第46話:世界意志の代行者(アンチ・ノブナガ)と、真・本能寺の顕現
第46話:世界意志の代行者と、真・本能寺の顕現
超次元創世炉によって生み出された狂気の無限平面宇宙【ネオ・センゴク】。
その中心たる『真・安土城』の直下から、大地を吹き飛ばして現れたのは、巨大な獣ではなく、信長たちと同じ「人」の姿をした存在であった。
炎、氷、毒、重力。四凶の覇王たちが残した極大の闘気と、大日本軍がバラ撒いたカオス魔力や永楽銭のデータ。そのすべてを新世界のシステム(進化のバグ)が強引に喰らい、圧縮し、ついに産み落とした【究極の特異点】。
『――ターゲット確認。特異点・オダノブナガ。これより、新世界防衛機構を最終段階へ移行。対象を概念ごと完全消去する』
名もなき真なる覇王――【無銘】の口から発せられたのは、かつてオムニバースで破壊した神々と同じ無機質なシステム音声であった。
しかし、その手に握られた『禍々しい次元晶の野太刀』から放たれる殺気は、神々のそれとは全く違う。純度百パーセントの「泥臭い暴力と闘争心」であった。
「……御館様、お下がりください。あのようなバグの産物、私の剣で塵に還してみせます!」
信長の傍らから、絶対の剣・森蘭丸が一筋の青白い閃光となって跳躍した。
「我が主君の野心を阻む障害は、この世に一つとして残さぬ!」
蘭丸の愛刀『天叢雲』が、次元の壁すらも切り裂く神速の十字を描く。
奥義・神断ち――『白銀・覇王十字星』。
だが。
『――戦術演算。物理切断防御、並びに重力反射起動』
無銘が、一切の感情を持たずに野太刀を軽く振り上げた。
その瞬間、野太刀の刀身に【重剛王タイタンの超重力】と【絶対零度の凍気】が同時に宿った。
ガギィィィィィィィィンッ!!!
「なッ……!?」
蘭丸の神速の斬撃が、無銘の野太刀に触れる寸前で「局地的な超重力」によって軌道を歪められ、さらに刀身から伝わった絶対零度が、蘭丸の次元晶の闘気を瞬時に凍結させた。
『排除』
無銘の野太刀が、凍りついた蘭丸を無造作に薙ぎ払う。
そこに【炎帝の爆炎】が上乗せされ、蘭丸の身体は防壁ごと強烈に吹き飛ばされ、真・安土城の城壁に深々と叩きつけられた。
「蘭丸殿ッ!」
後方で魔導盤を操作していた佐吉が悲鳴を上げる。
「ダメです、御館様! 奴は四凶すべての能力を完璧に統合しているだけでなく、我々大日本軍の【戦闘データ】を完全に学習しています! 蘭丸殿の剣筋すら、すでに読み切られている!」
「オイオイ、あんな化け物が俺たちの足元で育ってたってのかよ!」
帰還したばかりの権六と又左が、血の気を引かせながら武器を構える。
魔王の「本気」と、愛刀『宗三左文字』
「下がれ、お前ら」
しかし、その絶望的な状況下にあって。
黄金の天主のバルコニーに立つ織田信長の顔には、恐怖も焦りも微塵もなかった。
あるのは、本能寺を抜け出して以来、オムニバースのどこを探しても満たされなかった【極上の歓喜】であった。
「あの野郎は『俺を殺すためだけ』に、この世界が本気を出してチューニングした特注品だ。雑兵どもが束になっても、システムごと喰われるだけだ」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を足元に放り捨てた。
そして、腰に差していた一振りの打刀――彼が転生前から愛用し、この次元の海を渡る過程で大宇宙の全素材を用いて鍛え直された魔王の牙、『宗三左文字』をゆっくりと引き抜いた。
チャキ……。
静かな抜刀音と共に、信長の全身から、黄金色に輝く極大の『第六天魔王の覇王色』が、漆黒の炎となって爆発的に噴出した。
「久々に、俺自身の手でドタマをカチ割ってやる」
ドンッ!!
信長がバルコニーを蹴った。
重力や物理法則など完全に無視した、一直線の飛翔。
迎え撃つ無銘もまた、無機質な瞳の奥に「ターゲットの接近」を感知し、炎と氷、重力と毒を混ぜ合わせた『四凶の闘気』を野太刀に爆発させた。
ガァァァァァァァァァァンッ!!!!!
二人の刃が激突した瞬間。
真・安土城の周囲数十キロの大地が、衝撃波だけで完全に裏返り、巨大なクレーターと化した。
天魔艦隊すらも余波で後退し、武将たちが腕で顔を覆うほどの、常軌を逸したエネルギーの衝突。
『――対象の戦闘力、演算上限を突破。……理解不能。何故、ただの剣撃に四凶のエネルギーを凌駕する出力が存在する』
無銘のシステム音声に、初めて「エラー」のノイズが混じる。
「理解不能だと? 当然だろうが、機械人形が」
信長は、鍔迫り合いの最中、ニヤリと凶悪に笑った。
「貴様は与えられた四つの力を『計算通り』に出力しているだけだ。だがな、俺の刃に籠っているのは計算式じゃねェ。俺が背負ってきた『狂気』と『野心』、そのすべての重さだ!」
信長が『宗三左文字』にさらに力を込める。
純黒の覇気が、無銘の放つ四凶の闘気(炎、氷、毒、重力)をゴリゴリと強引に押し返し、逆に喰らい始めた。
『――警告。機体損傷率30%。四凶統合・絶望輪廻起動』
無銘が後ろに跳躍し、野太刀を天に掲げた。
上空に、巨大な「四色の魔法陣」が形成され、新世界のすべてのエネルギーを限界まで圧縮した、星すらも消滅させる極大のレーザーが信長に向けて放たれる。
「御館様! 直撃すれば、オムニバースの絶対強度インゴットでさえ蒸発します!」
佐吉が絶叫する。
「蒸発するのはあいつの方だ」
信長は、刀を上段に構え、深く、静かに息を吸い込んだ。
究極領域展開――【真・本能寺】
「大宇宙のルールを書き換え、新世界を創った俺が、貴様ごときの安っぽい魔法陣に消されるものか」
信長の足元から、ドス黒い、怨念と覇気が入り混じった『漆黒の炎』が、空間そのものを侵食しながら広がり始めた。
「見せてやる。俺が神をも超えた原点にして、すべての理を灰に変える究極の業火を」
「第六天魔王・絶対領域――『真・本能寺』!!」
ゴアァァァァァァァァァァァァッ!!!!!
信長を中心に展開されたのは、魔力や闘気による防壁ではない。
かつて彼自身を焼き尽くし、転生のきっかけとなった【本能寺の炎】を、概念領域として宇宙空間に現出させた「絶対的理不尽」の結界であった。
無銘の放った極大の四凶レーザーが『真・本能寺』の領域に触れた瞬間。
炎、氷、毒、重力……すべての物理法則と魔法システムが、「本能寺の炎の中ではすべてが灰になる」という信長の強烈な『我』によって強制的に書き換えられ、ただのパラパラとした消し炭となって崩れ落ちた。
『な、――演算不能! 対象の領域内において、当機の能力が【無効化】サレテイマス……!』
無銘のシステムが、初めて「恐怖」に似た混乱の声を上げる。
「俺の燃え盛る城の中に入ったのが運の尽きだ。ここでは、俺の剣以外はすべて無価値となる」
信長が、燃え盛る幻影の襖を蹴り破るようにして、無銘の懐へ「縮地」した。
その速度は、光をも置き去りにする魔王の神速。
「天下布武の露と消えよ」
ズバァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!
信長の『宗三左文字』が、無銘の持つ次元晶の野太刀を紙屑のように真っ二つに両断し、そのまま袈裟懸けに、真なる覇王の身体を概念ごと完全に斬り裂いた。
『ア…………システ、ム……崩、壊…………魔王……バン、ザイ…………』
自分を殺すためだけに創られた新世界の代行者。
その顔に、最期に浮かんだのは、バグではなく、あまりにも強大すぎる信長の力に対する「純粋な畏敬」の笑みであった。
無銘の身体は、莫大な光の粒子となって爆散し、新世界の空へと散っていく。
群雄割拠の真の幕開け
「……フゥ」
信長は、刀についた光の塵を払い、ゆっくりと『宗三左文字』を鞘に納めた。
展開されていた『真・本能寺』の領域がスゥッと解除され、元の荒野の光景が戻ってくる。
「お、御館様ァァァッ!!」
城壁から、猿や武将たちが歓喜の声を上げて飛び出してくる。
壁に叩きつけられていた蘭丸も、傷だらけながら立ち上がり、主君の圧倒的な勝利に感涙を流して平伏した。
「ガハハハハ! さすがは御館様だ! この世界が産み出した最強のバケモノを一刀両断とはな!」
権六が興奮冷めやらぬ様子で駆け寄る。
「だが、油断するな」
信長は、空に散っていく無銘の光の粒子を見上げながら、不敵に笑った。
「佐吉。あの光の粉はなんだ」
「……はい。あれは、無銘が保有していた『四凶と進化バグのエネルギー』です。奴が倒されたことで、あのエネルギーは消滅するのではなく……この大陸中に降り注いでいます!」
佐吉が魔導盤を叩くと、ホログラム・マップの全域で、新たな「赤い光点」が次々と、爆発的な勢いで増殖し始めた。
「なんと……! 無銘のエネルギーを浴びたことで、大陸中の生き残りの覇王たちが、さらに上の次元へと【強制進化】を始めています!」
「フフ。なるほど」
金柑が、美しくも残酷な笑みを浮かべる。
「この世界は、一体の勇者で魔王が倒せないと悟るや否や、その力を分割し、数万の『勇者候補(群雄)』としてバラ撒いたというわけですね」
「最高じゃねェか!!」
信長は、両手を広げ、果てしなく続くネオ・センゴクの大陸に向かって歓喜の咆哮を上げた。
「これこそが俺の求めていた乱世だ! 一体の最強を倒して終わりではない! 無限に進化し、俺の首を狙って這い上がってくる群雄割拠!」
信長は、武将たちを振り返り、ギラギラと燃える瞳で号令を下した。
「さあ、本番はここからだぞ! この真・安土城を落としてみせろと、全大陸に布告を出せ! 大日本・多元宇宙帝国はこれより、進化するすべての生命を相手に、永遠の【魔王防衛戦(天下布武)】を開始する!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
究極の敵を倒したことで、逆に戦乱の火種を全大陸にバラ撒いてしまった第六天魔王。
終わりのない狂気と闘争の世界で、信長と大日本の最強の家臣団の「最高に楽しい地獄」は、永遠に加速し続けていくのであった。
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