第45話:炎と氷の蹂躙、そして『真なる覇王』の胎動
第45話:炎と氷の蹂躙、そして『真なる覇王』の胎動
狂気と進化の無限平面宇宙【ネオ・センゴク】。
大日本・多元宇宙帝国が放った四つの方面軍は、創世直後に極限進化を遂げた「四凶の覇王」たちを相手に、各方面でオムニバースの常識を覆す大暴れを展開していた。
北の超重力断層を物理的な筋力と闘気で叩き割った権六と虎。
南の腐海を「超ブラック労働の呪い」で逆に腐らせ、毒女王をガラス細工に変えた金柑と官兵衛。
そして戦火は、残る東と西の極限地帯へと燃え広がっていた。
東の激突:関東方面軍 VS 炎帝イグニス
「ヒャッハー! 熱ィ熱ィ! だが、オヤジ(権六)の暑苦しさに比べりゃサウナみたいなモンだぜ!」
東の『超火山地帯』。
大地そのものが赤熱し、海のように広がるマグマが数百メートルの高さまで吹き上がる灼熱の地獄。
そのマグマの海の中央から、太陽の表面温度すら凌駕する超高密度のプラズマで構成された巨神――『炎帝イグニス』が、怒り狂って咆哮を上げていた。
『――燃エカスニモ残サン! 我ガ絶対ノ炎熱ノ前ニ、全テノ物質ハ原子レベルデ融解スル!』
炎帝イグニスが巨大な腕を振るうと、数万度の熱線がレーザーのように放射され、関東方面軍の天魔艦隊のシールドを激しく炙り始めた。
「熱で溶かすだと? 甘ェんだよ!」
又左が、相棒の雷エイと共に、灼熱のプロミネンスの波を「波乗り」するように神速で駆け抜ける。
「俺の雷は、熱が伝わるよりも速ェ! 火傷する前にテメェのドタマをブチ抜いてやる!」
又左の長槍に、数億ボルトの次元電撃が収束する。
しかし、炎帝イグニスはただの的ではない。プラズマの身体を液状化させ、又左の神速の刺突を透過させようとする。
『愚カナ! 我ニ実体ハ無イ!』
「実体がないなら、強引に固めてやるまでだァァッ!」
又左の背後から、無傷の狂戦士・平八郎が、巨大な宇宙亀の甲羅から特大の跳躍を見せた。
彼が握る重力ハンマーには、大日本の重工業プラントから供給された限界突破のカオス・エネルギーが満ちている。
「オラァァァッ! 『超絶重力・極点圧縮』!!」
ドゴォォォォォォォォンッ!!
平八郎がハンマーをマグマの海に叩きつけた瞬間。
局地的な超絶重力場が発生し、炎帝イグニスのプラズマの身体はおろか、周囲数十キロのマグマや熱線すらも、強引に「一点」へと吸い寄せられ、超高密度の球体へと圧縮されてしまった。
『ガ、アァァァッ!? 我ガ、我ガ炎ガ、潰サレル……!?』
「止まってる的なら、俺の槍は絶対に外さねェ!」
圧縮され、身動きが取れなくなったイグニスのコア(核)に向け、又左が雷神の如き一撃を叩き込む。
ズバァァァァァァァンッ!!
雷光が重力の球体を貫通し、炎帝の核を完全に粉砕。東の覇王は、自らの熱量を暴走させながら、美しい花火のように爆散して消え去った。
西の蹂躙:中国方面軍 VS 氷神コキュートス
一方、西の『絶対零度氷原』。
そこは、原子の動きすらも完全に停止する、マイナス二七三度の凍てつく世界。
氷の結晶で形作られた美しくも冷酷な神――『氷神コキュートス』が、冷ややかな視線で侵入者たちを見下ろしていた。
『――静寂コソガ絶対。貴様ラノ熱苦シイ闘気モ、コノ凍土デハ一瞬ニシテ永遠ノ氷像トナル』
コキュートスが息を吹きかけると、猿と半兵衛が率いる中国方面軍の艦隊の装甲が、瞬く間に凍りつき始めた。
「ヒィィィッ!? さ、寒ィ! 尻尾が凍っちまう!」
猿がガタガタと震えながら、懐から取り出した『新・永楽銭』を見つめて悲鳴を上げた。
「お、おい! あっしらの永楽銭のデータ通信まで凍りついて、処理速度が落ちてやがる! ふざけんな、経済活動の停止は死活問題だぞ!」
「落ち着きなさい、猿殿」
風の軍師・半兵衛が、凍りつく甲板の上で、涼しい顔をして扇を広げた。
「絶対零度とは、つまり『熱エネルギーの完全な欠如』。そして、大日本の経済システムにおいて、エネルギーとは即ち『資本(永楽銭)』です。……つまり、この空間は極度の【デフレ状態(資本不足)】にあると言えます」
「なるほどォ! 要するに、市場にお金(熱)が回ってねェってことだな!」
猿の目に、商人のギラギラとした欲望の炎が灯った。
「なら話はえれェ簡単だ! 冷え切った市場には、ヤケクソみたいな【超絶金融緩和】をブチ込んでやらァ!」
猿が、自身の魔導盤と大蔵省のメインバンクを直結させる。
「御館様から預かった無限の予算! この氷のすっとこどっこいに全額投資んでやる! 『永楽銭・超次元融資』!!」
ジャラララララララッ!!!
中国方面軍の全艦隊から、膨大な量の『新・永楽銭(熱エネルギーの塊)』が、物理的な黄金の雨となって氷原にバラ撒かれた。
絶対零度のルールなどお構いなし。大日本の「無限の資本力」が強引に空間の熱量を書き換え、マイナス二七三度の氷原が、数千度の黄金の熱湯へと一瞬にして融解を始める。
『ナ、何ィ!? 我ガ絶対ノ氷ガ、コンナ下品ナ硬貨デ溶カサレルダト……!?』
氷神コキュートスが、自らの身体が溶け出していることに驚愕し、絶叫する。
「氷が溶ければ、あとはただの『水溜まり』ですね」
半兵衛が扇を振り下ろした。
「『万物を吹き飛ばす、灼熱の神風よ』!」
半兵衛の放った暴風が、猿のバラ撒いた熱量と混ざり合い、超高温の熱風となってコキュートスを包み込む。
『ア、アァァァァァ……!』
西の覇王は、一切の抵抗もできず、黄金の熱風の中に完全に蒸発し、水蒸気となって消滅した。
覇王の統合と、究極の『バグ』の胎動
「――申し上げます! 東西南北、四凶の覇王、すべて討伐完了! 大日本・方面軍の完全勝利にございます!」
真・安土城の黄金の天主。
蘭丸が高らかに戦果を読み上げると、一千万の天魔艦隊と城内に控える悪魔たちから、地鳴りのような勝鬨が上がった。
出陣からわずか数日。創世直後の新世界で最強と謳われた四凶は、大日本・多元宇宙帝国の「理不尽なまでの暴力と経済力」の前に、為す術もなく蹂躙されたのである。
「フハハハハ! 他愛もない! オムニバースの全精力を注ぎ込んで創った世界にしては、少々歯ごたえが足りんな!」
織田信長は、玉座で酒杯を煽りながら、愉快そうに高笑いした。
だが。
歓喜に沸く天主の中で、ただ一人。
魔導盤を監視していた佐吉の顔色が、サァッと青ざめ、指先が激しく震え始めたのである。
「……お、御館様……。いけません。これは、我々の想定した『進化』の範疇を超えています……!」
「どうした、佐吉」
信長が、面白そうに目を細める。
「四凶が死んだことで、彼らの残した膨大な『覇王の闘気』が四方からこの大陸の中心……つまり、この真・安土城の【真下(地中深く)】へと集束しています! それに加え、我々がバラ撒いたカオス・エネルギーや永楽銭のデータまでもが、謎の引力によって喰われている!」
ズズズズズズズズッ……!!!
佐吉の絶叫と同時に、オムニバースの絶対強度インゴットで造られた真・安土城が、まるで大地震に見舞われたかのように激しく揺れ始めた。
「な、なんだァ!? 城が揺れてやがる!」
帰還したばかりの権六や虎が、慌てて武器を構える。
「我々がこの新世界に仕込んだ『魔王(大日本)を打倒するための進化バグ』……。それが、四凶の死と我々の過剰なエネルギーを苗床にして、【究極の特異点】を産み落とそうとしています!」
佐吉の魔導盤のスクリーンが、警告を示す真っ赤なエラーコードで埋め尽くされる。
『――システム・オーバーライド。……新世界・防衛機構起動。……【真なる覇王】、顕現ス』
ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
真・安土城の数キロ先の荒野の大地が、火山噴火のように内部から爆発した。
舞い上がる土砂とカオス・エネルギーの暴風の中から、ゆっくりと「それ」が姿を現す。
それは、巨大な獣でも、無機質な神でもなかった。
身長は信長たちと同じ、人間サイズ。
しかしその身体は、炎、氷、毒、重力……四凶のすべての力を極限まで圧縮した、漆黒と極彩色のオーラを纏っている。
そして何より恐ろしいのは、その手には「大日本の技術を完全に模倣・進化させた」と思われる、禍々しい『次元晶の野太刀』が握られていたことだ。
「……ほう」
信長は、バルコニーからその「人間サイズ」の存在を見下ろし、持っていた酒杯をパリンと握り潰した。
「大猿やトカゲではなく、俺たちと同じ【人】の姿で産まれてきたか。なるほど、魔王を殺すための『勇者』というわけだ」
信長の全身が、歓喜と、かつてないほどの極上の戦意で打ち震える。
新世界のバグが生み出した、大日本帝国を滅ぼすためだけの究極のカウンター存在。
ただの力押しでは倒せない、理と闘気を極めた【真なる覇王】の誕生。
「武将ども! 宴は終わりだ!」
信長は、愛用の『魔力火縄銃』を放り捨て、腰に差していた愛刀『宗三左文字』をゆっくりと引き抜いた。
「あれは、大筒や艦隊で片付けるには惜しい獲物だ。……久々に、俺自身の手で首を刎ねてやる!」
無限の退屈を打破するために創り出した世界が、ついに魔王・織田信長に「本気」を出させる最強の敵を産み落とした。
ネオ・センゴクの真の絶望と、覇王同士の究極の激突が、今ここに幕を開ける。
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