第48話:狂乱の強制進化と、魔王軍の『利益回収(リターン)』
第48話:狂乱の強制進化と、魔王軍の『利益回収』
狂気と進化の無限平面宇宙【ネオ・センゴク】。
大日本・多元宇宙帝国の絶対拠点『真・安土城』を中心とした荒野は今、大宇宙の歴史上類を見ない、常軌を逸した「進化の坩堝」と化していた。
織田信長が天主からバラ撒いた『新・永楽銭』――オムニバースの富とカオス・エネルギーを極限まで圧縮した「超絶経験値の塊」の雨。
それを浴びた三億の群雄たちは、歓喜と苦悶の叫びを上げながら、一瞬にして物理法則を無視した【強制進化】を遂げたのである。
『――オ、オォォォォォォォォッ!! 力ガ、無尽蔵ニ溢レ出ル!!』
先ほどまで虎の槍と打ち合っていた【鋼の狂王】ゼノの鎧は、莫大なエネルギーを取り込み、オムニバースの絶対強度インゴットをも凌駕する『自己修復型・概念超合金』へと変異。その体躯は山脈のように巨大化し、一歩踏み出すだけで重力異常を引き起こしていた。
『――見エル! 光ノ軌道スラモ、止マッテ見エルゾォォッ!!』
又左と神速の勝負を繰り広げていた【雷刃の騎士】ヴォルトは、下半身の馬の脚が八本に増殖。纏う雷光は次元の壁を透過する『超光速粒子』へと変質し、空間そのものを削り取りながら疾走し始めた。
「ヒィィィッ! 御館様ァ! 冗談キツすぎまさァ! あいつら、さっきまでの百倍以上のバケモノになっちまいやしたぜ!?」
城壁の上で、猿ことトックス(猿獣人)が頭を抱えて悲鳴を上げる。
「フフ。自ら敵を育ててから刈り取る。まさに、究極の『焼き畑農業』ですね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)は、激しさを増す闘気の嵐の中で、美しくも残酷な笑みを崩さない。
「ガハハハハ! いいじゃねェか! さっきまでのチマチマした草刈りより、よっぽど腕の鳴る獲物に育ってくれやがった!」
権六が、さらに巨大化した次元晶の戦斧を天に掲げ、狂暴な笑声を荒野に響き渡らせた。
限界突破の激突:武功派 VS 超絶群雄
「オラァァァッ! 硬くなったからって調子に乗ってんじゃねェぞ、缶詰野郎!」
虎の十文字槍が、鋼の狂王ゼノの極大の足元に向けて、プラズマの爆発と共に突き出される。
ガギィィィィィィィンッ!!
だが、虎の全力の刺突は、ゼノの概念超合金の装甲表面で火花を散らすだけで、傷一つ付けることができない。
『無駄ダ、魔王ノ犬メ! 我ガ絶対防御ハ、既ニ物理的ナ破壊ヲ拒絶スル「理」ニ昇華サレタ!』
ゼノが、天を覆うほどの巨大な大剣を、虎と権六に向けて無造作に振り下ろす。
大剣の質量だけで空間が圧縮され、逃げ場のない超重力の圧殺攻撃が迫る。
「物理で駄目なら、概念ごと叩き割るのが大日本商会の流儀だァ!」
権六が、巨大竜の背から、大剣に向けて真っ向から跳躍した。
「理屈でガチガチに固めた防壁なんてなァ、現場の『勢い』と『気合』でブチ抜けるんだよ!」
権六の戦斧に、オムニバース市場で培った『絶対買収(強制破壊)のオーラ』が赤黒く巻き付く。
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!
権六の戦斧とゼノの大剣が激突。概念超合金の絶対防御と、理不尽極まるオークの覇気が真っ向から衝突し、周囲数十キロの荒野がクレーター状に吹き飛ぶ。
「オヤジが抑えてる今だッ! 関節の『継ぎ目』は概念化しきれてねェ!」
虎が神速でゼノの背後へ回り込み、装甲のわずかな隙間――次元の歪みが生じている一点に、十文字槍の全エネルギーを一点集中させて放った。
ズバァァァァァンッ!!
虎の槍が、ゼノの絶対防御の「概念の綻び」を正確に撃ち抜き、内部機構へと致命的な一撃を叩き込んだ。
『バ、バカナ……! 我ガ最強ノ進化ガ、コンナ泥臭イ力押シニ……ッ!?』
鋼の狂王は、自らの装甲を内部から爆発させながら、崩れ落ちていった。
一方、荒野の別方角。
『――遅イ、遅イ、遅イ! 止マッテ見エルゾ!』
雷刃の騎士ヴォルトが、超光速の雷と化し、又左の全方位から無数の槍撃を叩き込んでいた。
又左の視覚すらも置き去りにする、次元を超越した絶対速度。
「チィッ! 速ェ……だが、単調だぜ!」
又左は、相棒の雷エイの背で目を閉じ、槍を構えたままピタリと動きを止めた。
『諦メタカ! 塵ト消エヨ!』
ヴォルトの必殺の光速刺突が、又左の心臓を貫こうとしたその瞬間。
「テメェの速度は『計算』通りだ。……だが俺の雷は、御館様の野心に追いつくための『意地』で動いてんだよ!」
バチィィィィィィンッ!!
又左が目を見開いた瞬間、彼の肉体そのものが雷エイと完全に同化し、超光速すらも凌駕する【雷神の領域】へと突入した。
ヴォルトの槍が届く零コンマ零一秒の間に、又左の長槍が、ヴォルトの八本の脚と二本の腕を、神速の六連撃で完全に切り裂いていた。
『ガ、アァァァァッ!? 光ヨリモ、速ク……!?』
「速さだけじゃ、大日本の特攻隊長は務まらねェんだよ!」
又左の最後の一撃が、雷刃の騎士のコアを貫き、超光速の雷光を完全に四散させた。
究極の投資回収
各地で、大日本の武将たちが、限界突破の進化を遂げた群雄たちを次々と「力と意地」で粉砕していく。
真・安土城の天主からその光景を見下ろしていた織田信長は、愉快そうに紫煙を吐き出し、黄金の玉座の肘掛けを叩いた。
「フハハハハ! 見事だ! 俺のバラ撒いたエサ(永楽銭)を喰って極上の肉に育った敵を、俺の家臣どもがさらに美味しく料理しおったわ!」
「御館様! 敵の大型群雄クラス、次々と沈黙! そして……ご覧ください!」
戦略室の佐吉が、興奮を抑えきれない声で魔導盤のスクリーンを天主に投影した。
打ち倒されたゼノやヴォルト、そして無数の進化した群雄たちの亡骸が、光の粒子となって新世界の大地に還元される……ことはなかった。
彼らの肉体は、信長が投資した『新・永楽銭』のシステム効果によって、純度一千パーセントの【超絶・次元晶コア(特大のエネルギー結晶)】へと変換され、荒野にゴロゴロと転がっていたのである。
「う、うおおおおおおッッ!? こ、これは!!」
猿が、モニター越しの映像を見て、文字通り目を回してソロバンを弾き始めた。
「投資した永楽銭が、敵の生命力と進化のエネルギーを吸い取って、何万倍にも価値が膨れ上がった『最高級資産』になってドロップしてやがる! 御館様! 利益率(ROI)が、一万パーセントを超えていやすぜェェェッ!!」
「当然だ。俺は慈善事業で金をバラ撒いたのではない。大日本商会が一度投資した以上、骨の髄まで利子をつけて回収するのは当たり前だろう」
信長はニヤリと極悪な笑みを浮かべ、愛用の『魔力火縄銃』を肩に担ぎ直した。
「佐吉、五郎左! 歯車天使を全機射出しろ! 荒野に転がった利益を一粒残らず回収し、真・安土城の魔力炉に直結させよ!」
「ハッ!」
「おうよォ! 大豊作だぜェ!」
大日本の恐るべき「マッチポンプ」。
自ら敵を強化し、それを叩き潰すことで、元手以上の莫大なエネルギーと富を新世界から強引に巻き上げる。これぞ、第六天魔王が考案した究極のブラック・エコノミーであった。
新たな乱世の確定
最強の進化を遂げた指導者たちを失い、さらにその死骸すらも大日本軍に「資産」として回収されていく様を見た残存の群雄たちは、ついに完全に心が折れた。
『バ、バケモノだ……! あれは魔王などという生易しいものではない! 世界の理すら喰い物にする、真の悪魔だァッ!』
三億いた軍勢は、すでに数千万にまで激減していた。
生き残った群雄たちは、これ以上の真・安土城への進軍を諦め、蜘蛛の子を散らすように、無限に広がる大陸の四方八方へと逃亡を開始した。
「御館様! 敵軍、完全に瓦解しました! 追撃しますか!?」
血まみれの蘭丸が、天主のバルコニーに片膝をついて進言する。
「いや、追う必要はない」
信長は、逃げ惑う群雄たちの群れを、まるで種を蒔く農夫のような満足げな目で見送った。
「奴らは今日、俺の恐怖と、俺のバラ撒いた『力(永楽銭)』の味を骨の髄まで叩き込まれた。……奴らは大陸の各地に逃げ延び、俺に対抗するために、今度こそ独自の『巨大な帝国』を築き上げるだろう」
佐吉の魔導盤のマップ上で、逃亡した群雄たちが大陸の極地――東の果て、西の深淵、南の毒海、北の天空――にそれぞれ散り、強大な闘気の拠点を形成し始める反応が確認された。
「群雄割拠の種蒔きは終わった。これからは、奴らが大陸全土で食い合い、さらに強大な【七大魔将】や【四大帝国】へと成長するのを待つ」
信長は、軍配を果てしなき大陸に向けて突きつけた。
「俺の天下布武は、ただの作業ではない。最強に育った国を、最強の軍勢で正面から叩き潰してこその『戦』よ! 武将ども、大宴会の準備をしろ! 今日は大勝利の祝杯だ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
敵の命すらも「投資と回収」のサイクルに組み込み、新世界【ネオ・センゴク】の生態系そのものを完全に支配した大日本・多元宇宙帝国。
逃げ延びた群雄たちが新たな巨大国家を建国し、大陸全土を巻き込む真の戦国時代が訪れるその日を待ちわびながら、第六天魔王の狂気と歓喜の笑い声が、無限の荒野に響き渡るのであった。
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