハハハハ! やりやがった! 名状しがてェバケモノが、一瞬で極上のお宝(資源)に早変わりだぜェ!」
権六が、結晶化した巨大なコアの上に飛び乗り、勝鬨を上げる。
「へっへへへ……! 御館様! この新素材、メタバースのどの宇宙にも存在しない『規格外の価値』を持っていやすぜ! これを加工すりゃあ、大日本商会の株価はさらに無量大数の倍に跳ね上がりまさァ!」
猿が、ソロバンを弾き飛ばす勢いで狂喜する。
「……フゥ。たかが泥遊びに過ぎん」
信長は火縄銃の硝煙を吹き消し、結晶化した混沌の海を見渡した。
「神様どもが恐れて蓋をした場所を開けてみれば、ただの『未発掘の金脈』だったというわけだ」
信長は、漆黒のマントを翻し、さらにその奥……果てしなく続く未踏次元の深淵に向けて、軍配を力強く突き出した。
「さあ、武将ども! 道は拓けたぞ! この泥沼には、こんなバケモノがまだウジャウジャと眠っているはずだ。全宇宙を引き連れ、手当たり次第にブッ殺して、すべての狂気を大日本の『資産』に変えろ!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
システムという名の箱庭を飛び出し、ついに「法則のない次元」すらも自らの市場として開拓し始めた第六天魔王。
無量大数の宇宙戦艦を引き連れた大日本・多元宇宙商会の狂気の大航海時代は、全100話の完結へ向けて、さらなる未知の超常存在(クトゥルフ的恐怖すら超越する敵)との激突へと加速していくのであった。
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