第43話:真・安土城の建立と、狂気の大地に立つ『覇王』
第43話:真・安土城の建立と、狂気の大地に立つ『覇王』
新世界【ネオ・センゴク】の中心、果てしなく広がる荒野のど真ん中に、規格外の轟音が鳴り響いていた。
「オラァ! オムニバース市場からかき集めた『絶対強度インゴット』だ! 惜しみなくブチ込めェ!」
「ヒャッハー! 重力がメチャクチャなこの星でも、これなら絶対に崩れねェぜ!」
ドワーフの鍛冶長・五郎左の怒号のもと、重工業宇宙から持ち込んだ数千万の歯車天使(建設用ドローンに改造済み)と、混沌宇宙の悪魔たちが、不眠不休の超絶ブラック労働で巨大な建造物を組み上げている。
材料は、大宇宙の全次元から吸い上げた最高級の宇宙資源。動力源には超次元創世炉『アマテラス』のサブジェネレーターを直結。
降下からわずか三日。
荒野の中心に完成したのは、天を突くほどの高さを誇り、漆黒の絶望次元装甲と黄金の永楽銭装飾で彩られた究極の魔王城――【真・安土城】であった。
その威容は、かつて浮遊星砦であった『アヅチ・ノヴァ』を遥かに凌ぐ。周囲には星喰らいの獣王『黒王』をはじめとする魔獣たちが堀の代わりに寝そべり、一千万の天魔艦隊が城壁として陣形を組んでいた。
「へっへへへ! こいつはすげェ! どんなバケモノが束になって来ようが、指一本触れられやしねェ完璧な要塞でさぁ!」
猿ことトックス(猿獣人)が、真・安土城の最上階に設けられた黄金の天主から眼下を見下ろし、狂喜乱舞している。
「フン。要塞だと? ここは俺たちの『前線基地』だ。守るためではなく、攻め滅ぼすための牙城よ」
織田信長は、漆黒のマントを翻して玉座に腰を下ろした。
その瞳には、平和なオムニバースの玉座に座っていた時とは比べ物にならない、爛々と燃え盛る野心の炎が宿っている。
「佐吉。この三日間で、この大陸の構造はどうなっている」
「ハッ」
文官トップの佐吉ことイシオン(ハーフエルフ)が、魔導盤を操作して巨大なホログラム・マップを天主に投影した。
「新世界は我々が想定した以上に、異常な速度で『進化』を遂げています。初日に遭遇したような単なる獣の群れは、すでに淘汰されるか、より強大な存在に取り込まれました」
マップのあちこちに、禍々しい赤い光点がいくつも点灯している。
「現在、この無限大陸には、極限の闘気とエゴによって独自の『理』を確立した超生命体……いわば【新世界の覇王】と呼ぶべき存在が、数千、数万という単位で群雄割拠を始めています」
「数万の覇王、ですか。まるで無限に湧き出る害虫ですね。美しい統治とは程遠い」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、顔をしかめて銀の杖を鳴らす。
「ガハハハハ! 最高じゃねェか! 数万の首領がいるってことは、数万回の命のやり取りが楽しめるってことだ!」
権六が戦斧を打ち鳴らし、武功派の面々が歓喜に打ち震える。
暴風の覇王『ガルドバ』の襲来
その時。
真・安土城の周囲に展開していた防衛レーダーが、けたたましい警報音を鳴らした。
『――警告。北西の方角より、高質量の闘気群が接近中。中心に【覇王級】の個体を検知』
「オヤジ! 早速、噂のバカが挨拶に来やがったみたいだぜ!」
又左が、天主の窓から北西の荒野を指差した。
地平線を染め上げるのは、通常の砂埃ではない。
大地を削り取り、空間を切り裂きながら進む、純粋な『暴風の闘気』の大竜巻であった。
その竜巻の中心に陣取っていたのは、身長数十メートルに及ぶ、四本腕の半人半獣の超生命体。全身を緑色の闘気で結晶化させた『風の鎧』で覆い、巨大な二本の双剣を携えている。
初日の獣とは違い、明確な知性と「軍を統率する意思」を持った存在。
『――我ハ、暴風ノ覇王・ガルドバ! 我ガ領土ノド真ン中ニ、勝手ニ城ヲ建テル不届キ者メ! 貴様ラノ闘気ハ、我ガ軍団ガ全テ喰ライ尽クシテクレヨウ!』
ガルドバの咆哮と共に、彼に従う数万の「風の魔獣」たちが一斉に真・安土城へと殺到してきた。
「領土だと? 笑わせる。この大陸(世界)のすべては、最初から俺のモノだ」
信長は、玉座に深く腰掛けたまま、不敵な笑みを浮かべた。
「行け、武将ども。大日本の軍門に降るか、塵となるか、選択肢を与えてやれ」
「「「オオオオオオオオオオッッ!!」」」
信長の号令を受け、権六、又左、虎、市松、平八郎の五人が、それぞれの魔獣騎馬に跨り、真・安土城の城門から荒野へと弾丸のように飛び出していった。
物理法則を無視した闘争
「ヒャッハー! 一番槍は俺がもらうぜェ!」
虎が、極大のプラズマ・ブースターを吹かした宇宙亀の甲羅から跳躍し、暴風の軍団のど真ん中へと十文字槍を突き入れた。
しかし、風の魔獣たちはただの獣ではなかった。
『グルルルゥゥッ!』
魔獣たちは虎の槍撃を受ける直前、自らの肉体を「真空の刃」へと変化させ、物理攻撃を透過させながらカウンターの風刃を放ってきたのだ。
「チィッ! 体が透けやがった!?」
虎が空中で体勢を崩す。
「馬鹿野郎、相手の土俵に乗るな! 力で空間ごと圧し潰せ!」
平八郎が、重力ハンマーを大地に叩きつけた。
ドゴォォォォォンッ!!
局地的な超重力が発生し、実体を消していた風の魔獣たちが、強引に三次元の物理空間へと引きずり出され、地面に押し潰される。
「おらァッ! 実体があるなら、これで三枚下ろしだ!」
市松の巨大な斧が、押し潰された魔獣たちを容赦なく両断していく。
『――小癪ナ! 我ガ暴風ノ前ニ、重力ナド無意味ダ!』
暴風の覇王ガルドバが、四本の腕で双剣を交差させた。
直後、真・安土城を丸ごと呑み込むほどの極大の『超次元竜巻』が発生した。真空の刃が城壁の絶望次元装甲にぶつかり、激しい火花を散らす。
「オラァッ! 風が吹いたくらいで涼しい顔してんじゃねェ!」
権六が、猛毒のブレスを吐き出す巨大竜の上から、次元晶の戦斧をフルスイングした。
赤黒い闘気の斬撃が、竜巻を強引に真っ二つに引き裂く。
「遅ェぞ、デカブツ!」
竜巻が割れた一瞬の隙を突き、又左の雷エイが神速の三次元機動でガルドバの懐へと潜り込んでいた。
「俺の雷は、風よりも速ェんだよ!」
ズバァァァァァンッ!!
又左の電撃槍が、ガルドバの胸元の『風の鎧』を貫き、深く突き刺さる。
魔王の「理」による完全支配
『ガ、アァァァァッ……! バカナ……我ガ、最強ノ闘気ノ鎧ガ……!』
ガルドバは胸から緑色の血(高濃度の闘気)を流しながら、信じられないというように後退りした。
「フン。井の中の蛙が、己の風を最強と勘違いしたか」
その時。
いつの間にか、ガルドバの頭上の虚空に、漆黒のマントを翻した織田信長が浮遊していた。
手には、赤熱する『魔力火縄銃』が握られている。
『キ、貴様……イツノ間ニ……!?』
ガルドバが四本の腕で双剣を振り上げようとするが、信長から放たれる圧倒的な『覇王色』の重圧の前に、腕がピタリと硬直して動かなくなった。
「俺は、大宇宙のすべての価値を定めてきた男だ。貴様の闘気など、俺の足元にも及ばん」
信長は、銃口をガルドバの眉間に向けた。
「大日本・多元宇宙帝国の名において、貴様に二つの道を用意してやる。俺の草履取り(奴隷)となって這いつくばるか、この銃弾で概念ごと消滅するか。選べ」
『……グ、グォォォォッ! 我ハ、我ハ覇王! 誰ノ下ニモ……ッ!』
ガルドバが、最後の意地で闘気を爆発させようとした。
「蘭丸」
「ここにッ!」
信長の背後から、一筋の閃光となって飛び出した森蘭丸が、『次元断ち・覇王絶空断』を放つ。
神速の刃は、ガルドバの四本の腕を、双剣ごと音もなく完全に切断した。
『ア…………?』
両腕を失い、自身の絶対的な力が通じないことを悟った暴風の覇王の目に、初めて「本能的な恐怖と屈服」の色が浮かんだ。
「答えは決まったようだな」
ズドンッ!!
信長は、あえてガルドバの顔面ではなく、その足元の大地に向けて火縄銃を放った。
着弾した『神滅・覇王弾』の余波だけで、大陸の地殻が数十キロにわたって吹き飛び、底なしのクレバスが形成される。
『……ハハァァァァッ!!』
圧倒的すぎる「格の違い」を見せつけられたガルドバは、失った腕の血を流しながら、信長の前に深く、深く平伏した。
彼に従っていた数万の風の魔獣たちも、指導者に倣って一斉に地に伏せる。
「ガハハハハ! 交渉成立だ! 新しいオモチャ(兵力)が手に入ったぜ!」
権六が戦斧を担いで高笑いする。
「フフ。自ら創り出した敵を屈服させ、自らの軍勢に組み込む。まさに自給自足の永久機関ですね」
金柑が、微笑ましくその光景を見つめている。
信長は、火縄銃を下ろし、平伏するガルドバとその軍勢を見下ろした。
「よく聞け、新世界の獣ども。俺が第六天魔王・織田信長だ。今日から貴様らは、俺の軍門に降り、俺の野心のための使い捨ての駒となれ」
信長は、真・安土城の黄金の天主へと振り返り、軍配を空高く掲げた。
「これで一国を落とした! だが、この大陸にはまだ数万の覇王がふんぞり返っている! 休む暇などないぞ、お前ら! この狂気の新世界のすべてを蹂躙し、大日本の黒と金に染め上げてやれ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
真・安土城の全軍、そして新たに加わった暴風の軍団から、大陸を震わせる咆哮が上がった。
未知の力と進化が渦巻く新世界【ネオ・センゴク】。
最初の覇王を軽々とねじ伏せた大日本・多元宇宙帝国の「第二次・天下布武」は、この大陸のすべての命を巻き込む未曾有の大戦乱へと、その狂気のアクセルを踏み抜くのであった。
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