第57話:一万の宇宙投擲と、監査官の『内部告発(買収)』
第57話:一万の宇宙投擲と、監査官の『内部告発(買収)』
果てしなく広がる純白の超高次元空間――【真・神の管理室】。
無数のオムニバース(大宇宙)が試験管のように並べられたこの空間の中央で、大日本・多元宇宙帝国の魔王・織田信長と、多次元監査委員会の執行監査官ジェネシスによる、常軌を逸した「宇宙の撃ち合い」が繰り広げられようとしていた。
『バ、バカナ……! 一万個ノ宇宙ヲ、同時ニ撃チ出スダト……!? ソノヨウナ質量ト概念ノ暴走、メタバースノ空間法則ソノモノガ崩壊スルゾ!』
身長数十万光年に及ぶ超絶巨神ジェネシスが、顔に刻まれた巨大な天秤を激しく揺らしながら驚愕の声を上げる。
「空間が崩壊しようが知ったことか! 喧嘩を売ってきたのはテメェだろうが!」
大日本の天魔艦隊・旗艦にて、ドワーフの鍛冶長・五郎左が、神の玉座と直結した主砲の排熱レバーを力任せに引く。
「御館様! インベントリからの弾玉(宇宙)一万個、チャンバーへの極限圧縮完了でさァ! 大日本のキメラ軍団からのカオス・エネルギーも充填率一千パーセントを突破!」
五郎左の怒号と共に、主砲の砲身が太陽の数億倍の輝きを放ち、周囲の次元がギシギシと悲鳴を上げる。
「ガハハハハ! 撃て撃てェ! 神様気取りのデカブツに、大日本商会の資本力(暴力)を思い知らせてやれ!」
権六が戦斧を打ち鳴らし、狂獣特攻隊の獣たちも歓喜の咆哮を上げる。
「さあ、監査官殿。コンプライアンス違反に対する、俺たちからの特大の『始末書』だ。受け取れ」
信長は、ニヤリと凶悪に笑い、主砲のトリガーと連動した『魔力火縄銃』の引き金を、躊躇なく引き絞った。
究極の弾幕
ズドドドドドドドドドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
放たれたのは、単発の砲撃ではない。
一万個の大宇宙が、それぞれ極限まで圧縮された「超光速の散弾」となり、狂乱のガトリング砲のようにジェネシスに向けて放射されたのだ。
『グォォォォォォォッ!! 【絶対監査防壁】!!』
ジェネシスは、幾千もの銀河で織りなされたマントを前面に展開し、メタバースの管理権限をフル稼働させた絶対防御の壁を構築した。
だが、一万個の宇宙の質量と、それに上乗せされた第六天魔王の『覇王色』は、監査官の想定した論理の枠を遥かに超絶していた。
ガガガガガガガガガッ!!
弾丸となった宇宙が防壁に衝突するたびに、内部でビッグバンが引き起こされ、その凄まじい爆発エネルギーがジェネシスの防壁をゴリゴリと削り取っていく。
『ア、ガァァァァァァッ……! 防壁ガ、持タナイ……! タダノ被造物ノ集マリガ、何故コレホドノ出カヲ……ッ!』
ジェネシスの巨体が、宇宙の弾幕に押されてズルズルと後退していく。
「ヒャッハー! 押し込んでるぜェ! あと一息だ!」
市松が大斧を振り回す。
天秤の破壊と『存在価値』のオーバーフロー
『……コノママデハ、私ガ消去サレル! ヤムヲ得ン……!』
ジェネシスは、マントの防壁が破られる寸前で、自身の顔に刻まれた最大の概念武装――【存在の格を量る天秤】を信長たちに向けた。
『特異点・オダノブナガ! 貴様ラノ存在価値ヲ、コノ天秤ニテ【ゼロ】ト認定スル! 価値ナキ者ハ、システムノ理ニヨッテ虚無ヘト還レ!』
ピシャァァァァンッ!!
天秤から、対象の存在そのものを否定する真紅の光が放たれ、天魔艦隊とキメラ軍団を包み込んだ。
この光を浴びれば、いかなる強者であろうと「システム上存在しないもの」として強制的に消滅させられる。
「ヒィィッ!? 体が、体が透けてきやしたぜェ!?」
猿ことトックス(猿獣人)が、自分の腕が半透明になりかけているのを見て絶叫する。
「慌てるな、猿殿」
だが、戦略室の佐吉は、魔導盤のキーボードを優雅に叩きながら、冷ややかな笑みを浮かべた。
「相手が『価値』で量ってくるというのなら、こちらは大日本商会の誇る【無限の資本(資産価値)】を天秤にブチ込んでやるまでです」
「……どういうことだ、佐吉?」
又左が首を傾げる。
「簡単なことです。我々がバラ撒き、回収し、複利で無限に増やし続けてきた『新・永楽銭』の総資産データ。それを、監査官の天秤の【計測システム】に向けて、直接全額送金しました」
『――ナ、ニ……?』
ジェネシスの天秤の針が、突如として信長たちの側に猛烈な勢いで傾き始めた。
大日本・多元宇宙帝国の資産価値。
それは、すでにオムニバースの枠を飛び越え、数兆、数京という単位すらも通り越し、メタバースのシステムですら計算できない【無量大数】の領域に達していた。
『エ、エラー! エラー! 対象ノ資産価値ガ、計測上限ヲ突破……! 天秤ガ、天秤ガ耐エキレナイ……ッ!』
ジェネシスの顔の天秤から、異常なまでの火花と黒煙が噴き出す。
「相手の価値をゼロにする前に、自分たちの秤の限界を悟れ、三流の監査官め」
信長は、バルコニーからゆっくりと火縄銃を下ろし、代わりに愛刀『宗三左文字』を引き抜いた。
「俺の価値は、この大宇宙のすべてを足しても量りきれんぞ」
「蘭丸!」
「御意ッ!!」
絶対の剣・森蘭丸が一筋の流星となって跳躍する。
「我が主君の価値を値踏みした罪、万死に値する!」
蘭丸の『天叢雲』が、オーバーフローを起こして停止したジェネシスの天秤を、神速の十字斬りで真っ二つに粉砕した。
パキィィィィンッ!!
『ガ、アァァァァァァァァァァッ!? 我ガ、我ガ天秤ガァァァッ!!』
概念武装を破壊され、完全に無防備となったジェネシスの巨体へ向け、信長は刀を上段に構え、極大の覇王色を刃に収束させた。
「大日本商会、最終決済だ。……消え失せろ」
ズバァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!
信長の放った次元斬撃が、身長数十万光年の監査官の巨体を、縦に真っ二つに両断した。
監査官の買収(内部告発)
『ア……ガ……。我ガ、監査機能ガ……タダノ、バグ……ニ……』
真っ二つに割れたジェネシスは、崩壊する光の粒子となりながら、メタバースの空間へと崩れ落ちていった。
「ガハハハハ! 見たか! デカいだけの木偶の坊じゃねェか!」
権六が、崩れ落ちる巨神を見下ろして高笑いする。
「……だが、完全に消去するには惜しい人材だ」
信長は刀を納めると、懐から一枚の『新・永楽銭』を取り出し、崩壊しつつあるジェネシスの中心核に向けて指で弾き飛ばした。
黄金の硬貨がコアに突き刺さると、崩壊がピタリと止まり、ジェネシスは人間サイズの「光のヒューマノイド」へと強制的に再構築された。
『……ハッ。コレハ……私ハ、消滅シタハズデハ……』
人間サイズになったジェネシスが、信長の前に跪き、困惑したように両手を見つめる。
「俺の資産(永楽銭)でお前の存在を『買収』してやったのだ。今日から貴様は、大日本・多元宇宙商会の【内部監査部門・統括部長】だ」
信長は、ジェネシスを見下ろし、極悪な笑みを浮かべた。
「さあ、新しい上司への初仕事だ。……お前を派遣した『多次元監査委員会』とやらについて、洗いざらい吐け。お前たちの上には、まだどれだけの『神気取り』の連中がふんぞり返っている?」
『……ハハァッ。全テ、魔王様ノ御心ノママニ』
完全に大日本のシステムに隷属させられたジェネシスは、かつての主である監査委員会への【内部告発】をスラスラと始めた。
『私ヲ派遣シタ多次元監査委員会ハ、コノメタバースヲ管理スル七人ノ【最高意思決定者】ニヨッテ構成サレテイマス。彼ラハ、メタバースノ最上層【神ノ役員会議室】ニ座シ、無数ノオムニバースカラ抽出サレル「生命エネルギー(利益)」ヲ啜リ続ケテイル、真ノ支配者デアリマス』
「ほう。七人の役員か」
信長は、面白そうに顎を撫でた。
「俺たちが今まで暴れ回っていたのは、奴らの用意した養鶏場の一つに過ぎず、奴らはその卵を食って肥え太っていたというわけだ」
「クックッ……。許せませんね。大日本商会よりも上層で利益を独占している組織が存在するとは」
軍師の官兵衛が、杖を突きながら陰湿に笑う。
「ガハハハハ! なら話は簡単だ! その『神の役員会議室』とやらにカチ込んで、七人の役員の首を全部刎ねりゃあ、名実ともに大日本が全次元のトップってことだ!」
権六が戦斧を天に突き上げる。
「そういうことだ」
信長は、漆黒のマントを大きく翻し、メタバースの遥か上空――七色の光が渦巻く「最上層」へと軍配を突きつけた。
「全軍に告ぐ! 監査官の案内で、これよりメタバースの最上層【神の役員会議室】へ殴り込む! 七人の役員どもを全員『リストラ(物理的切断)』し、この大宇宙すべての経営権を、俺たちの手で完全に掌握するぞ!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
監査官をも子会社に組み込み、ついに全次元の真の支配者たちが待つ最上層へと狙いを定めた第六天魔王。
大日本の狂気のキメラ軍団は、究極の神殺し(敵対的買収)を果たすべく、メタバースの最深部へとその進軍を加速させるのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




