第51話:絶対筋力の崩壊と、狂獣帝国の『完全買収』
第51話:絶対筋力の崩壊と、狂獣帝国の『完全買収』
新世界【ネオ・センゴク】の東の極地。
空まで届く連山と、海のように広がるマグマのカルデラを舞台に、大日本・多元宇宙帝国の魔王と、狂獣帝国ヴァルハラの絶対君主との頂上決戦が幕を開けた。
『――消シ飛ベェェェッ!! 魔王ォォォッ!!』
身長三十メートルを超える狂獣魔帝バロンが、天を突くほどの巨大な三本の角から、星の地殻すらも融解させる超高密度の熱線を放った。
それは、大日本の『新・永楽銭』のエネルギーを極限まで溜め込み、新世界のシステムバグと融合したことで生まれた、純粋な破壊の極致。
「御館様ッ!」
「慌てるな、蘭丸」
織田信長は、漆黒のマントを揺らしながら、迫り来る極太の熱線に向けて、あろうことか『素手』を突き出した。
ゴアァァァァァァァァァァッ!!!!!
信長の掌と熱線が激突し、周囲数十キロのカルデラがマグマごと吹き飛ぶ。
しかし、熱線が晴れた後。信長は火傷一つ負うことなく、その場に悠然と立ち尽くしていた。彼の掌の前に展開された、極小サイズの【真・本能寺】の領域が、バロンの熱線を概念ごと「灰」に変換して防ぎ切っていたのだ。
「……なんだ。せっかく俺が投資してやった力だというのに、その程度の熱(利子)しか出せんのか」
信長は、つまらなそうに掌の灰を払い落とした。
『ナ、何ィ!? 我ガ最強ノプロミネンスヲ、素手デ……!?』
バロンの三つ目の巨大な瞳が、信じられないものを見るように見開かれる。
「手品でも何でもない。貴様の放つ熱量が、俺が本能寺で味わった『絶望の炎』に遠く及ばないだけのことだ」
信長は、スッと視線を傍らに控える森蘭丸へと向けた。
「蘭丸。あのデカブツの自慢の角を、少し綺麗に『剪定』してやれ」
「御意ッ!」
剣と筋力の次元衝突
蘭丸が、極限までアップデートされた愛刀『天叢雲』を抜き放ち、一筋の青白い流星となって空へ跳躍した。
『小賢シイ羽虫メ! 熱線ガ駄目ナラバ、我ガ【絶対筋力】デ、空間ゴト圧シ潰シテクレヨウ!』
バロンが、全身の筋肉を異常なまでに隆起させた。
彼が右腕を振り上げただけで、その質量と膂力によって周囲の空間がギシギシと悲鳴を上げ、物理的な「重力の壁」が形成される。
ゴォォォォォォォォンッ!!
バロンの巨大な拳が、空中の蘭丸に向けて叩き下ろされた。
それは、隕石の衝突すらも生ぬるい、星を叩き割るための理不尽な質量攻撃。
「……筋力で空間を歪めるか。だが、我が主君の前に立ち塞がる壁は、すべて斬り裂くのが私の役目!」
蘭丸は、迫り来る極大の拳の圧力に一歩も引かず、空中で姿勢を深く沈めた。
「奥義・神断ち――『白銀・覇王絶空断』!!」
ズバァァァァァァァァァァンッ!!!!!
蘭丸の放った神速の斬撃が、バロンの放つ「重力の壁」を紙のように真っ二つに両断し、そのまま巨大な右腕の筋肉を骨の髄まで深く斬り裂いた。
『ガ、アァァァァァッ!? 我ガ、我ガ絶対ノ筋肉ガ……!?』
バロンが鮮血をマグマのように噴き出しながら後退する。
「まだだ! 御館様の命は『角の剪定』!」
腕を斬り裂いた勢いのまま、蘭丸はバロンの巨体を駆け上がり、頭部へと到達した。
刀身に次元晶の光が極限まで収束する。
「落ちよ!」
閃光が一閃。
バロンの力の象徴であった三本の巨大な角が、根本からスッパリと切断され、轟音と共にカルデラのマグマへと落下していった。
狂獣の意地と、魔王の一撃
『グ、グォォォォォォォォッ!!!』
角を失い、右腕を斬り裂かれたバロンは、かつてない激痛と屈辱に狂乱の咆哮を上げた。
『我ハ……我ハ狂獣帝国ノ魔帝ゾォォッ!! 進化ノ頂点ニ立ツ我ガ、コンナ小サク脆イ生物ニ、敗レルナド……絶対ニ、アッテハナラヌゥゥッ!!』
バロンの傷口から、ドス黒いオーラが噴出し始めた。
それは、彼が取り込んでいた大日本の『新・永楽銭』のエネルギーを、己の生命力(寿命)と引き換えに強制燃焼させる自爆技であった。
カルデラ中のマグマがバロンの体内に吸い込まれ、彼の巨体は赤熱する爆弾のように膨張していく。
「お、おい! なんかヤベェぞ! あいつ、あのデカさで自爆する気か!?」
遠巻きに観戦していた市松と虎が、慌てて武器を構える。
「御館様! 奴の体内のエネルギー密度、新世界の物理限界を突破しつつあります! 爆発すれば、この東の大陸の三分の一が吹き飛びます!」
後方の天魔艦隊から、佐吉の切羽詰まった通信が入る。
「……フン。負けを悟って盤面をひっくり返そうとするとは。どこまで行っても獣は獣だな」
信長は、ゆっくりと愛用の『魔力火縄銃』を構えた。
その銃口が、限界まで膨張し、今にも爆発しようとしているバロンの胸のコアへと真っ直ぐに向けられる。
『道連レダァァァッ! 魔王ォォォッ!!』
バロンが最後の特攻を仕掛けようと、大地を蹴ったその瞬間。
「俺の資産を無駄遣いするな」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長の引き金が引かれた。
放たれたのは、ただの破壊弾ではない。信長の『覇王色』と、大日本の『強制買収のコード』が極限まで圧縮された漆黒の光弾――『神滅・買収覇王弾』。
光弾は、バロンの展開する暴走闘気を一瞬にして貫通し、胸のコアに直撃した。
だが、爆発は起きなかった。
『ア……? ナ、ンダ……コレハ……!?』
バロンの体内で暴走していた無限のエネルギーが、信長の放った光弾のコードによって「強制的にフォーマット」され、瞬く間に鎮静化していく。
膨張していた肉体は萎み、マグマの赤熱は消え失せ、最後にはただの「ボロボロになった巨大な獣」だけが残された。
「言ったはずだ。俺が投資した資産を、お前の一存で灰にする権利はないとな」
信長は、火縄銃の硝煙を吹き消し、膝から崩れ落ちたバロンを冷酷に見下ろした。
ヴァルハラの完全買収
ドォォォォン……。
狂獣魔帝バロンが、カルデラの大地に両膝をついた。
角を失い、力を根こそぎ奪われ、それでもまだ命だけは繋ぎ止められている。
『ワ、我ノ……負ケ、ダ……。殺セ……魔王……。我ガ肉体ヲ、コアトシテ回収スルガヨイ……』
バロンは、強者の矜持として、死によるエネルギーの還元を受け入れようと首を垂れた。
だが、信長はニヤリと極悪な笑みを浮かべ、バロンの顔の真正面まで歩み寄った。
「殺す? 誰がそんな勿体ないことをすると言った」
『……ナ、ニ……?』
「俺は、お前たち獣が『知性』を持ち、『国』を創ったことを評価してやると言っているのだ。ただのコアにして使い捨ての電池にするより、俺の野心のために死ぬまで働かせた方が、よっぽど利益になる」
信長は、懐から一枚の『新・永楽銭』を取り出し、バロンの額にピタリと押し当てた。
「狂獣魔帝バロンよ。今日から貴様らは、大日本・多元宇宙商会の【完全子会社(東の警備部隊)】だ。俺の草履取りとして、この狂気の新世界を共に蹂躙しろ。……拒否権はないぞ」
黄金の永楽銭から、絶対的な「隷属と恩寵の光」が放たれ、バロンの全身を包み込んだ。
それは、洗脳ではない。魔王の底なしの器と覇気に、獣の魂の根源から屈服させられる究極の忠誠心の植え付けであった。
『……ハハァァァァァッ!! 我ガ命、魔王・オダノブナガ様ノ御為ニ!!』
バロンは、大地に額を擦りつけ、大粒の涙を流しながら深く、深く平伏した。
それを見た数千万の狂獣帝国ヴァルハラの残存兵たちも、武器を投げ捨て、一斉に信長に向けて土下座の姿勢をとる。
「ガハハハハ! 終わってみりゃあ、ただの軍団まるごと乗っ取りじゃねェか! 御館様の商売は、いつ見てもえげつねェぜ!」
権六が戦斧を担いで高笑いする。
「ふぅ……。また野蛮な獣の配下が増えましたね。城の消臭剤を大量に発注しなくては」
金柑が、ハンカチで鼻を押さえながらも満足げに微笑む。
「……御館様、東の制圧、見事な采配にございます」
蘭丸が、血振るいをして天叢雲を納め、信長の背中に深く礼をした。
「当然だ。これで四大帝国のうち、一つを食い破った」
信長は、平伏する数千万の狂獣軍団を見渡し、そして、新世界の残る三つの極地――北、西、南で渦巻く巨大な闘気の柱へと、凶暴な視線を向けた。
「休む暇などないぞ、武将ども! ヴァルハラの獣どもを最前線の盾にして、この勢いのまま次の帝国へと雪崩れ込む! 真・天下布武は、俺の野心が尽きるまで止まらん!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
極限まで進化した四大帝国の一つを、物理的破壊ではなく「完全買収(配下への組み込み)」という形で制圧した第六天魔王。
大日本の戦力は、倒した敵を吸収してますますインフレを加速させ、次なる巨大帝国へとその理不尽な牙を剥くのであった。
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