第44話:四凶の覇王と、大日本・方面軍(ぐんだん)の四方展開
第44話:四凶の覇王と、大日本・方面軍の四方展開
新世界【ネオ・センゴク】の中心にそびえ立つ、漆黒と黄金の究極要塞『真・安土城』。
その最上階にある黄金の天主にて、かつてこの周辺一帯を支配していた暴風の覇王ガルドバは、完全に「大日本の軍門に降った家臣」として、畏れ多くも第六天魔王・織田信長の御前に平伏していた。
「――申し上げます、魔王様。我々が現在陣取っているこの『中央荒野』の四方には、さらに広大で過酷な環境を支配する、四体の強大な覇王が存在しております」
ガルドバは、文官トップの佐吉が展開した巨大なホログラム・マップに、四つの巨大な闘気の反応を指し示した。
「東の火山地帯を統べる『炎帝イグニス』。
西の絶対零度を支配する『氷神コキュートス』。
南の腐海に君臨する『毒女王ヴェノム』。
そして北の超重力断層を支配する『重剛王タイタン』。
……奴らは、創世の瞬間に極限進化を遂げた【四凶の覇王】。我輩の暴風など児戯に等しい、真のバケモノどもにございます」
ガルドバの報告を聞き、居並ぶ武功派の面々は、恐怖するどころか、ギラギラとした肉食獣の笑みを浮かべて喉を鳴らした。
「四凶、ねェ。いかにも『俺たちをぶっ殺して四方から攻め込んでやりますよ』って配置じゃねェか!」
虎が十文字槍を肩に担いで鼻を鳴らす。
「ガハハハ! だが、真ん中に居座ってるのは誰あろう、俺たちの御館様だ! 四方から来るのを待つなんて、大日本の性分じゃねェよなァ?」
オークの猛将・権六が戦斧を打ち鳴らす。
黄金の玉座で葉巻を燻らせていた信長は、紫煙を細く吐き出し、ニヤリと凶悪な笑みをこぼした。
「その通りだ。敵が四匹いるなら、一つずつ相手をするなど面倒くさい。……俺たちは、四方同時に打って出るぞ」
信長が立ち上がり、漆黒のマントを大きく翻した。
その瞬間、天主に集まった家臣たちの間に、かつてないほどのピリリとした極上の緊張感と熱狂が走った。
「かつて俺が、日ノ本の天下を獲るために用いた『方面軍制度』。この狂気の新世界において、宇宙規模のスケールで復活させてやる!」
魔王軍の四方展開(方面軍編成)
信長は軍配を抜き放ち、ホログラム・マップの四方を順番に指し示した。
「北の超重力地帯! 権六、虎! 貴様らは『北陸方面軍』だ。重力で潰してくるという重剛王タイタンのドタマを、さらに上から物理でカチ割ってこい!」
「おうッ!! 任せなせェ御館様! 一番に首を獲ってきまさァ!」
「西の絶対零度! 猿、半兵衛! 貴様らは『中国方面軍』。氷の神とやらを、永楽銭の熱気と神風で跡形もなく溶かし、資源をすべて回収しろ!」
「へっへへへ! 氷の世界……冷房代が浮きやすね! 徹底的な経済封鎖(兵糧攻め)で干上がらせてやりまさァ!」
「ええ。冷たい風には、熱い神風でお応えしましょう」
「東の火山地帯! 又左、平八郎! 『関東方面軍』だ。炎帝だろうが何だろうが、貴様らの雷と重力で、火山ごと更地に変えてこい!」
「ヒャッハー! 焼肉の準備はできてるぜェ!」
「俺の轟槌で、マグマの底まで叩き潰してやる!」
「そして南の腐海! 金柑、官兵衛! 『近畿方面軍』を任せる。毒を扱う女王など、貴様ら二人の陰湿さ(美学)に比べれば可愛いものだろう。存分に絶望させてやれ」
「フフ……御館様も人が悪い。ですが、美しき反逆(蹂躙)の調べ、極上の毒をもって奏でてご覧に入れましょう」
「クックッ……。呪いと毒の騙し合い。軍師として腕が鳴りますね」
それぞれの方面軍に、二百五十万隻の天魔艦隊と、新世界で捕獲・改造した超魔獣騎馬隊が配備される。
後方支援には佐吉と五郎左が控え、弾薬とカオス・エネルギーの補給線を完璧に構築する。
そして信長と蘭丸は、本陣たる『真・安土城』で全軍の指揮を執りつつ、戦局を俯瞰する。
「さあ、武将ども! オムニバースの平和ボケで鈍った体を、存分にほぐしてこい! 俺の野心を止めたければ、四凶だろうが神だろうが、俺の玉座まで這い上がってこいと伝えろ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
真・安土城から、四つの巨大な軍勢が、東西南北の荒野へ向けて爆発的な推進力と共に放たれた。
第二次・天下布武の、真の大戦乱が幕を開けたのである。
北の激突:北陸方面軍 VS 重剛王タイタン
「ガハハハハ! いいぜ、いいぜェ! 空気がビリビリしやがる!」
北の『超重力断層』へと進軍した権六と虎の北陸方面軍。
彼らの眼前に広がっていたのは、通常の百倍以上の重力が渦巻き、岩盤が空に向かって逆立っている異様な大地であった。
そしてその断層の奥から、山脈そのものが立ち上がったかのような、超極大の岩石巨人――『重剛王タイタン』が姿を現した。
『――チッポケナ、肉ノ塊ドモメ。我ガ領域ニ入ッタコトヲ後悔シテ、大地ニ潰レロ!』
タイタンが巨大な腕を振り下ろすと、北陸方面軍の周囲の重力が一気に千倍へと跳ね上がった。
天魔艦隊の装甲がミシミシと軋み、魔獣たちが重圧に悲鳴を上げる。
「オイオイ、重てェな! だがよォ!」
虎が、極大のプラズマ・ブースターを吹かして無理矢理重力場を突破した。
「オムニバースの『社長室』で味わった借金の重圧に比べりゃ、ただの物理的な重力なんか、羽毛みたいなモンだぜェ!」
ズバァァァァンッ!!
虎の十文字槍が、タイタンの岩石の膝を強烈に粉砕する。
「その通りだ! 気合が足りねェんだよ、デカブツ!!」
権六が、猛毒の巨大竜の上から、自身の身の丈の十倍はある『特注・次元晶の戦斧』を振りかざして跳躍した。
『ガァァ!? バカナ、我ガ千倍ノ重力ヲ、筋力ダケデ突破スルダト!?』
「俺たちは魔王の先鋒だ! 重力ごと、真っ二つにしてやるァァッ!!」
権六の放った赤黒い闘気の斬撃が、タイタンの放つ重力波を正面からカチ割り、巨大な岩石の胴体を深々と抉り取った。
岩盤が砕け散る轟音が、北の断層に鳴り響く。
南の蹂躙:近畿方面軍 VS 毒女王ヴェノム
一方、南の『腐海』。
あらゆるものを溶かし、精神すらも狂わせる猛毒の霧が立ち込める沼地。
その沼の底から、美しい女性の上半身と、おぞましい百足の下半身を持つ『毒女王ヴェノム』が、数万の毒虫の軍勢を引き連れて現れた。
『――ウフフフ。美味しそうな男たち。私の猛毒で、ドロドロに溶かして飲み込んであげるわ』
ヴェノムが息を吐くと、天魔艦隊の次元装甲すらもシュウシュウと音を立てて溶け始めた。
「……おや。美しい顔ですが、吐く息がドブの臭いですね。美学に反します」
金柑が、鼻をハンカチで押さえながら、冷酷な笑みを浮かべた。
「クックッ。毒の扱いが少々雑ですね、女王殿。毒というのは、物理的に溶かすのではなく……相手の『存在の根源』から腐らせるものです」
官兵衛が、杖を沼地に突き立てた。
瞬間、官兵衛が展開した【第666実験宇宙】由来の純度百パーセントの『カオス・エネルギー(狂気と絶望の呪い)』が、ヴェノムの毒沼へと逆流した。
『――な、ギャァァァァァァァッ!? な、何よこれ!? 私の毒が、私の毒が逆に喰われている!?』
ヴェノムの百足の身体が、官兵衛の放ったカオスの呪いによって内側から黒く変色し、狂気に悶え苦しみ始めた。
「さあ、仕上げと行きましょう。『美しき反逆の光、次元を乱して咲き誇れ』」
金柑の銀の杖から放たれた極彩色の魔力光が、猛毒の霧を概念ごと吹き飛ばし、ヴェノムの軍勢を美しいガラス細工のように結晶化させていく。
毒を以て毒を制すどころか、圧倒的な「悪辣さ」で女王を蹂躙する近畿方面軍。
覇王の特等席
「ガハハハハ! 見えるぞ、見えるぞ! 東西南北、どこを見てもド派手な花火が上がってやがる!」
真・安土城の黄金の天主。
信長は、バルコニーから四方に広がる極大の爆発光と闘気の乱気流を眺め、極上の酒を煽っていた。
「御館様。各方面軍、順調に四凶の軍勢を押し込んでおります。あの覇王たちも、決して弱くはありませんが……我々大日本の武将たちの『戦に飢えた熱量』には、一歩及ばないようです」
蘭丸が、報告書を読み上げながら誇らしげに微笑む。
「当然だ。オムニバースの温室で数字遊びをしていた連中とは違い、俺の家臣どもは常に死線を越えてきたのだからな」
信長は杯を干し、ふと、空を見上げた。
「だが、四凶が全滅すれば、この新世界のシステム(進化のバグ)が、俺たちを排除するために『さらなる理不尽』を生み出すはずだ。四凶を喰らい、統合した【真の勇者】か、あるいは【神をも超える魔神】か……」
信長の瞳には、己を脅かすであろう未知の強敵の誕生を、心底待ち望むような純粋な歓喜が宿っていた。
「来い、新世界の意志よ。俺の玉座の首を獲りたくば、四方の雑兵どもを乗り越え、この真・安土城の正面門まで辿り着いてみせよ!」
大日本・多元宇宙帝国の四方展開により、新世界の大地は創世からわずか数日で血と炎に染まり上がった。
無限の闘争を求める第六天魔王の狂宴は、この狂気の大陸のすべての生命を巻き込み、さらなる進化と絶望の螺旋へと突入していくのであった。
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